004 閉ざされた世界
俺達が村に戻って来ると、プレイヤー達が少しざわついてるようだった。ちなみにプレイヤーの中にはベース系素材ではなく、鎧を着込んでいたりドレスを着ていたりと、恰好が変わってるのもいた。その人は恐らくクラスを変えたのだろう。クラスを変えるとそのクラスにあった装備品がもらえるそうだ。
「何かあったのか?」
「さあな。ちょっと聞いてくる。」
イルカはそういうと、近くのプレイヤーに事情を聞きに行った。
それで、イルカが聞いた話によると、どうやらログアウトができなくなったという前時代のラノベのような展開のようだ。
実際にステータスウィンドウを開いて確かめてみると、確かにログアウトができなくなってる。
「どういうことだ?」
「俺が知るかよ。まあでもこうなったからには、外部の人間が関与してるのは確かだな。」
「それはある意味当然だな。というかこの状況はそれしか考えられないだろ。」
俺達がそんな話をしていると、突然空から声が聞こえてきた。
「困惑してるようだな、プレイヤーの諸君よ。私は巽稔というものだ。」
何かキャラメイクの時の神の声を思い出す聞こえ方である。
というかこいつ今巽稔と名乗ったよな?それってあの巽稔か?
巽稔というのは、世界をまたにかける天才ハッカーだ。
彼の手により様々な国や企業の重要機密があちこちに流れ、世界的に指名手配されている。ちなみにその被害額は、日本円にして数百から数千億円にも上るという。とんでもない額である。
「今私の手により、諸君らはログアウトを封じられた。すなわちこのゲームに閉じ込められたわけだ。だが勘違いしないでもらいたい。私はただこの世界に閉じ込めただけであり、それ以外の危害を加えるつもりはない。私は飽くまでハッカーであり、殺人鬼ではない。それに諸君らの中には、一日十数時間という単位でプレイしようとしてた者もいるのだろ?そんな人には寧ろ喜ばしいと思うがな。合法的に一日中ゲームができるのだからな。
さて、一つ念を押しておくが、ここは飽くまでゲームだ。死んでも死なないから安心しろ。諸君らはただゲームを楽しめばいい。ゲームを楽しみ、ラスボスを倒し、そのあとで私を倒せば、諸君らを解放しよう。」
俺がそんなどうでもいいことを考えていると、突然巽稔は一気にそうまくし立て、その声は聞こえなくなった。
聞こえなくなったあとのプレイヤーの反応は、主に二つ。
一つは純粋にゲームを楽しもうとする組。俺とイルカはこっちだ。
もう一つは、閉じ込められたことによる不安感を見せる組だ。 しかし後者の組も、巽稔の死んでも死なないという言葉を信じたのか、はたまた実際に死に戻りしたプレイヤーがいるという事実に希望を持ったのかは知らないが、徐々に顔色が明るくなっていく。
「まあ何だ、こんなことになっちまったが、とりあえず飯を食おうぜ。お互い満腹度が減ってるだろうしさ。」
不意にイルカにそういわれて、満腹度を見てみると、確かに三分の一ほど減っている。
「それもそうだな。腹が減っては戦はできぬというし、何か買おうぜ。」
俺はイルカにそういうと、イルカは頷き、神託所を通って村を南北に貫くメインストリートを歩きはじめた。
漸く閉じ込められるところまで来ました。
1/26一部改稿しました。