とある兵士と青州への旅路4
お久しぶりです。
年明けから出せなくて申し訳なかったですが、ぼちぼちと更新させて頂きます。
31話です。
レオン達一行は移動の準備が整ったので、再び青州へ向かう為、現在居るエン州東部と青州南部の国境である関所近くの山を越えていた。
何故山を越えているのかと言うと、洛陽のある司隷入りする際も、同じくエン州入りする時も同じ手段を取ったのだが、所謂関所破りを行うためだった。
関所を破らないといけない理由は、当然レオン自身に徐栄、李儒、荀イク、戯志才と、まあ、身分証明の難しい面々が揃っていたからである。
それに、レオンの考える点が、関所の突破手段と少女達の体調に食料問題と、何時もの重大案件ばかりに集中出来るので、レオンも安心していた。
「いや、普通に安心出来ねぇし。つっても、やるしかねぇんだよなぁ……」
もっとも、関所を通る度にある人物は、若干苦々しい表情で涙目になっていたりする。
「またか、また私が関所破りなんて、ことを……」
「まあまあ、流石に今の状況で関所を堂々と通る、なんて提案できないですし。レオン様の仰ることに間違いは無いわよ、萌ちゃん」
そんな言葉を掛け合いながら、遠くに見える関所を背に歩いている徐栄を、苦笑気味に李儒が慰めていた。
徐栄は、李儒に何を言われたのかは分からないが、普段は落ち着きを取り戻してきたようだ。
そして、レオンが気にしていたもう一方も賑やかだった。
「よいしょっと…… ほらよ、もうちょい首に腕をかけろって」
「そうそう、そこに腕をかけたら良いよ~。他の子はだいじょぶかな? 疲れたら言ってね~」
そんな声がした方向へ目を向けると、何平と徐晃がフラフラしている者に肩を貸していた。
2人もいう程余裕がある訳ではないが、大方徐晃が助けたいと言って何平が渋々ついて行ったのだろうと、レオンはそう結論づけた。
(……あの様子からして、貂蝉の言った通りにゃならない気がしないでもないんだがなぁ)
レオンが貂蝉に聞かされた内容とは、多岐にわたる正史の情報、所謂彼女等がどういう人生を歩むのかと言う未来の情報であった。
その中でも、レオンが一番気にした情報が、徐栄と李儒の末路と徐晃と何平の仲に関する情報だった。
徐栄と李儒は、この先に発生すると言われている反董卓連合での大きな戦の前後で死亡し、徐晃と何平は、同じ陣営に所属していながら仲違いを起こして離れ離れになる。
レオンにとっては唯一と言って良い実のある話が出来る徐栄と李儒や、何だかんだと世話を焼いた徐晃と何平がバラバラになる姿を良しと出来なかったので、それならと2組を常に離れ離れにしないようにしつつ、必要なら口出ししてしまおうとレオンは考えたのだった。
(……どう考えても、手のひらの上っつう気分しかしないな。こんな事ばっか考えっから、爺さんに「お前は相変わらず甘い」なんて言われんだよなぁ……)
徐栄達と徐晃達を見た後、そんなことを考えたレオンは、若干痛そうな表情をしてしまったが軽く首を振り後ろからついて来る少女達に声をかけた。
「お前たち、青州に着いたからって気ぃ抜くんじゃねぇぞー!!」
「はーい!」
暑さが絶好調な割には、元気に返事をする少女達を見たレオンは、再び前を向いて歩き出した。
そんなレオンの後ろ姿を見上げながら、徐晃達は話をしていた。
「やっぱりオジサンって凄いよねー」
「まあな、確かに親父はすげぇよ。何でも出来ちまうしよ」
「確かにレオン様は色々な事を知ってるみたいですしね」
徐晃と何平の話にうんうんと頷いて相槌を打つ満寵に、荀イクと戯志才が反応する。
「あれで、賊なんて目じゃない位強いって反則も良いとこじゃない……」
