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とある二人の再入局1

 大変! 遅く!! なりました!!!

 35話になりますです!!

 北海の役所の廊下を、優美な動きを見せながらも急いでいるのか、早足の女性が居た。


「まさか、今日、着任の挨拶に来るなんて……。早く(れん)に伝えないと……」


 その正体は、北海の文官頭である王修であった。

 王修は、とある一室、自身の主の下へと急いでいたのである。

 (しばら)く小走りをしていた王修だったが、(ようや)く目的地である一室の前に到着するが、扉の前で止まったまま、難しい顔をして考え込んでいた。


(え~と……。ああ、予定変更するにしても、仕事が山積みすぎるぅ……。いっそのこと、今日来る子達を巻き込んで……。そんな恥知らずな事出来るかぁ!!」

「相変わらずだね。何があったのかは知らないけど、無理そうなら手伝おうか?」


 頭の中で王修は、主人の予定を組み直していたが、何時の間にか目的地の扉が開いていて、自分の目の前に居る人物からの言葉が、王修の耳から頭の中に伝わると、王修の顔は真っ赤になっていた。


「あ、あぁ、練? どどど、どうしたのかしら!?」

「流石に部屋の前で丸聞こえの心の声を聞こえなかった(てい)で言われても、ねぇ……。とりあえず、中に入ったら?」


 王修の動揺を多分に含んだ応答に、苦笑混じりで答えた人物は、王修を自身の部屋の中に招き入れる事にした。


「うぅ……。分かったわ、練」


 にこやかな表情で王修に話し掛ける練と言われた人物の言葉に、王修は渋々部屋へと入っていった。


「成る程ねぇ、そりゃあ慌てるよねぇ。……にしても、毎回考えてる事が、漏れて来るね?」

「うぐっ……。き、気をつけてたのよ!? これでも……」


 新たな人材の話を告げるほか無かった王修は、初めは練と言われた人物の目を見て話していたのだが、結局は痛いところを突かれて目線が下へと下がってしまう。

 そんな様子を見ていた練と言われた人物は、微笑みながら王修に指示を出した。


「とりあえず、まだその子達は来てないし、今の内に出来る限り仕事を終わらせちゃおうか。多分終わらないけど、後はまあ、何とかなるよ」

「うぅ……。ほんとにごめんなさい、練」

「気にしちゃ駄目だよ、(れき)。その子達の前や他の人の前で、同じ事をやらなければ良いだけだしね」


 穏やかな笑みを浮かべる練に、あははと渇いた笑いで返すしかなかった王修であった。


 〇


 一方その頃、北海の役所前には、徐栄と李儒が到着しているのだった。


「……っ!?」

「ほらほら、(ほう)ちゃん。あんまり緊張しないで、身体が固まっちゃってるわよ」


 緊張? しているのか、当の徐栄は身体を硬直させている上、いささか顔色も悪かった。


(生真面目過ぎて、緊張が顔色にまで反映されちゃってますね。どうしましょうか、これ)


 実際、初めて謁見や任官の儀をするわけでも無いのだが、自分達の状況が状況な上、彼女達が会うのはこの北海でも名の知れた人物である「孔文挙」その人である。

 李儒も多少は緊張していたのだが、当の相方が自分以上に緊張していたので、李儒の緊張は逆に解けてしまっていた。


(ふぅ、萌ちゃんのおかげで私の緊張は解けたけれど……。ふむ、いきなりだけど効果を確かめてみようかしら)


 徐栄のあまりの緊張ぶりに、嫌な予感しかしなかった李儒は、早速切り札を切ってみることにするのだった。


「萌ちゃん萌ちゃん」

「な、なん、だ? (きょう)


 李儒の呼び掛けに一応反応した徐栄だったが、油が刺さっていないブリキのようなぎこちない動きで、李儒の方へ向き直った。


「今回の任官の儀が上手くいったら、レオンさんが誉めてくれるかも……」


 しれないわよ? と続く予定だった李儒の台詞は、まともに綴られなかった。


「響、何をしている? 文挙様をお待たせしてはいけないだろう?」


 何故なら李儒の台詞が終わる前に、キリッと表情が引き締まった徐栄が、既に門より中に入って李儒に催促をしていたからである。


(変わりすぎでしょうが、ほんとにもう……。まあ、けど本当に良かった。妙な状態ではあるけれど、萌ちゃんは何とかあれから立ち直ってくれたみたい)


 あまりの変貌ぶりに、苦笑いする李儒は、一瞬脳裏に浮かんだ過去を振り払うように頭を振ると、李儒はその様子を見て首を傾げている徐栄の下へと赴くのだった。


 〇


 その後、役所内で荀コウに渡された書類を文官に渡すと、書類の題目を目にした文官は、書類を徐栄達に返還すると役所の一室に案内し部屋に通した後、大慌てで何処かへ去っていった。

