とある兵士と青州への旅路2
大変お待たせいたしました。
第29話で御座います~。
レオンと何平は、共に訓練をするべく野営地から移動していた。
が、件の何平は機嫌が悪かった。
それもそのはず、何故か何平の隣に、自分の思い人やその友人などが居るためだった。
その様子に、レオンは苦笑いしたが、さっさと始めないと朝食に間に合わない為、巻いて行きたかったのだが、徐晃に先手を打たれた。
「むぅ、レオンオジさんと何平は何するつもりなのさ」
どうやら徐晃は、レオンに対してオジさんと言うのを外せなかったようだ。
そんな徐晃が何をするつもりなのか問い詰めて来たので、レオンが何平を見ると何平は、ツンとした表情でそっぽを向いた。
何平は、余程徐晃にレオンとやろうとしている事を知られたくないらしい。
が、どう説得しても意味がないので、レオンは正直に話すことにした。
「ああ、神楽と一緒にちっとな。俺も久しぶりに身体動かしとこうと思ってよ。まあ、ついでに神楽がどこまで出来るのかを見るつもりなんだわ」
そう言われた何平は目を見開いた後、レオンを睨みつける。
対して徐晃は、首を傾げていた。
その徐晃の隣にくっついている満寵が、徐晃に答える。
「藍。何故かは知らないけど、何平は昨日の晩、皆が寝静まった頃に、レオン様に真名を預けたみたいよ?」
どうするの?などとしれっとそう答える満寵に、徐晃はえぇーと、非難じみた声を上げた。
「酷いよ~。何平ったら私たちには真名預けてくれないのに、レオンオジさんには真名を預けるの? もしかして、私たちの事、嫌い?」
「んっ!? んな訳ねぇだろうが!!」
涙目な上、両の人差し指を胸の前でツンツンしている徐晃が、何平にそう言うと大慌ての何平が反論する。
だが、今はまだ真名を預けるわけには行かないと思っている何平だったので、その先の言葉が紡げずにいた。
「良いじゃねぇか、神楽。藍達にも教え…るんじゃなくて預けておけよ、仲間だろ?」
そうレオンに言われた何平は、すっかり落ち込んでしまったようだったので、一言小声で声をかける。
「お前の気持ちは分かるがな、藍達を説得すんのは無理に近いぞ? 口説くのは、力を付けてからでも良いんじゃねぇか?」
小声でレオンに言われた何平は、顔を真っ赤にして反論した。
「そ、そんなんじゃねぇよ!!」
「へいへい、そう言うことにしとくさ」
そう何平に言って、再び肩を回しているレオンを見て、徐晃と満寵は首を傾げていた。
「今から神楽と一緒に訓練するがよ。藍に緑、お前らも見とくか?」
「えっと、あのわたしもレオンオジさん達と一緒にしたいな。良い?」
徐晃は、少しおどおどしながらレオンと何平を交互に見ながらお願いする。
その様子を見ていた満寵も口出ししてきた。
「じゃあ、レオン様。あたしも良いですか? レオン様の国の訓練に興味があります」
徐晃と満寵が、レオンの予想通りの発言をした為、何平はますます落ち込みそうになったが、レオンは何平の頭を撫でながら答える。
「よし、んじゃ、お前らも寄ってけ。…さぁて、神楽、藍、緑、今から訓練を開始しようと思うんでな、とりあえず、体を解すとこからだな」
「体を解す? 何するんだよ、親父」
少し気落ちしてはいたが切り替えは早いのか、直ぐに何時もの目つきの悪い表情になった何平だったが、首を傾げてレオンに体を解すということの意味を訪ねる。
「人間っつうのはな、いきなり体を動かそうとすると、筋肉が固くなってる可能性があるから、無理に体を動かすと体を痛めちまうんだよ。それの予防の為に体をゆっくり動かして筋肉をあっためるんだ」
頭に幾つも疑問符が飛び交いながらも3人は、レオンが教えた通りに体を解していく。
その途中で徐晃と何平が顔をゆがめたので、レオンが声を掛ける。
「おい、藍に神楽。ちょいと待ちな、無理に体を動かすなよ。痛かったり痛くなりそうならその時点で止めて良いからな」
