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スキルレベルMAX!  作者: キチガイ
第一章 ウルジュラ樹海
1/4

プロローグ

初投稿ですが

何卒宜しくお願いします!

 

 少年は人通りの少ない路地で携帯端末を夢中で弄りながらも、器用に人や障害物を避けながら歩いていた。その携帯端末は、最新とは言えないながらも数ヶ月ぐらい前に発売された割と新しい型のものであった。

 少年の容貌を一言で表すなら、まさに「シュール」、コレに限った。それを具体的に述べていく場合、三つの要点を語る必要があった。至極ボサボサな艶のない黒髪。阿呆みたいに丸くて無駄にデカイ瓶底眼鏡。極めつけは、マフラーのように首に巻かれた謎の長くて赤い布。

 これだけ、特徴的ならば、目立たない方が異常であった。実際に道行く人達は皆、彼をじろじろ見ては目をそらす。


「クソッ。ペルセ◯ネが落ちねぇよ!!!俺がどんだけガチャ引いたと思ってんだよ。五千円も課金して手に入れた魔法石が全部水の泡じゃねーか!」


 一か月のお小遣い全部投資したんだぜ、と嘯くと項垂れる少年。


「ハァ。やっぱり、リアルラックの薄い俺は単純なパズル力でのし上がっていくしかのか……いや、それにも限界がある。ならば……」


 そう言うと、少年は唐突に立ち止まり、徐に目を閉じて空を仰いだ。


「次に目開けて画面見たら全キャラのスキレベがMAXになってるはず」


 それから約三十秒間、彼は道の真ん中でハッキリと立ち尽くした。これはもう、幾ら一通りが少なくても少しは人がるのだから彼が他人の目に入るのは必然的であった。実際に通りかかる人々は彼を不思議そうに見たりして通り過ぎて行ってた。


「ワクワク、ドキドキ」


 そうして、三十秒後、偶然、道に人が一人もいなくなった時に期待に満ちた表情で少年は目を開ける。


「来た俺の時だ…い。は?」


 そして、彼の目に映った光景は彼が望んだ内容を写した携帯端末の画面ではなかった。

 携帯端末の画面ですらなかった。

 視界が黒一色に染められた漆黒の世界であった。

 焦った彼は光源を探して上を見上げると、確かにそこには光があった。しかし、時が刻まれるにつれ、それは小さくなっていく。まるで遠ざかっていくかのように。


「…落ち……てる…?」


 しかし、落下にしては奇妙な感覚であった。浮遊感も空気抵抗も感じない。ただ、単に移動をしているような感じ。これで違和感を感じない人間は恐らくあまりいない筈。


「こんな高性能な落とし穴、何処の天才的な悪ガキが作ったって――」


世界線(ワールド・ボーダー)を突破しました』


『これの影響によりEX(エクストラ)スキル【理外者】を取得しました』


 少年が落下現象に対して愚痴を言おうとした瞬間、妙齢の女性のような声が彼の頭に鳴り響いた。


「ちょっと何言ってんのか僕理解出来ないなぁ、お姉さん」


『世界の理に対して【理外者】を魂の形状に合わせて最適化します』


『これによりUN(ユニーク)スキル【極達者】を取得しました』


『これより最上位世界アークに入ります』


「ちょっまっ!心の準備ってやつがまだ……」


 少年が何かを言い終わる前に、漆黒の世界は颯爽と消え去り色のある光景が少年の視界を包み込む。

 そこは巨大な木々が立ち並ぶ樹海であった。枝葉などに日光を遮られたそこは気味が悪く薄暗かった。

 しかし、少年にとって、そのような光景など、気味悪がるどころか眼中にすら入らなかった。


「……oh……myごぅ……」


 膝と手を地に付けた四つん這いの体勢で嘆く少年。

 しかし、そこである存在に気付く。

 視界に映る半透明の文字盤。


「なんやコレ?」


 思わず母方の出身地の方言で突っ込んでしまった。


「吃驚仰天の極みだぜ……」


 文字盤に書かれた内容はこのようになっていた。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名前:アクタロウ・タカナシ