 その様子を目にした徐栄は李儒にポツリと言葉を漏らした。


「大慌てで案内をしてくれた人が、部屋を離れると流石に不安になるな」


 そう漏らして少しソワソワしだした徐栄に、同じく冷や汗を流し始めた李儒が頷いた。


「そ、そうね。普段通りなら、何で慌てる必要があるのかしら……。ま、まさか、ね……」


 李儒の呟きに不吉さを感じた徐栄は、顔色を再び替え始めた。


「も、もう、十常侍が行動を起こしたと言うのか!? 早すぎるっ、いや、此処に到着するのに一月近く掛かっている。事を起こすのには充分か……っ!?」


 顔色を青くし唇を噛み締める徐栄と、絶望感に頭を垂れる李儒だったが、実際は、準備がさっぱり出来ていない王修が文官に、新人が来たらとりあえず別室に案内した後、速攻で連絡しに来いと言う、上司からの命令に従っただけと言う真相を2人が知るのは、当の命令者が自爆した時だったりするのは、公然の秘密になるのだった。


 〇


「遠路はるばるよく来たね。僕の名は、姓は孔、名は融、字は、文挙だよ。2人とも宜しくね。さ、暦も」


 既に自爆済みで涙目になっている王修へ、孔融は自己紹介を促した。


「わ、(わたくし)は、姓は王、名は修、字は叔治よ。2人には配慮が足りなくて本当に申し訳なく思っているわ。ごめんなさい」


 先ほどまで真っ青だった徐栄達の様子を見て、此方の対応で誤解させてしまったと悟った王修が、今度は自身が顔を真っ青にして謝罪すると言う混沌が部屋の中を支配していたが、そんな中でも、笑みを湛える孔融が、王修の肩に手を添えると、孔融も謝罪に続いた。


「洛陽や此処北海まで色々あったみたいだね。それで、あんな感じの対応されたら不安になるのも当然だよね。僕か暦が対応すべきだったよ。謝罪として、これからは僕の事は練って呼んでね」


 謝罪ということで真名を預けられた徐栄達は、開いた口が塞がらなかったが、それ以上に隣にいる王修が慌てだした。


「ちょっ、ちょっと待って、練!? 悪いのはあたしなんだか……「僕は君の上司だよ?」あぐっ」


 自分が謝罪すると言いかけた王修の言葉に、孔融は追い討ちをかける。


「それに、今の彼女達は、荀コウ殿の文を届けてくれた使者でもある。非礼を詫びるなら、やっぱり僕の方が良いでしょ? それに、僕は真名で呼ばれるのは嫌じゃないからね」


 そう言って、柔らかい笑みを向けてくる孔融に、萌と響の表情も自然と柔らかくなっていった。

 その様子を見ていた王修は、一瞬驚くと同時に納得もしていた。


(はぁ、どうなることかと思ったけど、やっぱり練は凄いわね。少なくとも、今はこの2人の心を落ち着かせてくれるなんて)


 自分のしくじりで、更に話が拗れることを覚悟していた王修は、ふぅっと小さく息をついていた。

 その様子を笑みを浮かべたまま横目に見ていた孔融は、話を続けることにした。


「うん、これからは此処で頑張って欲しいかな。何かあったら、僕や暦…、あ、王修に言ってくれたら良いから」

「ああっ、ちょっと待ってよ、練!! んんっ、私の真名は、暦よ。私の失態に対するあなた方への詫びとして、どうかお受け頂きたい」


 本来、主の言葉を遮ったりしたりすること自体不敬に当たるのだが、今はこの場に、4人以外居ない為か、王修も徐栄と李儒に真名を預けてきた。

 そして、緊張が完全に解けていた、徐栄と李儒も真名の交換に応じた為、和やかな雰囲気を醸し出していたのだが、何者かが孔融の部屋の前まで、たどり着いた時、その雰囲気は一瞬で霧散してしまった。


「き、緊急の件に付き、至急お目通り願います! 文挙様!!」


 部屋の前で叫び声もかくやと言わんばかりの声を聞いたその時、部屋に居た者達の顔は既に真剣な表情になっていたのだった。


 〇


 その時、本編の主役たるレオンはと言うと、屋敷の掃除をしているのだった。


「ふぇー、あっちぃ上にほぼ廃屋の修繕からスタートたぁ、仕事が山積みで目から汗が出るぜ、ったくよぅ……」


 などとぶつくさ言いながら、屋敷内の廃材を庭に集めていると、外に買い出しに出て貰っていた徐晃達が戻ってきた様だった。


「おとっ……うう、おじさん!! 大変だよ!!」


 徐晃が何かを言いかけて、言い換えながら、血相を変えてレオンの元へ走って来る姿を見て、レオンはポツリと呟いた。


「俺に平穏っつーのは、無いもんかねぇ」



 リアルで、出向やら体調不良やらで、今年はてんやわんやの大騒ぎになりました……。

 もう、何も起こらない事を、切に願う……。



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