「うん、分かったよレオンオジさん」
「分かった親父」
そんな感じでレオンと柔軟体操を終えた3人だったが、それぞれ体が暖まってきたからか、各々期待に満ちた顔をしていた。
(さて、兵士になるっつうなら人格否定作業に入るんだが、今やると逆効果だよなぁ。やっと普通に話せるってか、ちっと懐きすぎだが… あの緑も懐いてるみたいだしな)
どちらにせよ、この期待に満ちた顔が、真っ青になるのが分かっているが、中途半端は一番意味がないので実行に移す。
「よし、んじゃ、3人共軽く走るぞ。俺について来な」
「へ? あ、うん、分かったよ」
「は~い」
「分かりました」
何平、徐晃、満寵の順に返事をして3人は、素直に従ってレオンに追走する。
困惑したり笑顔だったり興味深そうだったりと、様子は様々だったが、そんな顔が何時まで保つかとレオンは思いながら走りつづける。
〇
レオンと3人が走り出して1時間程が経った。
今は、何平と満寵だけが走っていた。
「ほれ、次で最後だ。頑張れよー」
レオンと徐晃は既に走り終えていたが、徐晃はレオンの隣で大の字に倒れている。
何平はまだ何とか走れているが、満寵はフラフラになっていた。
大体1キロ程の距離を取り同じ場所10周走りつづける、長距離走擬きにしてみたレオンだったが、案の定2人は途中で失速してしまったのだ。
結果今のように大差がついてしまう。
尚、徐晃はレオンの予想と若干違い遅れはしたものの、何とか1周遅れでゴールしたので、レオンは内心冷や汗を掻いていたりする。
(今までの旅や賊との戦闘でこいつらにゃ、凄まじい潜在能力があるのは分かったが、問題は多いなこりゃ。…藍が予想外の化けモンか天才だっつうことと、俺のスタミナも上がってる気がするっつう事が分かったし、収穫はそこそこ多いな。まあ、それはさておき、俺の事は後で貂蝉にでも聞くか)
レオンの自己評価はともかく、今回の2人の失速は、所謂掛かり気味の状態で走ってしまったのが原因だった。
(あんだけ早けりゃ、そらぶっちぎりたいだろうが、それじゃソッコーで死ぬのが目に見えてるからな。だが、神楽と緑の潜在能力も普通にすげぇんだよな。初めての10キロマラソンを、完走しつつあるわけだし…やべぇな、本格的に教えたらどうなるか、マジでわかんねぇわ。まあ、今は原因と解決法だけにしとくか)
何故こうなったかを、3人がなるべく分かりやすい様にと答え方を考えていると、漸く何平と満寵がゴールした。
それと同時に何平と満寵も徐晃の近くで大の字に倒れてしまう。
(ぶっちゃけてほぼ裸足に近い奴に長距離走とかアホ過ぎるかと思ったが、予想以上に走りやがったな)
今まで足の裏を気持ち保護する為に、布を巻いただけの状態で何ともなかったので、今回の試験をしてみた訳だったが、何らかの異常が発生した瞬間に、3人の訓練を即座に止めるつもりだった。
だが、3人共足裏は何とも無い様子で走りきったようだ。
「よし、3人共お疲れさん」
荒い呼吸のみでレオンを見る徐晃達だったが、余裕が全く無いので何もいえずにいた。
そんな3人の近くに座って3人の呼吸が整うのを待つ。
暫くして、大の字だった徐晃がレオンに話しかけた。
「…っ、はぁ、レオンオジさんって、やっぱりすごいね、あれだけ走ったのに、息一つ、切れてないなんて…」
「いや、ちっとは息切れしたぜ? やっぱ近頃訓練サボってたからなぁ、鈍ってるわ」
そう言いながら笑いつつ前もって準備していたレオンの水筒を徐晃に渡す。
「とりあえずゆっくり飲みな。今のお前に一気は体に悪いからな」
コクリと頷く徐晃は、水筒に口を付けてゆっくりと中身の飲んでいく。
続いて息が整ってきた何平、満寵の順に水を飲ませる。
「さぁて、んじゃ次と行きたいとこだが、もうじき飯だからな。また、さっきの体操するぞー、お前ら、さっさと起きな」
そうレオンが言うと、3人から悲鳴が上がるのだった。
〇
