頭に響く声。
「はあ、はぁ、、、、っ!!」
慣れない山道を必死に走るが、なかなか早く進めない。息も切れ始めた時、酷い頭痛がした。
「うっ、、、!!」
あまりに激しい痛みに私はその場に崩れ落ちる。
「ハナ!大丈夫!?」
レスティは私に心配の声をかけてくれるが、今の私の頭に響く声はレスティの声ではなかった。
「来たれ、星々を愛す者。この世界を愛す者。
古より築かれた我ら神々との絆を繋ぐ者よ。
我が名は全能の神、ゼウス。
我らに愛されしリラ族の最後の末裔よ、時は来た。
さあ、今こそ錆び付いた時計の歯車を回すのだ。」
ゼ、ウ、、ス。リラ、、族。
なんだかとても懐かしいような、悲しいような、、。
「ハナ!ハナ!!!」
「!」
声が消えると同時に頭痛は消えた。が、
「捕まえたぞ!ハナ・フロリーナ!!」
「これで俺たちは目的を果たすことができる!」
腕をがっちり捕まれ、縄で結ばれてしまった。
こうなっては手も脚も出ない。
次の瞬間、首に鋭い衝撃が走り、私は意識を失った。
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目を開くと、そこは廃棄の城だった。
どうやら山を越えて私を運んだらしい。窓の外からは賑わいのない城下町が見えた。
「ようやく目が覚めたか。」
声が聞こえた方向を見ると、身体中が傷だらけの男が立っていた。その男の後ろには、さっき私を捕まえた男たちもいた。
この人がリーダーなんだ。と直感でそう思った。
「やっと見つけたぜ、ハナ・フロリーナ。」
「やっとって、私のことをずっと探していたの?」
「そうだ。十年間、俺たちはお前を探し続けた。」
「十年間も?それで、私をどうするつもり?
指名手配されてるし、国に差し出すの?」
「どうするかって?そんなの決まってるじゃねえか。」
その時、私は脇腹に痛みを感じた。見れば、ドクドクと血が出ている。
「なっ!?、、、がっ、!」
血を吐き、地面が赤く染まる。私は、恐怖を感じた。こいつらは、捕まえて国に差し出す為じゃなく、ただ私を殺す為に私を十年間探し続けたんだ。一体私が何をしたというんだ。
ガタガタと身体が震え始める。そんな様子をみて、リーダーの男は満足そうにニヤリと笑った。
「怖いか?そりゃそうか。刺されたし、血も吐いたしな。ただ、俺たちにしたことはこんな恐怖を味あわせるだけじゃ、全然足らねぇなぁ!なぁ、お前ら!!」
後ろにいた男たちも笑いながら次々に小刀を抜き出す。
殺される。
そう思った直後、嵐のような突風が起こった。しかし、その風はどこか温かく、優しかった。
「そこまでだ。」