027 飛行
翌日、俺は再び荒野をパトブレの街を目指して歩いている。
サイドルの街を出て約30分、俺は今キャリークロウと戦っている。
「カァ!」
キャリークロウが空から突っ込んで来るので、俺はそれを避け、右手のダークエッジチャクラムで切り付け、そのあと左手の蜂戦輪を投げ、追撃をかける。
さて、このまま戦っても普通に倒せそうだが、ちょっと試したいこともあるので、印を切りはじめる。
「《変化の術》」
俺がそういうと、俺のいるところから煙が溢れ、俺の姿はキャリークロウのものへと変わる。口が嘴になり、両腕が翼になってるので、かなり変な感じがする。
さて、何故俺がキャリークロウとの戦いで《変化の術》を使ったのかというと、理由は至極単純、飛行系のモンスターになった場合ちゃんと飛べるかどうかの実験をしたかったのだ。
早速俺は翼になった両腕に力を込める。すると、俺の体は地面から浮き上がり、その高度を徐々にあげていく。どうやら問題無く飛べるようだ。
「カァァ!!」
俺が飛ぼうとしていると、そこにキャリークロウが突っ込んで来る。《気配探知》スキルによりそれを感じ取ることはできたが、飛ぶことに夢中になっていた俺はそれを避けられずに直撃する。
「いってえなこのクソ烏野郎!」
俺はそう汚らしく喚くと、両腕(翼)をはためかせる。今はおまえも烏だろなんて突っ込んでくれる人はいない。空へと舞い上がったキャリークロウへと弾丸飛行で突撃して、嘴を思い切り突き刺す。
「カァァ……」
キャリークロウはそう弱々しく鳴くと、光りになって消え、ドロップアイテムがアイテムポーチに入る。さて、あとは飛ぶ練習だな。弾丸飛行は簡単にできたが、それだけじゃなくもっと自由に飛べないと意味が無い。
俺はそのあと、飛ぶ練習に精を出すのだった。
――――――――――――
俺は今、パトブレの街を目指し空を飛んでいる。いやー、慣れないうちは大変だけど、コツを掴むと楽しいものだな、空を飛ぶのって。
あのあと、俺はあれこれ試しながら飛ぶ練習をし、コツを掴むとそのままパトブレへと飛んで行くことにした。空の移動は楽でいいな。地上のモンスターは全部無視できるから、キャリークロウだけ注意してればいい。
一つ予想外なことは、飛んでる間はSGを消費することだ。飛ぶ速度によってその消費量は変わり、速いときほど消費が大きくなる。おかげで適宜休憩する必要がある。
――――――――――――
俺は休憩を挟みながら飛びつづけ、パトブレの街の前で下りる。
パトブレの街の前に降り立つと、そこに攻略組の面々がいたので、声をかける。
「よ、おまえらも来ていたのか。」
「何でキャリークロウが喋ってるんだ!?」
俺が声をかけると、攻略組のプレイヤーの一人がそう声を荒げ、臨戦体制をとる。そういえばまだキャリークロウのままだったな。
「おっと、悪い悪い。このままじゃわからないか。《変化の術》解除。」
「おまえ、海月か?何でそんな姿できたんだ?」
俺が《変化の術》を解除し元の姿に戻ると、攻略組の中にいたイルカがそう声をかけてきた。
「何でって、まあ飛べるかどうかの確認がしたくてキャリークロウになったら問題無く飛べたので、文字通りここまで飛んで(・・・)来たってところかな。」
「それで飛べなかったらどうするつもりだったんだ?」
「その時は、PGが回復するのを待って、PGが溜まったら《変化の術》を解除して普通に歩いてきたな。」
「おまえは一体何をやってるんだよ。さすがは『千変万獣』だな。」
「その呼び方はやめてくれ。それよりも早く街に入らないと雷に打たれて死に戻りだぞ。」
俺がそういうと、イルカを含めた攻略組のプレイヤーが慌てた様子でパトブレの街に入っていった。さて、俺も行くか。
――――――――――――
パトブレの街に入った第一印象としては、荒くれの街といった感じだ。
道は舗装されておらず、家も石造りというよりは土を固めて作ったといった感じで、かなり粗雑なものが多い。
入口は今入ってきたところしか無く、他は木の板で覆われている。
入口から真っすぐいったところに街の隅に追いやられるように神托所があり、他の街(といっても比較対象は二つしか無いが)よりも寂れてる感じだ。ごろつきや荒くれのNPCが多いのも特徴だ。
そしてもう一つこの街には特徴がある。それは、他の街(といっても比較(以下省略))と比べて物価が高いのだ。倍はある。当然宿も高い。これは今日は野宿する必要があるな……
そんなことを思いながら、俺はパトブレの街の探索を進めるのだった。
《変化の術》は、相手がやってることならだいたいできるようになります。
もっともできるだけであり、それを使いこなせるかどうかは個人のPSですが。




