とある兵士と少女達の城下探求2
何とか一週間で更新できました。
何やら1人でコソコソしているレオンさん。
李儒さんに全部ぶん投げた先には何が待っているのでしょうか。
それでは、34話です。
ブティックで李儒が悲鳴をあげている頃、爆弾を投下して逃走に成功したレオンは、ため息を一つついて堅くなった腰を回していた。
「やれやれ、これで一応の拠点も手に入れられたか……」
徐栄達と離れてでもやらなければならない用事とは、レオンが今後、北海で行動するのに適した拠点の確保だったのだ。
流石に、身分証明書等持っておらず、紹介状すらないレオンが、土地と屋敷を手に入れるということは、普段なら難しかったが其処は知恵でカバーする事にしていた。
「孔子とか言う奴の思想を、貂蝉から聞いといて良かったぜ」
此処「北海」を治めている「孔文挙」は、「孔子」と言う、思想家の子孫だと言う情報を貂蝉から聞いており、孔子の思想についても、ザッとではあるがレオンは聞いていたのだ。
「自分のご先祖さんを心から弔う事を重んじる。人の心を重んじる故に、正しい行いに対して、正しい行いをせずにいるのは、勇気が無い事である、ねぇ……。難しい事を言ってくれるぜ、ったくよぅ」
所謂「義を見てせざるは、勇無きなり」の全文を聞き流しながら聞いていたレオンは、これを利用する事にしたのだった。
「ガキんちょ共を大通りで連れ回して正解だったな。利益を得てる時点で孔子の思想から外れてるがなぁ」
肩を竦めながら1人ごちるレオンが土地の管理者との交渉で持ち出した内容とは、盗賊達に浚われた子供達を助けたのだが、命からがら逃げてきたので紹介状等が無い事と、子供達が多い為、必然的に大きい屋敷が要ることを切々と語ったのである。
そのあと、奴隷商人達から奪った血のりが付きボロボロの服の裾から、少量の金を出し土地と屋敷を貸して貰えるよう、涙を堪える様に頭を下げて願い出たのだ。
少女達を連れていた事実を、丁稚等からの情報でいち早く知っていた管理者は、見上げた心意気にいたく感激したらしく、2つ返事で土地と屋敷を貸してくれたのだ。
当然貸与なので、借用書にサインを書かされたが、金銭は落ち着いてからで良いと言ってもらっていたりする。
そして、現在は借りた土地を発見し、門から見える範囲を確認して、徐栄達の居るブティックに戻ろうとしている最中だった。
そんな時に、大きな荷物を抱えた女性が、必死に前に進んでいたので、レオンは、荷物に手を添えつつ話しかける事にした。
「大丈夫ですか、お嬢さん。かなりの大荷物で、す、が……」
抱える前は、其処まで重くは無いだろう、と高を括っていたが、実際持ってみると力を貸している状態で、既にとんでもない重量だったようだ。
(ま、マジか。この世界の女は、全員イカれてるぞ……。くぁー、格好つけるんじゃなかった……)
後悔は先に立たないと身を持って知ったレオンだったが、荷物を持っている女性も無理だと悟ったらしく、荷物を叩き付ける様に置くのだった。
流石に、荷物を叩き付ける姿にドン引きしたレオンだったが、気を取り直して声をかけようとすると、女性が荷物に向かって怒鳴りだした。
「てかさ、人手足んないのは分かるけどさ、こーんなくそ重い荷物1人で持とうとか、馬鹿じゃないの!! そうか、こんな事、頼んだ奴が馬鹿なんだ!! あれ? でもこれって練に頼まれた事よね? ハッ!? ち、違うわ、練は馬鹿じゃない!! こういう事態を、想定出来なかった奴が馬鹿なんじゃない!! ってぇ、結局あたしじゃんかーっ!!」
1人で漫才をしている女性を余所に、レオンは辺りを見渡していたのだが、興奮とぶつける場所の無い憤りで、顔を真っ赤にした女性が側に居たレオンを見つけると、真っ赤な顔をみるみるうちに青くし、震える声でレオンに話かけた。
「あ、あの、今の、見ました?」
「あ? ああ、「人手不足がー」とか「馬鹿はあたしじゃんかー」とか聞いてねぇから安心しな」
「全部聞いてんじゃん!?」
そう返答して移動しようとしたレオンを、ハッとした女性は逃がさんと、腰に向かってタックル気味に突っ込んできた。
「お願い待って!! もう、あなたしか居ないの!! あたしを捨てないで!!」
「ぐぇっ!? 痛ってぇ!! 腰に勢い殺さず、突っ込んでくんな!! あと色々と誤解されそうな事を叫んでんじゃねぇよ!! とりあえず離せ!!」
痛みにより涙目になりつつ尤もな事を叫びながら、レオンは女性を引き剥がそうとするが、女性はレオンの力などものともせずに頭を振りながら叫んだ。
