#11
朝の学活が終わったあと、僕は急いで屋上の踊り場まで走って向かう。
その途中で何人かの先生から「おい、廊下は走るな!」と言われたような気がしたが、ほとんど耳に入っていない。
僕は一心不乱に走る。
走って走って走りまくる!
僕にとっては嫌な奴しかいない教室にいたくないし。
「……おそらく……あいつらは……ここまで……こないだろう……」
僕は息が上がっているため、途切れ途切れになりながら、そこに辿り着いた。
ここから先に行ったら屋上。
僕の居場所の1つである踊り場には誰もいない。
「少年は脚が速いな……」
「そうかな? って、飛んで追いかけてきたんだよね!?」
「バ、バレたか……」
「強いて言うならば、バレバレ」
人外である彼とそんなくだらない話をしている時が1番楽しいのかもしれない。
「……あの……」
「なんだ?」
「さっきまでがいつもの朝の学校の様子だよ」
「もし、俺が人間だったら見るも無惨だなと思うが、実の俺は嬉々している」
「それはそうだよね……「負の感情」が主食と言っている誰かさんだもんねぇ……?」
「それを言ったら終わりかもな」
「「あははは……」」
しかしながら、僕は彼にどうしても伝えなければならないことがある。
それは1番重要とされる「復讐する時間」だ。
「復讐する時間なんだけどさ……」
「あぁ、変更したいのか。本来は明日だがな……どうしてもと言うならばいつでも構わない。ただ、1ヶ月後とか1年後とかは勘弁してくれよ?」
「そこまで先のばしはしないよ。今日中を目処に蹴りをつけたいと思ってる」
「今日中か……それはなぜだ?」
「今日は家庭科の授業があって包丁やナイフとかいろいろ使えるからね。もし、駄目だったら、放課後の教室で」
「調理実習か。少年は何か準備したものはあるのか?」
「うん。材料の持ち込みは他の人が持ってくるからって言われたんだ。僕が準備したら、殺されると思ってるんかなぁ……? 準備したのはエプロン、三角巾、マスクの3点セット」
その話は実話である。
いつだか忘れてしまったが、ある調理実習がきっかけだ。
僕はあまりにも調理実習の存在を忘れ、持ってこなければならない材料を家から持ってこられなかったから、「あなたは材料を持ってこなくていい」と言われたのだ。
「っ……それだけかよ!?」
「それだけ」
「そうなのか……」
「うん」
僕が事情を説明すると、彼は「ほう……」と言ってくる。
「というわけで、僕は今日の家庭科の授業か放課後で復讐するから」
「了解。少年が忘れたら、あとが大変だから、しっかり覚えておけよ?」
「分かった」
彼と話したり、「復讐する時間」をずらしてもらい、少しだけ肩の荷が下りたような気がする。
僕はあのあと、本当は戻りたくない教室に戻った。
2017/02/04 本投稿




