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とある兵士と少女達の城下探求1

 時間が出来ましたので、勢いで1話を書き上げました。


 では、33話で御座います。



 レオン達一行が漸く目的地である北海の門をくぐり抜けると、先頭に立つレオンが一伸びしつつ、悪態をついていた。


「くっそ暑すぎだぜ、ったくよう。ホントに何とかなんねーのかねぇ、この状況は……」

「ははは、確かに暑いですが、夏は暑いものですよ? さてと、それでは私と(きょう)は、挨拶に行ってきますね」

「ちょっ、ちょっと(ほう)ちゃん!?」


 そう言って、左手で李儒の右腕を掴んで徐栄が大通りを進もうとした瞬間、レオンが徐栄の肩をつかんだ。


「ちょっ、ちょい待てっつーの。せっかち過ぎんぞ、萌」

「へ? い、いや、しかし、着任したのですから、急いで北海の長官で在らせられる、孔文挙様に面会せねばなりません」


 そう毅然と言い放つ徐栄の頭をレオンは平手で一発叩(はた)いていた。


「っ!? な、何をするんですか!?」

「何するもどうするもねーよ。おめぇの掴んでる相方を見て何とも思わねぇのか?」


 その言葉にハッとした徐栄が李儒の顔色を伺うと、疲労の色がありありと浮かんでいた。


「す、すまない響。お前の状態に気付かないとは……」

「ま、まあまあ。止まってくれましたし、何とも思ってませんから気にしないで、萌ちゃん」


 自分の親友の状態に気付かずに1人で突っ走りそうになった徐栄は、肩を落としながら掴んでいた李儒の腕を放した。

 落ち込んでしまった徐栄を李儒が気遣っていると、レオンが徐栄の肩をポンと叩いて移動し始めた。


「って、こったし今日はお休みなんだよ。そして、今から忙しくなるんだなぁ、これが。ほら、行くぜ?」

「へ? あ、ちょ、ちょっと待ってください、レ、じゃない李栄殿!?」


 今度は逆に徐栄自身が、レオンに右腕を掴まれて、引きずられてしまっていた。

 その様子に李儒や他の少女達もポカーンとしている所で、レオンに声をかけられた。


「お前らも、んな所で立ち止まってんなよ? 他の奴の邪魔になるからな、さっさとついて来いよ。あーあと、紗摩柯」

「……うん、任せておいて」


 レオンが何かを言いかけたが、全て言う前に紗摩柯が胸を叩いて了解の意を示したので、レオンが肩をすくめながら徐栄を引きずって行くと、レオンが移動してワタワタし始めた少女達に、紗摩柯がレオンの進行方向へ指を指して誘導すると、意味を理解したのか、少女達は急いで走っていく。

 そんな中、李儒もついていこう動いた矢先、足がもつれて倒れそうになったのだが……。


「あ、紗摩柯……。ありがとう」

「……大丈夫? ん、しょっと、行こ」

「あ、ありがとう。ごめんな、むぐっ」


 倒れそうになった瞬間、隣に居た紗摩柯が李儒の身体を支えてくれたので、礼と詫びを入れようとした瞬間、詫びの所で紗摩柯の人差し指が李儒の口を噤む。


「……礼は受け取る、詫びはいらない、早く行こう、みんな足が早い」

「ええ、行きましょう。……ありがとう、気遣ってくれて」


 もう一度、李儒に礼を言われた紗摩柯が、一瞬キョトンとしたが意味を理解したのかほんのり頬を染めた後、肩をすくめながら李儒に肩を貸して移動を始めた。

 そんな様子を見た李儒は、クスクスと笑いながら紗摩柯の力を借りて移動し始めるのだった。


 〇


 レオンが先頭を切って移動をし、引きずられている徐栄が内心ドキドキしていると、目的地に辿り着いたのか、レオンが一件の店の前で立ち止まる。

 漸く、レオンが止まってくれたので、徐栄は立ち上がりレオンの目的地と思われる店の看板を、徐栄が見て呟いた。


「服屋?」

「ああ。さて、入っぞ。ああ、ガキんちょ共ー。お前らも来な」


 レオンがそう言って徐栄が逃げない様に、再び腕を掴んで店の中に引っ張り込むと、少女達も皆が一様に顔を見合わせていたが、レオンが呼んだと言うこともあったのでズラズラと店の中に入っていく。