「嫌よ!! もうあなたしか居ないんだもの!! 絶対全力で離さないんだからぁ!!」
「げぇ!? これ、マジでやべぇ!? こ、腰が砕ける!! そ、其処のアンタ、この店の店主かぁ!? 頼むから、俺にその荷車貸してくれぇー!!!!」
女性に腰を尋常じゃないレベルで圧迫されながら、レオンは最後の力を振り絞って、近くに居た店の店主らしき人物に頼みを叫ぶのだった。
〇
一時騒然とした場所から、少し離れた場所でレオンは腰をさすりながら、二輪の荷車を引いていた。
そして、荷台の上には、先ほど発生した問題の品である布で包まれた物体と、途中から何も言わなくなった石像らしき者(誤字にあらず)が乗っていた。
石像の持ち主について、荷車を貸してくれた店主に聞くと、苦笑いしながら場所を教えてくれた為、現在レオン1人で移動中だった。
途中で道行く町人に、石像を指差しながら道を聞くと、皆一様に苦笑いしながら道を教えてくれるので、後ろの石像は、どうやらこの辺では有名人の様だとレオンが思っていると、後ろから悲痛な唸り声が聞こえてきた。
「うぅ~……。あたしったら、なんでまた叫んでるのよぅ。恥ずかしすぎてまた暫く町を歩けないじゃないの~……。こんなんだからお婿さんも来てくんないし、お嫁さんにもなれないんだぁ……。ハッ、明日って練と町の巡察するんじゃなかったっけ!? ああアぁぁァ……」
若干涙声なので、相当堪えている上に問題が増えたようだったが、多分明日も同じ事をするな、とレオンが思っていると、呪詛の様な嘆きが止むと、意を決したのか、女性がレオンに声をかけてきた。
「……。んっ、ゴホン。大変お見苦しい様をお見せして、申し訳ありませんでした。私は……」
「おめぇさんの性分を知っちまってると、違和感しかねぇな?」
レオンに先程の醜態をほじくり返された女性は、落ち着かせた顔色を再び赤くしながら、切り返してくる。
「っ!? んぐぅ、もぅ、人が真剣に挨拶しようとしてんだから、茶化さないでよ!!」
「わりぃわりぃ。んで、続きは?」
背中越しにニヤつきながらレオンは挨拶の続きを促すと、唸りながら女性は挨拶の続きを話す。
「ぐぬぬぅ……。わ、私は、姓は、王、名は、修、字は、叔治と申しますぅ!! これでも、北海の孔文挙様にお仕えする文官頭ですっ!!」
挨拶の終盤から、憤りが復活したらしく、若干怒りながら名と役職を名乗った王修に、若干冷や汗を流しながら、レオンも名乗る事にした。
「私は、つい先ほど、この北海に到着した商人で、李栄と申します。ご無礼の段、大変申し訳ありませんでした」
「っ!? うぅ、良いわよ。そんな丁寧に返さなくても……。馬鹿にされても仕方ないんだし……」
さっきまでからかうような調子だったのに、いきなり丁寧に返してきたレオンに驚きと同時に、いじけそうになっている王修へ、背中越しにレオンは頭を振って答える。
「いえ、初対面の人物に対して、からかうような言動を、許してはいけないでしょう? だから、お許し頂くまで、きっちりさせて頂きますよ」
「むー、もう許すから、アンタもさっきの口調に戻してよ!! あたしだって違和感しかないんだからぁ!!」
そう言われてケラケラ笑いながら、了解を示すレオンに、王修は落ち込みながらも話を続ける。
「……荷物、どうにかしようとしてくれてたのに、邪魔してごめんね。あ……」
言葉をレオンにかけている内に、荷車が止まった。
王修の目的地である役所に辿り着いたのだ。
レオンは、荷車の上に居る王修に、手を貸して荷車から下ろす際、レオンは王修を見る。
レオンの肩位の背丈なので、少々背丈は高く、服はゆったりした着物ではあるが、身体つきは細身の様だ。
髪に薄い金色で、肩までストレートに流しており、目元はどちらかと言えば大きく、其処にナイロールの眼鏡と、うっすらと化粧で隠さそうとしているが、両頬にそばかすのある、綺麗と言うより愛らしい顔立ちであった。
其処まで見ていたレオンに、王修が声をかけてきた。
「ありがとう。荷車は置いて行って頂戴。あたしが責任もって返しに行くから」
そう王修が言ってくれたが、レオンは首を横に振りながら、返事を返す。
「どうせ帰り道だし、まだ必要だろうから、こいつはこのまま引っ張って行くわ」
「そ、そう? ん、んんっ。荷物、此処まで運んでくれてありがとね。そ、その商人なんだったら、何かあったら何時でも来なさいよ。た、多分、多少は力になれると思う、から……」
