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とある兵士と少女達の午前

 第4話どす。

 少し騒がしい周りに、藍色の髪の少女、藍が眠い目を擦りながら目覚めると、側には萌と響が心配そうな顔で、藍の顔を見ていた。


「藍、大丈夫か? 痛い所はないか? 気分は悪くないか? 大丈夫か?」


 相変わらずの心配症な萌を見て、藍は大丈夫だよ~と、苦笑しながら告げて辺りを見渡すと、男が居ないことに気付いてハッとする。


「あ、あれ? 萌姉、オジさん何処行ったの!?」


 そう言われて、萌はばつの悪い表情になった。


「あ、ああ、あの男は、私が目を覚ますと、お前達を頼むとか言って森の中に入ってしまったんだ、追いかけようにも皆眠っているし、身体も思うように動かせないからどうしようかと思ってな」


 心底困った表情をする萌を、苦笑気味に見つめていた響だったが、その後、藍に向き直り気になっている事を問いただしてきた。


「ねぇ、藍ちゃん。わたし達、昨日居た場所と違う所に居るような気がするんだけど、此処へは誰が?」


 答えは大半決まっている様な問いだったが、藍はとりあえず答えることにした。


「分かんないけど、多分オジさんだと思うよ。私が見たのは怪我してる皆に何かしてる所からだし…ほら、萌姉と響姉の腕とか足」


 そう言われ萌と響は、自分の状態を確認すると、所々に白い布が巻かれており、其処からツンとする刺激臭が漂っていた。


「確かに、昨日に比べれば身体は、大分マシになっているが…」


 萌が、自分の体調の事を話している最中に、茂みが動き出し萌達は警戒しだした。

 萌は身構えた瞬間身体が痛んだ為、顔をしかめると藍が萌と響の前に出るのだった。


「藍!? 何をしているんだ!? 早く私の後ろに…」


 慌てながらそう言う萌を後目に藍は答える。


「多分だけど、大丈夫だよ。萌姉」


 そう答えて、藍はニコリと何時も萌達を和ませる笑顔を作ると、茂みの中から大きな鹿を肩に担いで男が出てきた。


「あ、オジさん。おかえりなさい~」


 男は藍色の髪の少女が、もう目覚めた事に半ば呆れていた。


「ああ。…ガキんちょお前、もう起きたのか?」


 藍を一瞥し、消えそうになっている焚き火を見て薪を幾つか投入しつつ、リュックサックに手をやると、萌と響が警戒したが、藍は気にしなくなっていた。


「ガキんちょ。もう警戒しなくて良いのかよ?」


 そう言われた藍は、ニコニコしながら答えを返す。


「ん~、確かにちょっとは怖いけど、昨日でオジさんが悪い人じゃないって思ったから、良いかなって」


 そう言う藍を戸惑いの表情で見つめる萌が、男に向き直り口を開いた。


「あのこれは、そ、その、あなたが傷を治療してくれたのか?」


 男は、リュックサックから新聞を取り出して、破りながら答えた。


「ああ、流石に見てられなかったんでな、まだどっか悪いなら言え。治療出来る所ならしてやるよ」


 そう言うと、男は手に持っている新聞紙をズボンの右ポケットから取り出した、ジッポーライターで燃やし始め、そうして作った火種を焚き火にくべた。

 その光景を萌と響は驚きの表情で、藍は好奇心が満ち溢れた表情で見ていた。


「オジさん、オジさん! 昨日から思ってたけど色んな道具持ってるね!!」


 かなり興奮気味の藍を抱え込んで抑えた響が、おずおずとしながら疑問に思っていることを口にする。


「あ、あの、あなた様が破っているのは紙ですよね? 火を起こすのにわざわざ紙を燃やすのは勿体無いと思うのですが、それに簡単に火を起こす道具をお持ちの様ですし、あなた様は一体…」