「おやおや~、桂花ちゃん~、お顔が真っ赤ですよ~?」
「っ!? な、何言ってんのよ、睦月ちゃん!!」
戯志才に顔色を指摘された荀イクが、顔を真っ赤にして狼狽えている。
そんな徐晃達や荀イク達を羨ましそうに見ている者が居た。
「……ほら、側に行ってくると良い」
「で、でも、ボク……」
沙摩柯に背中を押されている黄月栄だったが、気圧されているのか動きが鈍かった。
その様子に沙摩柯は少し困った様な表情をしていたが、横から声をかけられた為、声の方へ振り向いた。
「あ、あのー」
「……どうした?」
「あ、いえー、月栄さんに沙摩柯さんも、一緒に行きませんかー?」
「えぇっ!? で、でも……」
沙摩柯は誰かが近付いてきている事に気付いていたが、黄月栄は徐晃達に目が行っていた為、横から声をかけられてビクついていた。
そんな2人に声をかけたのは、賊との戦闘中にレオンにPGM3_8を届けた少女だった。
一瞬誰だったか思い出せなかった沙摩柯だったが、賊との戦闘中に援護射撃で助けてくれたレオンの側に目の前の少女が居たな、と思い至った沙摩柯がマジマジと少女を見る。
茶色の髪色をボブカット、所謂おかっぱの様にしているが若干前髪も長いため目線が隠れている。
頬も赤らめているので、彼女が勇気を出して自分達に声をかけたのだろうな、などと沙摩柯が思っていると、沙摩柯と黄月栄に話しかけてきた少女は、反応が返ってこない為、後退りしかけていた。
「……すまない。少し考え事をしてた」
「あぁー。よくありますよねー。私は親にも忘れられることがありましたからー」
少女にそう言われた沙摩柯は、ばつが悪そうな表情になったが、雰囲気を察した少女は大慌てで訂正する。
「あ、いやー。よくあることだから、気にしないでーって言いたかっただけなんですよー」
「……ありがとう」
そう優しい笑みを浮かべた沙摩柯に、少女もつられる様に笑みを浮かべて黄月栄の腕を取った。
「さあー、行きましょー。ほら早くー、沙摩柯さんもー」
「あ、あぅっ…… で、でもっ!」
「……月栄、観念しな。一緒に行くよ」
あわあわと慌てる黄月栄は、少女に引っ張られ、沙摩柯に背中を押されながら徐晃達の下に連れて行かれる。
徐晃達は驚きながらも、黄月栄や沙摩柯達を歓迎してくれた。
黄月英が輪に入っていく様子を見つめる中、沙摩柯がまだ側にいる少女に話しかけた。
「……さっきはありがとう。お陰で月栄を輪の中に入れられた」
「いえいえー、当然の事ですよー。だって、仲間じゃないですかー。勿論、沙摩柯さんもですよー」
そう言われて驚いた沙摩柯の腕を少女は掴んで引っ張り、気を取り直した沙摩柯は笑みを浮かべながら輪の中に入っていった。
〇
レオン一行が青州の中頃を通過しようとしたそんな時、徐栄と徐晃は道端に誰かが倒れている事に気がついた。
「レオンオジサン!! 誰か倒れてるよ!!」
「レオン殿!! 道に誰かが!!」
2人はほぼ同時にレオンに話しかけたが、その瞬間徐栄と徐晃は見つめ合い徐栄は目が据わり、徐晃は「あはは~」と言いながら目線を逸らした。
その様子を見ていたレオンはため息をつきながら、徐栄の頭を左手ではたき、徐晃の頭を右手で一撫でしつつ倒れている人物の下へと走り出した。
そして、倒れている人物の下に到着すると、すぐには人物に近づかずに状態を見る。
(うつ伏せになっちゃいるが、華奢な体躯からして女か……。武器は……、背中越しにゃないが、普通は内側にナイフだわなぁ。畜生、仰向けならもうちっと分かるんだが、って、あの女の側に転がってるのは桶か? 一体何で…… あーっクソッ!! 窺ってんのかマジなのかどっちだ!?)