 その様子を、漸く追いついた李儒と紗摩柯が見ていると、周りの町人達がヒソヒソと顔を突き合わせて話をしている場面を目撃してしまった。


「ああ……。滅茶苦茶……。目立ってますね……」

「……そりゃあね」


 あちゃー、とばかりに、空いている手で顔を覆う李儒に、当然と言わんばかりに肩を竦める紗摩柯が服屋の前に到着すると、中から徐晃が出て来て李儒達に声をかけてきた。


「響姉、紗摩柯さん。レオンオジサンが呼んでたよ。さ、入って入って」

「ちょ、ちょっと藍ちゃん!?」

「……ふむ。あーれー、かな?」


 徐晃に後ろから押されて店に押し込まれた李儒からは、驚愕の悲鳴が響き、紗摩柯からは棒読みのネタが呟やかれていた。


 〇


 服屋に大人数で入ったレオン達一行だったが、予想外だったのか店に入る事を強制した当の本人は絶句していた。


(文明の進み方がチグハグだっつー事を、貂蝉から聞いてなかったら確実にツッコミ入れてるな、こりゃ)


 レオンが選んだ店は女性用の服屋を選んだつもりだったのだが、現状はどう見ても服飾からアクセサリー等の小物を扱っている、謂わばブティックのような店だったのだ。


(普通の二世紀頃に、こんな店あるかぁ!? ……いや、もういいわ。考えるだけ疲れるし)


 何時の間にか遠い目になって黄昏ていたレオンに、徐栄達成人組や少女達、果ては、店の女性店員までもが近づけない雰囲気だったのだが、レオンが軽く首を振り始めたのをきっかけに、女性店員がレオンに対して話しかけてきた。


「あ、あの、お客様。本日はどういったご用でしょうか?」


 気を取り直すのが早かったらしい女性店員の一言に対して、レオンも正気に戻ったらしく、有無を言わさず徐栄と李儒を女性店員の前に引っ張ってきて注文をしだした。


「とりあえず、明日からこの2人が、ここの役所で働く事になったから、出来るだけ上等で自然な服と装飾品を幾つか見繕ってくれないか?」

「まあ。それはそれは、大変お目出度い事ですわね。そのような門出に我が店舗の服を選んでいただき、ありがとうございます。すぐさまご用意させて頂きますので、此方にあります他の商品をご覧になりながらお待ち下さいませ」


 そう言って大急ぎで下がろうとした女性店員に、レオンがもう一度声をかける。


「あ、わりぃんだけどよ」

「は、はい。如何なさいましたか?」

「この店に、子供用の服って置いてあるかい?」

「はい、勿論ですとも。大きさもご要望が御座いましたら、仕立て直しもさせて頂きます」


 聞きたい事を聞けたレオンは、女性店員を開放すると今度こそ女性店員は大急ぎで店の奥に下がっていった。

 それを見送った徐栄は、困惑した様子でレオンに問い詰めた。


「り、李栄殿。何故いきなりこんな所へ?」

「んなもん、決まってるだろうが。明日っからここの役所に行くっつぅのに、そんな村で売ってた普通の服で行けるわけねぇだろうが……」


 レオンの言っている至極真っ当な意見は理解出来る徐栄だったが、徐栄の方にもとある理由から食い下がってきた。


「うっ、レ、レオン殿!? この様な店の商品等、とてもではありませんが、荀コウ殿から頂いた金子を使っても足りませんよ。それに、荀コウ殿は桂花達の為に、金子を使って欲しいと思うはずです!!」


