1話
深夜0時。
街灯も少なく人もいないこの場所に俺は居た。
「はぁっ…はぁっ…」
呼吸を乱しながらもある物から逃げている所だ。
「っ…一体なんなんだよ」
今起きている現状に頭が追いついてこない。
ただ分かっていることは非現実的な事が起きている。
「とりあえずこのままあれから逃げ切れれば」
足を止める事なく走る。
だが目の前に現れたのは残酷な現実だけだった。
話は数時間前に遡る。
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バイトが終わり同僚と晩御飯を食べに行きつけの定食屋に来ていた。
「あぁ、腹一杯だ」
「相変わらず翔はよく食べるな」
「あんだけこき使われたら腹減るっての」
「あのハゲ人使い荒いからな」
「そういや最近起きてる事件知ってるか?」
「あん?あれか?獣に襲われたようにぐちゃぐちゃに人が殺されてるってやつか?」
「そうそう、未だに犯人見つかってないやつだ」
俺の住むこの街で起きてる殺人事件。
原型を留めないほどぐちゃぐちゃにされている残虐な事件だ。
被害者を特定するのにもかなり時間がかかっているらしい。
「既に同じような感じで5人は死んでるんだろ?ニュースでも聞き飽きるぐらい流れてるから知ってるぞ」
「被害者に関連性がないらしくいつ誰が襲われても仕方ないって言われてる」
「通り魔的なやつか…で、それがどうかしたのか?」
「それで俺の彼女が怯えてるみたいでさ」
「ノロケは結構だ」
「そうじゃなくて見たらしいんだよ」
「何を?」
「犯人らしき物、彼女が言うには大きな獣だったらしい」
「は?ありえないだろ」
「俺もそう思った、はっきり見たわけではないみたいだけどその後に被害者が出たそうだ」
「なら警察に言ったらいいだろ、でも頭いってる人に思われるだろうな」
「警察にも言ったが取り合ってくれなかったみたいだ」
「俺も警察ならそうする」
「現に彼女が怯えて家から出ないから心配なんだよ」
「まあ事実なら精神不安定になっても仕方ないわな」
そんな話をしていたら閉店時間になっていた。
同僚は彼女の家に向かうらしい。
ちょうど俺の家と方向が同じなので途中まで付き合う事にした。
「翔、こっちの道って何処に繋がってるんだ?」
「さぁ?普段使わないし用もないからわかんない」
「なら行ってみようぜ、多分どっか知ってるとこつくだろ」
「そんなガキみたいな事せず帰ろうぜ」
「いいからいいから」
同僚はそのままノリノリで通ったことのない道を進んだ。
「ったく…明日も仕事あるってのに」
俺は同僚の後を追いかける。
この時この道を選ばなければこんな事にはならなかったのかも知れない。
いや、もしかするとこれこそが運命だったのだろうか。