称号:村人A

≪スキル≫

N【格闘】LV1

N【投擲】LV1

N【剣術】LV1

N【足運び】LV1

N【料理】LV1

N【操糸術】LV5

UN【極達者】

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 少年改め小鳥遊(たかなし)芥郎(あくたろう)は宙に浮かぶそれを見て、腕を組み一頻り首を捻りながら唸った後に呟いた。


「何処で俺の個人情報が漏れたんだ?」


 彼は未だに自身に起こった物事の重大さに気づかないでいた。


「ていうか、このスキルってやつは何だ?見たところ……もしかして、俺の特技?」


 彼はスキルの項目に書かれたワードに覚えがある、というより心当たりがあった。

 【格闘】は小学校低学年の時に習っていた空手で、【投擲】は小学校高学年の時に入ったいたリトルリーグにて培ったピッチング技術で、【剣術】は中学の時のクラブでしていた剣道。恐らくだが【足運び】は現在高校でのクラブ活動でしている陸上部で培った走りの技術だろう。【料理】はただの趣味だ。そして、【操糸術】に関しては、昔から大の得意だった綾取りのことなのだろう。綾取り選手権の全国大会で優勝した経験もある。

 

「でもわかんねーなぁ。この【極達者】ってやつだけは」


 試しに文字盤に触れてみた。


「さわれる……」


 今度は【格闘】の文字に触れてみる。すると、一瞬だけ発光し、文字の下に説明文らしき文字列が【剣術】との間に割り込むように現れる。



N【格闘】LV1

人間の身体の各所を応用した技や型によって構成された戦闘術を総じて纏めたスキル。後に個人個人の戦法や流派によって特化する分野が絞られ様々なスキルに派生する。このスキルを維持した状態で武道を歩むというのなら、何かに特化せず全ての分野を満遍なく鍛練していく必要がある。仮にこのスキルを限界まで極めたというのなら、それは正に全ての格闘術を極めた事に同義するであろう。



「説明なっが……。ていうか、今思えばLV1って低いんかな?それなりに得意なつもりでいたんだけどなぁ……」


 説明文を閲覧できることの解った芥郎は、気になっていた【極達者】の文字にタッチする。



UN【極達者】

世界で一人しか取得できないユニークスキル。【理外者】の派生スキル。自分のスキルでスキルレベルの概念があるものならば、どのようなものであれスキルレベルを最高値にまで上げる事が出来る。【理外者】の性質である自己の詳細を視る能力も含まれている。


「うっわ、何だコレ?明らかにゲームとかをおもんなくさせるやつじゃん。改造厨は嫌いだけど、公式でもここまでバランス崩壊するやつはあんま好きになれないな。まあ、課金は好きだけど。……うん?ちょっと待てよ……」


 芥郎は自分がかなり重大な事を呟いた事に気付く。


「……ゲーム……だと?これが?なんにしても感触とかはリアル……。まさか、ヴァーチャル世界?俺はソレを研究してる機関に手軽な実験台として拉致されて、今まさに実験の真っ最中……だとか……」


 そして、【極達者】の説明文の最後に書かれてある内容を注視する。


 『自己の詳細を視る能力も含まれている』


「でも、わざわざ能力として、こんなの持たせておくものか?なんか、その、普通の一般的なシステムとして置いておく気がするな……ん?」


 そこで気付く。説明文の下にこのような文章が現れていることに。



スキルを使用しますか?【yes? no?】



 芥郎は少し旬順した後に「yes」を押す。

 そして、ステータス表は選択画面に移る。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

どのスキルを極めますか?