 最初は軽く商品を見ながら話をしようとしていた徐栄だったが、服一着の金額見た途端、小声ながら、猛反発してきた。

 徐栄からすれば、荀コウから貰った金子は、荀イクや戯士才の為に使うべきだと思っているので、徐栄からすればこの反発は当然だった。

 しかし、レオンは訝しみながら言い返してきた。


「お前なぁ、確かに荀コウが渡してきた金は桂花達に使うべきっつぅのは分かるがよ。なら、何でそれをお前の仕官の為の準備に使わないんだ?」

「私の仕官と、桂花を宦官から守る事は、別問題です」


 レオンの物言いに若干キレ気味に言い返す徐栄だったが、レオンの返答に愕然としてしまった。


「何で課程だけで考えんだよ? お前はこの北海の孔なんたらっつー奴の所に仕官するんだろ? 上役への覚えが良けりゃ、色々と便宜を図って貰えるだろう、それはつまり、自分の出来る事が増えるっつーこった。出来る事……。まあ、選択肢が増えりゃ、桂花や睦月を守る方法が増えるわな? その第1歩が身嗜みを整える事になるんだよ」


 レオンは言葉を切って徐栄の様子を確認すると、目に見えて狼狽しているので、とりあえずトドメを差す事にした。


「人間ってーのはな、何だかんだ言って最初の第一印象が大事なんだよ。覚えてねぇか? お前らが俺と初めて会った森の中でのことを……。あんとき、俺がちゃんと声をかけて話をしていたら、お前らが俺を信用する機会がもうちょっと早くなった気がしねぇか? 要はそれと似たような事の為に、此処で多少は着飾って行くべきなんだよ。……キチンとした正装は、武官だろうが、文官だろうが関係無く、【戦う者】の戦闘服みてぇなもんなんだからよ」


 レオンの言葉を聞き終え呆けた状態の徐栄が李儒を見ると、李儒は同意しているようで、微笑みながらしきりに頷いていた。

 そんな李儒の様子を見た徐栄は、少し暗い表情でレオンに話し掛けた。


「なんだか、恥ずかしいです。私は、何とかしなければ、と思っていたのですが……。まさか、自分のしようとした事で、自らの選択肢を減らそうとしていたなんて……」


 そう言って、完全に気落ちしてしまった徐栄の右肩にレオンが左手を乗せて言葉をかける。


「萌。おめぇも、響も俺からすりゃ一回り以上年下なんだぜ? おめぇら、まだまだ若いんだから、何かと問題が起こる事なんざ幾らでもするさ。そんときゃ、俺で良けりゃ幾らだって相談に乗ってやっから、こんな所で気ぃ落としてんじゃねえぞ?」


 そう言って、徐栄の頭を軽く二、三度叩くと、徐栄は照れた様に頬を染める。

 そんな様子を微笑ましそうに見ていた李儒だったが、徐栄が言っていた現実的な問題点が放置されていたので、慌ててレオンを問い質した。


「けれど、レオンさん。私達、萌ちゃんが言ってた通り、お金が無いんですけど?」

「あ? んなもん、此処の代金は、俺持ちに決まってんだろうが」


 何を言っているんだ? と言いたげな表情のレオンが、自分持ちだと言い放つと、李儒は両手を胸の前で振り、焦りながら、レオンを制止しようとした。


「このお店の商品、スッゴく高いんですってば!!」

「良い男の条件にはな、気前良く金を払うっつぅもんがあるんだよ」


 ニヤリと笑うレオンに、そんな事を言われた李儒は怪訝な表情をしたが、レオンが取り出した袋の中身を見て、徐栄とは違う意味で絶句した。


「こんだけありゃ、足りんだろ? だからお前らは、気兼ねなく服を買やぁ良い」

「何時の間に、そんなに大量の(きん)を手に入れたんですか?」

「必要経費として、支給して貰ったんだが?」


 震えながらレオンに金の出所を聞いた李儒は、聞かなきゃ良かったと半ば反省してしまうのだった。


(あんなに大量の金の粒を必要経費で落とせるとかあり得ませんから!! 時々レオンさんが、信じられなくなりますよ……)