 おずおずと、しかし探る様な目で見る響に、男は肩をすくめる。


「さあな、そんな事を知ってどうする気だ?」


 そう言われた響は、即座に言葉を返した。


「あの男達を簡単に倒してしまった強い殿方の事を、知りたいと思うのはいけませんか?」


 媚びる様な笑顔と科を作り、そう言う響に男は切り返す。


「白々し過ぎるから言ってるんだよ、お嬢ちゃん。大体な、頼み事があるならさっさと言えっつうの。お前らに交渉の材料なんて殆どねぇじゃねぇか」


 そう言われて、響は笑顔を一瞬ヒクつかせたが、直ぐに惚けて甘えるようにしつこく男の情報を探ろうとした。

 響の言動を余り気にしていない男ではあったが、内心は焦燥感がジリジリと、湧き上がってきたのだ。

 男も本来なら少女達を落ち着かせてから、出せる程度の情報交換を行うつもりだったが、響の言葉でそれ自体が無理に等しいと思い始めたからだ。

 子供である藍ですら飲み物の種類を知らず、響に至っては新聞やライターを知らなかった。

 藍がライターを知らない事は、子供なので、ジッポーライター自体知らなかったと言い訳したとしても、無理がある。

 子供でもライター位、分かるだろう。

 と、男の中で結論付けた。

 そしてこの事態の理由を考えた時、1人の人物が頭の隅を通過し、男が歯を力一杯噛み締めた。



 そんな、明らかに不機嫌状態の男を前に少女達三人は、恐れや脅えに震えだした。


「あ、あのオジさん? ど、どうかしたかな?」


 脅えだした少女である藍が、何時もの明るさを無理矢理引き出しておどけて見せたが、男は無言のままだった。

 少女達の中で、特にしつこくしてしまった響は、恐れを抱いてしまった。

 響からすれば、皆と一緒に生きて森を出られる千載一遇の好機だったので、強引すぎたとしても行くしかないと思っていたからだ。

 それに、あの警戒心が強い藍が信用したのだから、多少の無理は覚悟の上だったが、この男の機嫌の急降下は予想外だった。


「も、申し訳なかった!!」


 響は先ず、この危険な状態を脱する事を優先しようとしたが、その前に萌が男に対して謝罪してしまった。


「響があの様にしつこく貴方の事を探ろうとしたのには、訳があるんです。どうか先ず話を聞いていただけませんか!!」


 身体を走る痛みに、脂汗を少しずつ出しながらも話を聞いてもらおうとした萌だったが、男に反応は無かった。


「お、オジさん。お願いだから、許してよ!」


 状況があまり良く分かっていない藍だったが、あの萌が謝ったのだから、非は此方にあるのだろうと思ったので、何とか許して貰おうと男に声をかけた。


「うん? どうしたんだ、ガキんちょ」


 急に先程の不機嫌さが消えた男が、普通に話しかけてきた為、藍や萌達は一瞬惚けてしまった。


「へ? えっとオジさん、怒ったんじゃないの?」


 頭に?マークが大量に出ている藍がそう男に質問するのだったが、男は怪訝な顔して答えるのだった。


「俺が? 怒る? 一体何のことだ?」


 男にとっては、考え事をした後、原因が大体分かった為、どう元凶を追い詰めるかを更に考えていただけなので、むしろ少女達に怒りなど全く向けていなかった。

 なので、藍が「怒ったんじゃ?」と言った時に「はぁ?」と聞き返す妙な状況になってしまった。


「いや、怒るって誰が? 誰に対して?」


 そう男に言われて、涙目になった藍が怒鳴る。


「お、オジさん、スッゴく怖い顔してたんだよ! 私も萌姉も響姉も皆怖かったんだから!!」


 急に怒鳴られてしまい、少し驚いた男であったが、思い返すと、とりあえず元凶はぶち殺すと考えていた為、それが顔に出たんだろうなと理解したので…


「悪かったな、すまんガキんちょ。許してくれ」


 とりあえず頭を下げる男だった。




 藍の怒鳴り声が朝の森に響き渡り、それが爽やかな目覚め…

 に、当然なるわけもなく、膨れっ面の藍と何事も無かったかのように、鹿を捌く男とぽかんとした萌と響に、何事か分からずに困惑する起きたばかりの少女達と中々の混沌具合が場を制していたのだった。

 鹿を捌きながら、簡易コンロに鍋を置き水を入れ、水が煮立ち始めた時に、ラックから取り出した小さな茶色のブロックを鍋に放り込む。

 そして、火を弱めて少し待った後、鍋の中身をスプーンで一掬いし、手の甲に垂らして味見をした後、もう一掬いし藍にスプーンを差し出した。


「ガキんちょ、こんなんで良いか?」


 ブスッとしていた藍であったが、湯気の立つスプーンと鍋の匂いから、知らない(タン)だなぁと思いフラフラ行きそうになりハッとした後、またブスッとして男から目を逸らした。

 男は肩を竦めると響の方へ向き直る。


「あっちのガキんちょが、使えないからお嬢ちゃん。お前が飲んで聞かせてくれ」


 そう言って響の前に、スープの入ったスプーンを差し出され、少し訝しんだが只でさえ先程微妙な態度を取ったので、此処で更に非協力的な行動を取って、男に良くない印象を与えたくなかった響は、意を決してスープを飲んだ。


「…っ、少しと言うか、多少塩辛いかも知れまっ、い、いえ!?美味しいと思います!!」


 最初はご機嫌取りをしようと決めていた響だったが、知らない湯を飲み料理好きの血が抑えきれず騒いでしまったのか、普通に返しそうになり、慌てて肯定するのだった。


「なる程、ちっと塩辛いか」


 響の慌てっぷりを普通に流し、ふむふむと納得しながら、男は更にコンロの火を弱くし、リュックサックから大きめの鍋を取り出した男は、捌いた鹿の肉に、ほんの一摘み塩をまぶしながら鍋に入れていき焼いていく。

 肉全体に焼き色が付いた所で、先程から火にかけていたスープを投入し、味を確かめつつ塩胡椒で味を調えていった。


「まあ、こんなもんかね。怪我人やら身体が弱ってる奴らに肉料理は、ちっと辛いかもしれねぇけど、食えなかったら残して良いぞ。無理して食べると逆に身体に悪いかんな。ああ、ワリぃけど、器が殆どないから、4~5人で1つの器な~」


 そう言って、かなり大きめの器に肉入りのスープを入れていき、少女達の前に置いていく。

 男はそう言った後、木に背を預けて本を読み始めると、萌が男に話し掛けた。


「あ、あの貴方は食べないんですか?」


「うん? ああ、どうせお前ら全部食えないだろ? 残りを貰うからサッサと食っちまってくれ」


 そう手をヒラヒラさせて言うと、本を読み始めた。

 その姿に、どう言おうかと一瞬考えてしまった萌だったが、他の少女達が、視線を器に入った湯と自分を見ていることに気づき、苦笑気味に告げる。


「せっかくのご厚意だ、受け取ろう。いただきます」


 そう言って萌は、痛む身体を動かして、先に湯を飲み肉を食べると、少女達は競って食べ始めるのだった。



 何時になったら、森から出るんでしょうか…


 名前も真名が地の文に載るだけとか…


 主役に至っては、小僧か男ですわ~。



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