N【格闘】LV1

N【投擲】LV1

N【剣術】LV1

N【足運び】LV1

N【料理】LV1

N【操糸術】LV5

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 彼はそこで試しとばかりに【格闘】を選択してみる。


『スキル【格闘】のレベルが999になりました』


 先程、此所に来たときに聞こえた妙齢の女性らしき人の声が頭に響く。

 芥郎はそれに対して少し驚くが、特に気にしなかった。


「さて、何が変わったのか確かめてみるか……」


 そう呟いて、芥郎は軽く腰を低くした。左手を前に突き出し右手を握り拳を作って腰の横に据える。

そして、左手を引きながら、本気で右手を前に突き出す。

 瞬間、芥郎の拳は前方にあった空気を大きく押し出す。拳の圧力に押された空気は周りの空気を押し出しながら進んでいき、周囲の木々の枝葉をガサガサガサと音を立たせながら大きく揺らした。

 それを起こした張本人である芥郎はというと、その現象に腰を抜かしたところに自分で起こした風に大きく煽られ体勢を崩し尻餅を突いていた。


「スゲー!ここまで滑らかにパンチ撃てたのなんて初めてだ!人間って武術極めたら此処までやれるのかよ。風起こせるとか、俺もう人間じゃないんじゃね?」


 スキルのレベルを上げる事に関しての味を占めた芥郎は、それからは何の抵抗もなくに全スキルに【極達者】を使用した。

 結果、スキルの内容に関する行動の全てにおいて、芥郎は規格外な力を発揮するようになった。

 先ずは【投擲】。目測約100メートル程離れた地点に座す樹木を見定め、それに対して適当に小石を拾って軽く手首のスナップだけで投げてみる。何の気なしに投げられた小石は見事にその木に命中した。

 次は【剣術】。そこら辺で拾った木の枝で凪ぎ払いの動作を行ってみる。その動作は、剣道経験者である自分でも考えられないと芥郎が驚愕するほど、早く鋭く力強く滑らかに枝先を自らの側面にまで持っていく。枝先は振った本人である芥郎が目で認識できないレベルで速かった。そして、斬撃は枝先の軌跡をなぞるようにして前方にあった樹木の根元に大きく傷を残した。もし、このときに自らが持つ得物が鋭利な刃物だっとのならどうなっていたのやらと考え、芥郎は冷や汗を掻いたのであった。

 そして、【足運び】。これを強化した瞬間、地に足が着いた際に起きる運動エネルギーの流れが、まさに足にとるように感覚で理解出来たのが解った。そして、その上でのその運動エネルギーの至極効率のいい運用方法もまた感覚的に理解出来たのが解った。その感覚のままに走ってみると、空気抵抗の激しさに芥郎は一瞬だけ腰が引けてしまった。一番驚いたことは、試しにと切り立った崖の壁を走り登ってみて約30メートルの高さまで辿り着けた事であった。しかし、それ以上の高さを求める事は叶わなかった。芥郎自身の体力が尽きた上に、酷使された脚の筋肉が悲鳴を上げたからであった。しかし、実質“足運び”を極めただけあり、落下からの着地の際の衝撃の緩和及び受け流しに関しても凄まじかった。疲れた脚で行われたそれらは見事、落下からのダメージを“全て“打ち消した。

 流石に【料理】と【操糸術】に関しては、色々と設備や道具を用意する必要があったので試すことはできなかった。


「なんかもうやべーな……!」


 ここにきて芥郎は自らの習い事や部活動に対して中途半端にしかのめり込まない飽き性な性格に感謝していた。

 おかげでかなりの分野を極めれた。


「さて、こうしてじっとしているのもあれだし何かするか!」


 そう思い立ったが矢先、彼の前に突如何かが現れた。


「……これ……狼なのか……?」


 彼の目の前に現れたのは上半身だけが筋骨隆々な人の形をした巨狼であった。


「てか、はよ逃げやな!!!」


 彼は身を明後日に翻し駆け出す。

 果たして、巨狼は逃げ出した芥郎を追い掛けた。


「ヒィッ!」


次回は初戦闘です。

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