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神様のごちそう  作者: 石田空
祭り囃子編
46/79

かけら語り・二

 橙色の提灯が揺れる。その下をぱたぱたと草履を履いた子供が走っていく。

 子供は生まれたばかりは神の子で、年追うごとに人になっていくと言われているが、そりゃ本当だろうねと思う事があるよ。

 子供には俺達が見えているもんだし、付喪神だって見える。それが大人になって神頼みにすがるようになったら、さっぱりと見えなくなっていくんだ。

 それを「人間は業が深い」なんて思っちゃいないさ。「人間はそんなもん」だと思ってしまえば、そんなもんだろう? 神様方の方が欲は深いしわがままだし、それでいて等価交換にくくりつけられているんだから、むしろそっちの方が気の毒だなと俺は思うね。

 祭りの時期になれば、大量に神棚にお供えものがされた。酒はあるし、米はある。あと町の名物だかなんだかが供えられているんだから、それで充分だった。

 さて。神社の神も代替わりしているって事は、そう言えばりんには説明していなかったなと思う。聞かれてない事は、一体いつに言えばいいのか案外忘れるもんだな。

 この神社の神もまた、御先様に決まるまでは前の神様が納めていた訳だが、年を食いすぎてついこの間黄泉の国へと羽を休めに行ってしまったよ。それで御先様に代替わりした訳なんだが。

 代替わりが上手くいかなかったんだなあ……宮司がいなくなってしまったせいで、元々引き継いだばかりでまだまだ弱い神の力が神格がないもんだからあっと言う間に落ちてしまい、あっと言う間に荒神待ったなしになってしまったんだからねえ。

 そりゃ慌てたさ。この数十年は荒神なんて見ちゃいないが、もしそんなもんになってみろ。神社は取り壊さないといけなくなるし、この地を治める神がいなくなってしまう。だから御先様を抑えるために、ご飯係が必要となった訳さ。

 りんも含めて、かれこれ十人ほどはご飯係を迎えてきたが、その内数人は御先様を恨んでいたね。そりゃそうだ。人の事情を一切聞かずに、放置していたら地元が滅びるかもしれないって言われてなし崩し的にご飯を作らされ続けるんだから、恨まない方がおかしくない。まあ、そんな奴らを長い事神域に置いていても悪影響だから、俺も次のご飯係を急いで探してきて交代させてたんだがね。

 内の数人は御先様に対して同情的だったね。力を落としたくて落とした訳じゃないし、ご飯係抜きで神域が成り立つようにならなかったら、いつまで経っても神隠しは終わらない。そう考える人間だってそれなりにいたのさ。

 でもなあ……大体の人間はそんな約束を忘れてしまうんだよ。人間が白状なのかって? いや、違う。

 神域と現世だと、流れる時間が違うんだよ。神域だと三日位の事だって、現世だったら半年程経っている事だってざらにある。それに油断して、日々の生活に圧迫され始めたら、約束だって忘れてしまうのさ。

 神ってのは約束や等価交換にがんじ絡めになっているからなあ、あんまりできない約束はしない方がいいぞ。俺はそう何度も忠告したんだが、それを聞かずに「御先様を何とかしたいから現世に帰りたい」って言う連中はそれなりにいた。そのたびに、神罰が下ってしまった奴だって少なからずいるんだ。

 しかし、まあ。りんみたいな奴は初めてだからな、俺もどうなるかは読めないでいる。

 御先様に気に入られて、よその神にも気に入られて、それどころかよそのご飯係にまで力を借りている奴は、この数十年でもごくまれだからな。

 まあ……御先様も覚えちゃいないみたいだがなあ。もちろん、りんも覚えてないがな。

 二人の縁は、今に始まった事じゃない。だからこそ、りんは御先様をどうにかしようとしているのだろうし、御先様はりんを気に入ったんだろうさ。

 ……俺は、りんに神罰がくだらない事を心から祈っているさ。思い出さなくってもいいがな、約束が果たせたら、神罰は下りようがないんだから。

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