2話
他愛もない話をしながら道を進む。
だが悪寒を感じ足を止めてしまった。
「でさ、って翔聞いてるか?」
「すまん、なんか寒気がして」
「ビビってんのかお前は」
茶化すように同僚は笑っていたが俺には笑えなかった。
微かだが何か聞こえる。
「おい翔!」
「少し黙ってろ」
呻き声…いや唸り声?
段々と音は大きくなる。
「なっ…なんだ」
その音に気味が悪くなり動けずにいた。
『グガァァァァ!!』
「「!!」」
その唸り声と共に目の前に現れたのは紛れもなく化け物その物だった。
『グヴァァ…』
なんという事だろう。
これは夢なんではないかと思ってしまうぐらい目の前で起きてるのはありえない事だ。
こんな化け物が実際にいるなんて。
二足歩行している熊の2倍くらいの大きさ。
狼の様な頭。
太い腕に刀の様な長さの爪。
その爪から何か滴り落ちている。
街灯で微かにしかわからないが血にも見える。
「あっ…あれは…なんだ?」
同僚が声を出したその瞬間俺の横を風が通った。
「逃げるぞ!」
俺は声を掛け逃げようとした。
だが…。
「なっ!」
俺の横にあったのは腰から下しか残っていない同僚だった。
そしてさっきまで目の前にいたはず怪物は後ろ側にいた。
多分さっきの風は怪物が通ったからだろう。
その一瞬であいつは上半身を持って行った。
くちゃくちゃと音が聞こえる。
その音で吐きそうになったがそれを堪え走り出す。
どれくらい走ったのか。
後ろを振り返る。
怪物はついてきていない様だった。
「はぁっ、はぁっ」
息を整え頭を落ちつかせる。
「とりあえず…警察に電話を」
ポケットを弄るが携帯が見つからない。
逃げている時に落としたのだろう。
どうも出来なくなった俺はその場に座り込んだ。
だがどうも神様は俺を見捨てたらしい。
『グヴァァァァ!』
けたたましい唸り声とともに奴は現れた。
「一体何処から!?」
さっきまで声も気配もなかったはずなのに。
その刹那。
鋭い爪が襲い掛かる。
「!」
運よくその爪を躱す。
態勢を立て直し走り出す。
既に自分が何処にいるのかわからないが道を走り抜ける。
しかしその選択が間違っていた。
「行き止まり…」
闇雲に走った結果行き止まりにぶつかってしまったのだ。
後ろには怪物が迫っていた。
「死ぬのか…」
将棋なら王手。
詰まれてる状態で今切り抜けるにはさっきみたいに攻撃を躱し擦り抜ける。
だが確率は低くそんな体力もない。
無情にも既に爪は俺の方に振りかざされた。