#7
私は能力者とかではないので、自分の移動可能な範囲の公共交通機関で彼女のところに行くしかない。
スマートフォンの位置情報を頼りに、彼女に気づかれないように――。
†
わたしは遅刻ギリギリになってしまったけれど、なんとか出勤することができた。
「あっ、焼いてきたトースト……」
朝食として準備したトーストが鞄の中から出てきた。
急いで車内で食べ、更衣室に向かう。
私服から速やかに白衣に着替え、ナースステーションに向かった。
「おはようございます」
「「おはようございます!」」
「おはよう。昨日は突然出勤してほしいって無茶な連絡しちゃって……」
「仕方ないですよ。どの病棟も人手不足なんですから」
「そうだよね」
朝から主任に捕まってしまったわたし。
わたし達の後ろから「なんでいるの?」「本当は休みなのに……」と話し声が耳に入ってきた。
「ちょっといつもより騒がしいですよ? これから申し送りを始めますので、静かにしてください!」
「はい」
「すみません」
それを聞いた夜勤者のリーダーが彼女らに注意し、管理日誌と記録を広げると同時に申し送り用紙が手元に回ってくる。
「日勤者のみなさん、おはようございます」
「「おはようございます!」」
「改めて申し送りを始めます」
「「お願いします」」
「まずは管理日誌から送ります。2017年9月28日木曜日――――」
夜勤者リーダーが管理日誌を読み上げ終え、記録に視線を移す。
わたしは背中を反らそうとした時、待合室の方にどこかで見覚えのある人物の姿があった。
その姿は彼だったのだ。
しかし、仕事に集中できなくなるため、彼の存在自体を忘れようとしている自分がいる。
「せっかく忘れようとしたのに……」
わたしはナースステーションのテーブルに手をつき、溜め息混じりに呟いた。
†
スマートフォンの位置情報のおかげで、私は彼女が勤めている病院に辿り着いた。
「おそらくここが彼女が勤めている病棟のナースステーションですよね。彼女は……」
私は待合室からナースステーションを覗いてみる。
彼女の姿は見つけることができたが、そこのテーブルに手をつき、何かを呟いていた。
その後ろには何人かの看護師がおり、彼女に関する陰口を叩いている。
しかし、待合室にいる患者やナースステーションにいる彼女以外の看護師には私の姿が見えていないはずだから。
「も、もしかしたら……彼女は本当に……」
それは本当のことだったのだ。
彼女が「マタニティハラスメント」にあっていたということ――。
2017/11/18 本投稿
※ Next 2017/11/24 5時頃予約更新にて更新予定。




