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とある兵士と少女達の出立前

 第8話です。



 野鳥の鳴き声が、薄暗い森の中に響く頃、ジェフは、半分頭を眠らせた状態で火に薪をくべていた。

 昨日隣にやってきた徐晃は、頭をゆっくり撫で続けると、直ぐに眠りについたので、暫くしてジェフが抱っこし、徐晃がジェフの隣に来る前に眠っていた、満寵の隣へ移されていた。


(やっぱ、2日完徹はだりぃな)


 とりあえず愚痴ってみるジェフだったが、何だかんだ言っても少女達の前では、余裕をなるべく崩さない様にしているのだった。


(慌てて適切じゃない名前を名乗ってる時点で、余裕も糞もねぇがなぁ…)


 どうやらジェフにとって、昨日の名乗り自体、完成な醜態だと思っている様だ。


(とりあえず、そろそろ日が出だす時間だ。全員を起こして、体調確認がてら他のお嬢ちゃん達の名前確認して、狩りをしながら森を出る…って、所か、暫く眠れねぇな)


 ぼーっと火を見ながら、腕時計を確認しつつ、今後の大ざっぱな行動プランを考えていると、もぞもぞと動いている塊、響が起き出してきた。

 起き出した響は、ぼーっとした顔で辺りを見渡していると、ジェフと目があったが、暫く見つめ合っているとジェフが口元をなぞった。


「おい、お嬢ちゃん。涎涎」


 まだぼーっとしている響だったが、頭が冴えてきたのか、口元に右手の甲を当てると、ヒンヤリした感覚を覚えた。

 すると、再びジェフと目が合った響は、声にならない悲鳴を上げてしまうのだった。




 顔を真っ赤にした状態の響は、一張羅のボロ布(胸元と腰のみ)を一応正して、深く頭を下げた。


「さ、昨日といい、今し方といい…た、大変お見苦しい姿をお見せしてしまい、申し訳ありませんでした」


 響は、とても恥ずかしそうにしており、真っ赤な顔に目元にはじわっと、涙が溜まっていた。


「まあ、あれだけ騒いで、眠ったんだ。かなり気持ち良く眠れたんだろ? 寧ろ快眠出来た事に感謝しとけって。とりあえず、頭下げるのは止めてくれ」


 謝罪していた相手に言われた為、顔を上げる響だったが、顔は相変わらず赤いままだった。


「はぁ、殿方にあんなはしたない姿を晒してしまうなんて、父上や母上になんて言えば良いのか…」


 自分のそんな醜態を嘆いている響を見ていたジェフは、何となく納得してしまった。


「なるほどねぇ、徐栄と良い、お嬢ちゃんと良い、似た者同士だから仲が良いって所か?」


 ジェフにそう言われた響は、今度は照れてしまった様だった。


「え? いや、まあ、余り似てないと思いますが、そう見えますか?」


 響は、自分の顔を触ったり、身体を見やりながらジェフに聞いている。


「顔の造形や身体つきじゃねぇよ。真面目な所っつうか、根本的な性格だよ。真面目で優しい気質、且つ自己犠牲が強い。真面目だから責任感も強そうだしな」


 そう言われたので、響が少し言われた箇所を、徐栄と自分で照らし合わせてみると、ああ、と納得してしまった。


「とるぅまん様は、人を観察されるのが、お得意なんですね。…羨ましい事です」


 等と、響が言っていると、ジェフが言い返した。


「観察してた訳じゃないが、そう見ちまうんだよ、職業柄な。まあ、真面目なお嬢ちゃんや徐栄に言ったって無理だろうが、ちっと適当にやる事を覚えた方が良いぜ?」


 その言葉に少しムッとした様子の響に、言葉が足りなかったなと言いながら、ジェフは付け足した。


「何もだらけろって訳じゃない。適当って事はよ、一つの物事に全力で当たり続けるんじゃなく、一つの物事に対して使用する力を適切に見極めてやってけって意味さ。調子の良い時もありゃ、悪い時もあるだろ? どんな状態でも常に最高の結果を出さないといけないっつぅのは理想だが、現実的じゃない。人間何だからな得手不得手に好不調、色んなもんを考えてその時出来ることを出来るだけやれるように、とりあえずやってみな。今のままだと、また昨日みたいに暴発するぜ?」