 唯でさえ、疲労困憊の李儒はレオンの所持金を見てフラッと来てしまったが、紗摩柯が寸での所で支えてくれた為に、ぶっ倒れずに済んでいた。

 頭を痛そうに抑えた李儒も何時の間にか、変わっている部分がある事に気付かない様だったので、レオンはとりあえず、疑問を口にした。

「いやはや、萌はともかく、響も大分変わってきたな。まあ、この調子でな」

「え? レオンさん、私、何か変わりましたか?」


 変わった部分が理解出来ず、頭に?を浮かべて小首を傾げる李儒に、レオンをニヤニヤしながら自身の口を指差す。

 そんなジェスチャーをされても、李儒は理解出来なかったが、李儒の身体を支えている紗摩柯は理解出来たらしく、ぼそりと答えを呟いた。


「レオンの呼び方、前と変わってる」

「……? っ!?!?」


 最初はそうだったかしら? と李儒は思い出していたが、確かに李儒自身はレオンの事を以前は「様」付けで呼んでいたのに、今の会話では「さん」付けになっている事を、どうやら今更気付いた様だった。

 そんな状態の李儒にも、レオンが何の気なしにトドメを差してきた。


「んじゃま、響。萌の親友兼ガキ共のお姉ちゃんとして、全員の服の見立て宜しくな」

「へ? あ、レオンさん、ああ、いや、レオン様、あああ、あう、兎に角どちらへ!?」

「ちょいと、用事だ。1、2時間……。じゃねぇな、四半刻か半刻で戻るわ。んじゃな、萌と仲良くな。あ、ガキ共の服は上下二着ずつな。おら、ガキんちょ共ー、響お姉ちゃんが服選んでくれるってよー、集まりやがれー」


 そう言って「んじゃ」っと捨て台詞を吐き右手をヒラヒラと振りながらレオンは店を後にする。

 そうして、残された李儒だったが、唯ならぬ気配を感じ、隣をちら見をすると案の定、親友が歯を噛みしめつつ、親の仇を見るような目で李儒を見ていた。

 その様子を見た瞬間、油汗が吹き出た李儒だったが、次の瞬間、後方からの奇襲を受けた。


『服ー!!』

「ちょっ!?」

「……あ」


 子供達が新しい服を買ってもらえると言うことに嬉しくなったらしく、不機嫌全開の徐栄を避けて、李儒の背後から突撃してきた為、李儒と必然的に李儒を支えていた紗摩柯が、子供達の波に飲み込まれたのだった。

 揉みくちゃにされ、疲労困憊の身体ではまともに動けないかと思っていた李儒だったが、何故か子供達の海から身体を抜け出させる事に成功させていた。

 そして、ブチギレ状態の親友を宥め賺しながら、自分達年長組と子供達の服選びに没頭しつつ、涙目になりながら、一つの思いを心に誓った。


(父上、母上……。はしたない私を、お許し下さい。とりあえず、レオンは後で殴ります!!)


 レオンの行動は、李儒のレオンに対する呼び方を更に変化させる、という李儒の成長? を促すのであった。



 とりあえず、李儒さんお疲れ様の回。

 恐らく、日常回で李儒が登場するとこんな感じになってしまう気がするのは、気のせいでしょうか……。


「貴様のせいか!! あ、ちょっ萌ちゃん!? さっきから違うって言ってるじゃない!?」


 それでは、また次話でお会いしましょう。

 さようなら~。


「ちょっ、待って、無視するな!! これは洒落になってないからぁ!?!? 作者ー!! ああ、誰か助けて!!」



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