レオン達が、徐栄達の所へ戻ると、丁度食事の用意が出来ていた。
3人は走り終えたばかりの為か、余り食欲が無い様子で、食事に手をつけていなかったが、周りの皆が心配そうに見ているのに気づき、徐晃と何平は気力で食事を取る事にした。
一方満寵は、食事に一切手をつけられない様子だったので、レオンが満寵の横に移動して話しかけた。
「緑、流石に無理そうか?」
そう聞かれた満寵は、若干青い顔で頷くとレオンも頷き返す。
「分かった。んじゃ、とりあえずコレを食っとけ」
と、レオンは言いながら手のひらサイズで銀色の袋を満寵に差し出した。
「レオン様、これは何ですか?」
「ああ、こいつはな。ほれ、この先端から中身を吸い出して食べるモンだ。ちっと酸っぱいかも知れんが、そこそこ腹に溜まるから今のお前さんにゃ丁度良いだろ」
レオンが満寵に差し出した物、パックに入ったゼリー食品をレオンに食べ方を教えて貰いながら、満寵は恐る恐る吸い口に口を付けて吸い出すと、酸味はあるがそれ以上に甘味がある、ドロッとした物が口に飛び込んできたので驚いた満寵だったが、疲れた身体には丁度良いのか、ドンドン吸い出してしまい、あっという間に吸い尽くしてしまった。
「っ、けふっ」
「お、どうやら食べ切れたみたいだな。んじゃ、せっかく用意して貰ったコイツも食べちまいな」
そうレオンに言われた満寵は、音を聴かれて恥ずかしかったのか、顔を赤くしながらも徐栄達が用意した食事をゆっくりながら何とか食べ始めた。
(はぁ、流石に約10キロ走らせた後に飯とか、特にガキどもなら普通に食べられないだろうしな。ゼリーの後なら、まあ、何とか食えるだろ)
などと満寵を見ながら思っていると、気合いで食事を終えたらしい徐晃と何平が、レオンの隣まで来てジーッとレオンを見ていた。
「ねぇ、神楽。私達も走ったのに、緑だけ何か貰ってたよね?」
「ああ、そうだな藍。あれが何なのかはわかんねぇけど、親父の食い物の一つってぇのは分かった」
と、何時の間にか真名交換を終えていた2人はレオンと満寵の近くに座り、徐晃は上目遣いに何平は睨みながらレオンにそう言うと、レオンは苦笑いをした後、同じゼリー食品を徐晃と何平に渡した。
「つまんねぇことしてるんじゃねぇよ。お前らにも渡すに決まってんだろうが。ああ、緑。その袋は返してくれよ」
「あ、はい。分かりました、レオン様」
穏やかな笑みを浮かべている満寵は、そう返事をしてゼリーの袋をレオンに返した。
レオンにとってはゴミではあるが、この国にとっては未知の物であり、もしも自分以外の同じ存在がコレを発見した時、確実に面倒になる。
それならば、使用後確実に回収した方が、面倒事の芽を摘める。
足跡が残ることはなるべく消しつつ、行動したいというレオンの意思の現れだった。
徐晃と何平にゼリーの袋を渡すと、レオンはすぐさま満寵の方へ向き直った。
「緑、大丈夫か? 無理すんなよ」
「大丈夫ですよ、レオン様。駄目な時は真っ先に言いますから、それよりもアッチの方を心配した方が良いかなと思います」
苦笑しながら指を指す満寵の指し示した方を見ると、案の定徐晃と何平が不機嫌そうにレオンを見ながらゼリーを吸っていた。
(ゼリー食いながら不機嫌そうにされてもなぁ。てか、食い方見てたんじゃねぇか)
レオンは呆れながら2人の頭を乱暴に撫でてから、自分の食事を始めるのだった。
○
食事を終えたレオン達一行は、青州を目指して一直線に移動を開始する。
とは行かず、地道に食料と生活必需品を少しずつ買いながら移動をしていた。
あまり顔を知られたくは無いが、買い物は必須のため、最初の買い物をレオンと李儒が行い、衣服を購入後は徐栄と李儒に任せることにした。
沙摩柯にも任せようと思っていたのだが、そこは李儒によって阻止されている。
(まあなぁ…こんな時代じゃ人種差別なんぞ普通にあるわなぁ。てか、何で俺は大丈夫なんだよ?)