賊が多くなったと聞いていた割には、その賊に全く襲われなかった為、レオンからすれば女性が荒野で1人倒れている、と言う今の状況こそがかなり疑わしかった。
しかし、そろそろ少女達が追いつくと思われた為、レオンは意を決して女性に近づきゆっくりと仰向けにすると、女性は顔を真っ赤にして苦しそうにしていた。
(あっちゃー、マジな方だったかって、こりゃいかんな。とりあえず、脈から……)
本当の急患だとわかった瞬間から、レオンの処置は大変素早く丁寧だった。
脈、熱等を手で計りながら声をかけ、女性の表情や状態を確認しつつペンライトを点けて口内を観察していたのだ。
大体数分で確認を終えたレオンは、何処からともなく水筒を取り出して女性にゆっくりと水を飲ませていた。
そんな事をしている間に李儒がレオンに話しかけてきた。
「レオン様、其方の方のお加減はどうですか?」
「ああ、まあ、脱水症状と空腹に依る衰弱だな。ちっとヤバいから竹筒の水をゆっくり飲ませたが、このクソ暑い状態じゃどっちにせよヤバい。どっかで涼ませないとな」
険しい顔をするレオンに李儒は再び話しかけてきた。
「あの、レオン様。でしたら、あちら方に家がありましたので、其方で休みませんか?」
そう李儒は言いつつ指を指した方向に、レオンが目をやると遠くに一軒家らしき建物が見えていた。
訝しむでいるレオンに対して、李儒はさらに続ける。
「今、萌ちゃんに確認がてら家の様子を見に行って貰ってます。藍ちゃんも一緒ですから、何事もなければすぐに藍ちゃんが帰ってくるかと」
そう言って真剣な表情になっている李儒に、レオンは頷きながら返事を返した。
「わかった。が、この場所じゃどちらにせよ不味いからな、あの家まで移動するぞ。っと、確か天幕用の骨組みに、手で握れてこの女性の背より長いくらいの木の棒があっただろ? 響、悪いが2本ほど直ぐに取り出してくれ」
「へ? あ、はい、分かりましたわ」
首を傾げながらも李儒は、天幕を持っている班の子らに木の棒を取り出させていると、レオンは女性をゆっくりと地面に横たえさせて、自分のバックパックから自身の衣服とロープを取り出していた。
李儒から持ってきて貰った木の棒を受け取ったレオンは、すぐさまロープを交互に木の棒へ括り付けて、その上から衣服の両袖に木の棒を通していると、その様子を見ていた李儒が声をかけた。
「あ、あの、レオン様。一体何をなさっているんですか?」
「うん? ああ、この女を彼処まで運ぶ為に、あーっと、ストレッチャーはわかんねぇわなぁ…… 担架っつって分かるか? こいつは両端を1人ずつ人が持って怪我人や病人を運ぶ道具だ。簡易だから強度が微妙だが、まあ、無いよりマシだろうよ」
そう言いながらレオンは、強度アップ用に自身のシャツを木の棒に通し終えたので、沙摩柯に声をかけた。
「沙摩柯。すまねぇが、俺が合図したらそっち側の棒の先端をこんな感じで持ち上げてくれ」
「……分かった」
レオンが実演している様を見た沙摩柯が、若干微妙そうにしつつも頷いたので、レオンは簡易担架を1つ纏めて女性の横まで移動した。
「すまん、響に沙摩柯。この女を持ち上げるのに手を貸してくれ」
レオンに手伝いを頼まれた李儒と沙摩柯は、顔を見合わせて頷きレオンの指示するままに行動するのだった。
〇
その夜、レオン達が女性を助けて暫し時間が経った最中、レオン達が助けた女性は暗がりの中、うっすらと目を開いた。
(あら? おかしいわね。私は確か、水くみをしにいって…… っ!?)