冷や汗を流しながら、超重量の物体Xを地面に置いたレオンに、王修は尻つぼみになりながらも話終えると、あいよと返事をしたレオンは、荷車を引いて町に引き返して行った。
「行っちゃった、か……。はぁ、まーた何時も通りやらかしちゃってまーもー……。はぁ、荷物持って……。あ、あぁ、しまったぁ!!! あ、其処のアンタ達!! ちょっ!! どこ行く気よ!? お願いだから手伝ってよー!!」
門の前に置かれてしまった、超重量の物体Xを前に、王修は門衛を呼んで助けて貰おうとしたが、門衛達は、突然仕事を思い出したらしく、役所の中に走り去って行った。
「あ、あいつらぁ!! 門衛なんだから門の前に突っ立ってなさいよ!! 他どんな仕事があるって言うの!!! あとで覚えてなさいよ!!!!」
怨念が籠もっていそうな叫びを上げつつ、王修は泣きながら荷物を役所の中に運び込むのだった。
〇
荷車を引いて、徐栄達の元に帰ったレオンは、現在服を買って貰いホクホク顔の少女達に囲まれていた。
そして、目を線にしつつ背中に背負う李儒に問いかける。
「なぁ、響よぅ。おめぇさんの親友さぁ」
「うぅ……。な、何も言わないで下さい……」
現在の立ち位置だが、先頭は荷車を引く徐栄と荷車を押す紗摩柯、荷車の両サイドに体力が低い少女達が座りながら荷物が落ちないよう支えており、紗摩柯の後方にレオンとレオンに背負われた李儒、そしてレオンの周りに体力がまだなんとか残っている徐晃達がいる。
荷物が多いだろうと思っていたレオンの予想は当たり、荷車の上には年長組と少女達の戦利品で溢れかえっている。
その為、レオンは胸をなで下ろしている、かと思いきや、レオンだけでなく李儒までが、徐栄の変貌に唖然としていた。
理由としては、当初李儒に目くじらを立てていた徐栄に対して、買った服を身体に合わさせた後、レオンは似合っていると思い誉めたのだが、途端に徐栄は顔を真っ赤にした後、照れはじめたのだ。
その照れは何故か行動に発展したらしく、買ったばかりの自分達の服や少女達の服、果ては疲れていた少女達を荷台に載せて、テンパりながら次の行き先をレオンに聞いたあと、荷車を勢いよく引き出したのだ。
「いや、多分効果があるとは思ったんだがな……」
「あんな状態になるのは予想外でした……」
元々力はあることは分かっていたが、レオンに少し褒められただけで、異様なほど力を発揮しだした徐栄に2人はあきれ……。
もとい、唖然としてしまったのだ。
「男が苦手だっつー話だったと記憶してるんだが……。分かっちゃいたが、とりあえず、俺に懐いてるって事で良いんだよな?」
「は、はい、恐らくですが。私の時には、あんな状態にならなかったので……。たとえ無自覚でも、人を変えてしまう……。恋の力って偉大なんですね」
そう2人は乾いた笑いを漏らしながら移動していると、目の前を行く徐栄の引く荷車が停車した。
一瞬屋敷を見た徐栄は、直ぐに後ろに居るレオンの下に駆け寄り、声をかけてきた。
「レオン殿。話に聞いていた屋敷は、此方で良いのですか? あ、あと門が壊れているので、外して荷車を乗り入れたのですが、構いませんか?」
徐栄がにこやかに話かけてきたので、レオンは若干口元を引きつらせながらも肯定すると、半壊している門を外して荷車と共に屋敷の中に入って行った。
「な、なあ、藍。萌姉ちゃん大丈夫か?」
「うう~ん、だ、大丈夫なんじゃないかなぁ……。つ、疲れてるのかも、ね~?」
「はぁ、そんなわけ無いでしょう。藍、神楽。とりあえず今はなるべく触れないように」
「馬に蹴られてしまうかも~。って事ですね~、緑さん」
突然、そのような変貌を遂げた徐栄を前に、徐晃達は困惑?しつつも徐栄の後について行く。
そして、レオンと李儒は門の前で立ち尽くしていると、レオンは李儒に話しかけた。
「とりあえずよ、なんかあったら萌は褒める方向で行くか」
「ええ、私もレオンさんを使わせて頂きます」
徐栄と子供が屋敷に入っていく様子を眺めながら、2人は呟きあった後、同時に頷くと屋敷の中へ入っていくのだった。
新キャラクターさんが待っていましたとさ。
思ったより早く話が書けたのも、恐らく王修さんのおかげ、次話も活躍(笑)が期待されております。
「こっちは笑い事じゃないわ! わたしはともかく、練に迷惑かかるじゃない!!」
何やら言ってますが、前から暴発してるから今更だって。
それでは、また。
「い、今更……。だからわたしって、未だに浮いた話の『う』すら無いのね……。って、こらぁ、逃げんな作者ぁ!! ふざけんなー!!」