唯でさえ人手が少ないのに、1人使えないのは痛かったが目立つ訳にも行かないため、焦ることなく村から村へ移動していくレオン達一行。
そして、徐栄と李儒が買い物をしている最中、徐晃達はレオンの側に来ていた。
「レオンオジさん、ね、ね、さっきのお話の続き!!」
「あいあい、良いから肩にしがみつくな。話してやるから」
長距離走の後、理由と対策方法を教えてみると、次の日には徐晃が、その次の日には何平と満寵が難なくゴールしてしまった。
教えて貰った事が、簡単に実践出来た上に効果もあったので、徐晃達は三者三様に喜びレオンを見る目が更に変わったようだった。
警戒心が完全に解けてしまった徐晃達3人は、自分達の事をレオンに知って貰おうとレオンに話しかけ、レオンにはレオン自身の日常等を聞きに来ていた。
最初は困惑していたレオンだったが、レオン自身も徐晃達に気を許したのか、ポツポツと自分の事を話だし、何時の間にかそれが普段の風景になった。
そして、その話を側で聞く人間も多くなり…
「んで、何で人が増えてんだよ?」
徐晃達3人以外に、荀イクや戯志才に黄月栄、そして何故か周囲の警戒をしているはずの沙摩柯まで来ていたのだ。
「べ、別に近くに来ただけじゃない!!」
「桂花ちゃん~、素直じゃないのは~良くないですよ~? うん~、桂花ちゃ~ん。まさか~、藍ちゃん達に嫉妬~?」
「あ、あぅ、オジ様、そ、その…」
「…月栄が来たがってたから、ね。私も話には興味があるし」
と、4人は思い思いに理由を述べる。
1人素直になれていないとして、大の親友に弄られているが、其処は割愛させていただく。
面倒くさそうに自分の頭を掻いていたレオンだったが、拒否するのも妙なので徐晃達に話していた続きを話すことにした。
「まあ、最初の辺りは藍達に聞いてくれよ? 確か山岳地帯に迷い込んだ時の話だったな…」
と、自分が苦境に立たされた時の話をし出した。
レオンにとっては凄まじい弾雨の中での戦いだったのだが、口調が軽く内容も簡単にしているので、徐晃達にとっては英雄譚の様に聞こえていた。
時々聡い荀イクがその時の状況を聞いてきたりしており、レオンは自分が覚えている限りの事を伝えていた。
どうも話を聞きながら自分ならどうするかを考えている様だったので、レオンは特に何も言わずに話を続けて行く。
(平和なもんだな。まあ、なんにしても何も起こらないに越したこたぁねぇな)
話をしながらレオンはそんな事を考えて、空を見上げると視線を一瞬厳しくした。
李儒が心配していた日差しが益々厳しくなって行く事を実感しながら、一行は旅を続けていった。
とりあえず、久しぶりに超忙しい7月から9月でした。
熱中症で倒れかけたり、連勤につぐ連勤だったりと、泣きそうになりましたが、何とか乗り切れました。
ですが、体調があまり良くなく回復がどうも遅いので暫く不定期が続きますが、ご了承下さいませ。
なぬ? 11月は? 考えたくないよ、稼ぎ時だもんね…