女性はボーっとしながら辺りを見渡していると、自身の直ぐ横の暗がりに何かが居る様な気配を感じて息を飲んだ。
その気配は、女性が目を覚ました事に気付いたのか、声をかけてくる。
「やっと、目が覚めたかい? あんた、大分危なかったぞ」
聞こえた声から、男性かと思った女性だったが、何の目的があるのか分からないために声を震わせながら男性と思わしき人物に問い掛ける。
「あ、あなたはどなた様ですか? わ、我が家には、何もありませんよ?」
問われた男性と思わしき人物は、数瞬無言だったが、答えを女性に返した。
「俺は、旅の商人だ。おまえさんが、道端で倒れているのを護衛として付いてきてくれた、北海に派遣される武官が見つけてくれてな。近くに無人の民家があったから、其処にあんたを連れてきた訳だ」
そう男性が答えてくれながら、何処からともなく火種を取り出して明かりを灯してくれた。
しかし、男性は直ぐに暗がりへ移動してしまった為、顔をしっかりと見ることが出来なかった。
その代わりに部屋を見渡すことが出来、商人の男が言っていた近くの民家とは、自分の家だった事に気づくことが出来た。
まだ本調子には程遠そうな女性は、考えを一旦横に置き礼を述べた。
「すみません、命の恩人に大変な失礼な事を申してしまいまして、その上、どうやら我が家に私を運んで下さったご様子。せめてお礼をさせて下さいませ」
そう言われた男だったが、男はそそくさと背を向けて部屋を出ようとしながら答えた。
「あんたを助けたのは、俺の護衛をしてくれている武官の方だよ。礼なら彼女に言ってくれ」
そう言って男は、部屋を後にするのだった。
商人の男、レオンが部屋から出ると、すぐ近くに控えていた徐栄と李儒にレオンは声を掛けた。
「女が目を覚ました。一応大丈夫だとは思うが、注意して見てやってくれ」
「は、はい。いや、しかし、私達よりもやはりレオン殿が居た方が変化にすぐ気づけるような……」
そう言う徐栄にレオンが返答する。
「そうは言っても男と女が、1つの部屋に居る状態で、女はさっきまで倒れてたんだ。相当疲れているのに俺が居たら気が休まらねぇよ。それよりは、萌と響の2人が側に居ることの方が心強い筈だぜ」
同性の方がマシだろうと言外にそう言ってレオンは、徐栄と李儒の背中を押して部屋へと誘導する。
徐栄は困惑しつつ、李儒は何かを理解したのか一度だけ頷くと、それを見たレオンは手を振りながら、さっさと屋外に向かって移動してしまうのだった。
家から出たレオンは、少女達に頼んで建てておいて貰った天幕の中に入るが、中の光景に愕然としてしまった。
「う、う~ん。オジサン……」
「ぐっ、お、親父、重い……」
「んんっ、ん~、藍~」
「……ちょっとー、レオン苦しいから引っ付かないでよー……」
「夢の中でも~、素直じゃない桂花ちゃんであった~。ふにゃっ」
仰向けに寝ている何平の上に徐晃が丸くなって眠っている為、徐晃は嬉しそうだったが何平は大変寝苦しそうだった。
満寵は徐晃に抱きついて眠っているように見えて、実は荀イクに抱きついて眠っていた。
その状態が見えていないはずなのに、ツッコミつつ眠っている戯志才が満寵と荀イクが絡まっている横におり、5人全員が天幕の中央で固まって(絡まって)眠っているのだった。
「……自由にして良いとは言ったが、俺の作業場ねぇじゃん」
その様子にガックリ来たレオンだったが、徐晃を何平から下ろして徐晃と何平を隣同士で眠らせ、満寵達を起こさない様にしながら天幕の奥に自身は移動し、PCの電源を入れて自分の作業、移動ルートの選定や李儒に聞いておいた備品の事などを纏める等の雑務を、なるべく静かに行うのだった。
話が進まない仕様で申し訳ないです。
微妙に進む一同の旅は何時終わることやら……
不定期更新は変わらずですが、また更新頑張ります。