 そんな風に言われ昨日の事を思い出し、また赤面してしまった響だったが、同時にこうも思った。


(確かにわたしは、少し生真面目が過ぎると言われていましたが、それ以上は言われませんでした。結果を出していましたから、今もつい先ほどまで虜囚の身であっても同じ様に出来ると思い、結果とるぅまん様の仰る通り暴発してしまい醜態を晒してしまいました。とるぅまん様の仰るとおり、ですね。少し気にかけてみましょう)


 響がジェフに言われた事を反芻していると、ジェフが昨日の続きとばかりに響に聞いてきた。


「あ~っと、お嬢ちゃんよ、昨日自己紹介出来なかったから名前を聞いておきたいんだが?」


 そう言われ考えていた響が、ビクッと反応する。


「あ、あぁ、も、申し訳って、…ふぅ、わたしの名前ですが、姓は李、名は儒と申します」


 昨日の事を出された為、また癖で謝ろうとしてしまった李儒だったが、ジェフに言われたことを思い出し、息をついた後、自分の名を告げるのだった。




 李儒がジェフに自己紹介を終わらせた頃、日が登りだしたと同時に徐晃が起き出した。


「あ、オジさん、おはよー」


 にこやかに朝の挨拶をする徐晃に対して、ジェフは額にデコピンを放っていた。


「っ!? いったぁい!! な、なんで!?」


 目を白黒させながら、ジェフを非難する徐晃だったが、ジェフは肩をすくめながら答えた。


「さっきから起きて、聞き耳立ててた罰って所だ。徐晃、子供のお前が、空気なんて読む必要はねぇよ」


 確かに、李儒の暴発時には助かったがとジェフは心の中で呟いていたが、不満そうな表情で徐晃が反論した。


「だって、響姉とオジさんが2人で話してて、大切な話みたいだったから…」


 そう言いながら涙目で両手を使い額をさすっていた徐晃を、優しい顔をしたジェフが撫で始めた。


「気持ちは分かるけどよ、其処まで気を使う必要は、今はまだねぇよ。寧ろ、今からは洛陽まで、俺達は運命共同体なんだからな、遠慮なんざするんじゃねぇよ。良いな?」


 そう言われた徐晃が、更に元気よく、うん!!と返事をする様子を李儒が小さく笑っていた。


 徐晃と李儒が起きたことにより、他の少女達も起き出してきた。


「藍があんなに大きな朝の挨拶や返事をしているのですから、目覚めるのは当然です。ねぇ、藍?」

「ふぉへんなはい、ふぉへんなはい、ねへるほひに、ふぁわいはりひまへんはら、ひっはららいれ~!!」

(ごめんなさい、ごめんなさい、寝てるときに、騒いだりしませんから、引っ張らないで~!!)


 と、満寵に両頬を引っ張られている徐晃が居る以外は特に何もなく平穏な時間が過ぎていった。

 そんな原因の一端であるジェフは、まだ怯えられながら、名前を聞いていない少女達の名前を聞きつつ、直診と問診を行っていた。


(ふへぇ、これで全員か、まだ何とかなるが、人数多いとやっぱり一人で把握するのはキツいな。これに護衛のミッションって、俺、軽く死ねるんじゃねぇかな…)


 見栄が優勢しているジェフなので、そんな事は口が裂けても言えなかったが、そんな姿を見ていた徐栄が、何を思ったのかジェフに近づいてきた。


「とるぅまん殿、少し頼みたいことがあるのですが…」


 近付いてきた徐栄に、一瞬身構えたジェフだったが、徐栄に頼み事と言われた為、聞く体制に入る。

 目の前に、徐栄が座り、用件を切り出した。


「実は、貴方が先日倒した賊徒の場所へ、案内して欲しいのです。賊徒とは言えそこそこの装備をしていましたから、利用できそうな物を回収したいのです」


 あの徐栄に、真面目な顔で、死んだ相手の装備を剥ぎたいから連れて行ってくれと言われ、一瞬怪訝な表情をしたジェフだったが、急に意地悪い顔になり答える。


「死人の装備を盗むなんて、真面目な徐栄さんが、一体どうしたんだ?」


 そう言われた徐栄だったが、ニコリと笑みを浮かべ、答える。


「今自分に出来る事を、自分の様子を見てしていこうと思っただけですよ、とるぅまん殿」


 そう言われ、聞いてやがったかと内心で思いながら、ジェフは、徐栄を伴い賊徒の下に向かうのだった。



 漸く移動かと思わせておいて、まだかよ!?とする作者です。


 一応主要メンバーの第一陣が出揃いました、が、また何人か入ります。

 有名って程では無い人が入ります。



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