漫才脚本「正義のヒーロー」
A……ボケ担当。B……ツッコミ担当。
コンビ名は考えていないので☓☓としました。
A・B、ステージに上がる。
A「どうも~☓☓です!」
B「よろしくお願いしま~す!」
A・B、観客に向かって軽く頭を下げる。
A「B君。俺、昔から正義のヒーローってかっこいいなーって思ってたんですよ」
B「確かに、どこからか颯爽と現れて悪の怪人を退治する。世の中のちびっ子ならみんな憧れるんじゃないですかね」
A「いい歳して言うのもアレかもしれませんけど、今更ながらヒーローやってみたいなーって思うんですよ」
B「いいんじゃないんですか? 何事を始めるにも、遅すぎるってことはありませんよ」
A「じゃあ、今から俺がヒーローをやるから」
B「はいはい」
A「B君は、怪人に襲われている女の子をやって下さい」
B「よーし! 頑張って襲われ……って、あれ?」
A、さっさと立ち位置につく。
A「出たな、怪人。か弱い女を襲うなんて……」
B「(戸惑いながら)え、えっと……きゃーっ。助けて、ヒーロー! きゃーっ!」
A「今から俺が」
B「きゃーっ! 助けて! きゃーっ!」
A「……駄目だ。こんなんじゃ助ける気にならない」
B「てめえがやれって言ったんだろうが! 何でやらせておいて、早々に見捨てるんだよ!」
A「いやあ。やっぱB君のビジュアルだと盛り上がらないというか」
B「だったら、最初から俺に怪人役をやらせた方がよくねえか? 明らかなキャスティングミスだろうがよ」
A「B君が怪人、ね」
A、しげしげとBを眺める。
A「……よし! 俺、なんかいけそうな気がする!」
A、意味深にシャドーボクシング。
B「……何か俺、素直に倒される自信がなくなってきたんですけど」
A・B、それぞれの立ち位置につく。
B「ぐへへへへっ! 私は怪人。この町はいただいたぞぉ!」
A「(携帯電話を持ちながら)もしもし、警察ですか? 今、近くに不審者が」
B「誰が不審者だ!」
A「何か、きったないのがこの町はいただいた~とかほざいてるんですよ」
B「きったないって何だよ! お前ヒーローなんだからさっさと倒しに来いよ!」
A「はいはいはい。じゃあ仕切り直しましょう」
B「ぐへへへへっ! 私は怪人。この町はいただいたぞぉ!」
A「(ライフルをかまえる動作をしながら)バーン!」
B「ぐはあっ!」
A「……ふっ。ちょろいもんだぜ」
B「遠くからこっそり射撃してんじゃねえよ!」
A「でも、こっちも身の安全とか確保したいし」
B「これじゃあやってることが殺し屋同然なんだよ。ヒーローならヒーローらしく正面からかかって来い!」
A「はいはい。正面からね」
B「ぐへへへへっ! 私は怪人。この町はいただいたぞぉ!」
A「出たな! 怪人め。お前が犯した、道端へのポイ捨て行為を繰り返した罪、断じて許さん!」
B「悪事がセコい! 何なの、ポイ捨てしまくる怪人って。怪人はもっと大胆かつ凶悪なことをやらかしてるもんでしょうが」
A「ほほう。B君は、ポイ捨てを認めるようなクズだったのか」
B「いや、ポイ捨ても充分悪いことだけども。怪人ってのはもっとこう、町の平和を揺るがすようなことを……というか、最初俺に怪人に襲われた女の子の役やらせただろ。それこそ、せめて町の人を誘拐するとか、それくらいのことをやらないとさあ」
A「はいはいつまり、B君は誘拐犯になりたいと」
B「その言い方だと誤解を招くからやめてくれ! とにかく、怪人の悪事は誘拐ということで」
A「はい、了解」
B「ぐへへへへっ! 私は怪人。この町はいただいたぞぉ!」
A「やい、怪人クズ男!」
B「待てコラ! さっきの話に引っ張られ過ぎて、名前がただの悪口になってるじゃねえか!」
A「か弱い女をさらうとは。お前みたいなクズは、秒殺してゴミ箱に放り込んでくれる!」
A、観客に向かってどや顔を決める。
B「いや、全然うまいこと言えてませんけど?」
A「食らえ、必殺技。サンダーパーンチ!」
B「うわーっ……ん?」
A、何故かBの横を素通り。
A「うっわ、ごめん! 間違って女の子殴っちゃった!」
B「最低じゃねえか! どうやったら人質と怪人を間違うんだよ」
A「な……なんて奴だ。女の子を盾にして、自分の身を守るとは」
B「いやさっき、自分で間違えたって叫んでましたよ? この場にいる、皆さんが全員証人ですけど?」
A「くそーっ。ここまで追い詰められたからには仕方がない」
B「追い詰めた覚え、一切ございませんけど?」
A「貴様に地獄を見せてやろう。究極の必殺技……とうっ!」
B「うわあっ!」
A、B目がけて猫だまし。その後、ステージ袖に逃走。
B「(Aが逃げた袖を見ながら)……あのー。ちょっと? あ、これは逃げましたね」
B、観客の方を向く。
B「えーっと。A君が逃げてしまったので、今日はこの辺で……」
A「とうっ!」
B「ぎゃーっ!」
A、ステージ袖から猛進し、Bにドロップキック。
A「これぞ必殺、不意打ち!」
B「てめえの方がクズ野郎じゃねえか! もういいよ」
A・B「どうも、ありがとうございました~!」
自作にヒーローネタが多過ぎだなあと、我ながら思います。