とある兵士と青州への旅路1
第28話です。
レオンが徐栄達の大半から真名を受け取り徐栄達が寝静まった深夜。
レオンは右脇に愛用のノートPC抱えて、徐栄達の居る野営地から少し離れた場所へ移動していた。
理由は事が上手くいったので、その報告を貂蝉にするためだった。
先程の戦闘前に使用していたインカムを左耳に付けてノートPCの電源を入れる。
立ち上げが完了すると、レオンはすぐさま記憶していたアドレスにネットワークを繋ぐ。
本来ならネットワークなどこの世界にあるわけがないが、貂蝉がレオンとの連絡用に作り上げたらしい。
ご都合主義様々だなと皮肉りながら、インカムの調整をしていると、野太いオッサンの声が聞こえた。
『んまぁ、だぁれが達磨系オッサン型の未確認変態物体ですってぇ!! …作者ちゃんは後でお仕置きよん』
「いや、それ未確認じゃねぇし、まぁ、どうでも良いんだけどよ。とりあえず貂蝉何とか助けられたぜ。ありがとよ」
訳の分からないことを貂蝉が言っているが、前回も似たような感じだったので貂蝉のデフォルトだと思うことにするのだった。
主に自分の精神の為だったが…
「とりあえず、萌達と一緒に青州だったか? 其処に行くことになったぜ。んで、そっちは?」
『芳しくはないわねん。とりあえずあなたと『あの方』との繋がりの一つである武器交換は防いでおいたわ。これで唐突に武器が変わることはなくなったわよ』
最初はほうほうと相づちを打っていたレオンだったが、武器交換の箇所でふと疑問になったので質問することにした。
「まあ、あのクソ女からの干渉が無くなったのは良いけどよ、必要な武器交換や弾薬の補給はどうすりゃ良いんだ? まさかこの世界にコンビニがあって売ってくれる訳じゃねえだろ」
レオンにとっての死活問題な物資補給について、冷や汗を垂らしながら貂蝉に投げかけると、何でもないかのように貂蝉は答えた。
『そのことなら、一応あなたが今まで使った事のある装備品を出せるように手配しておいたわよ。具体的には頭で想像してくれれば良いわん。ただ、弾薬に関しては無制限にしたかったんだけど、一気に何万発も出したりは出来ないみたいなの。どうも『あの方』が此処に制限を掛けているみたいなのよ』
インカムから聞こえるむさいオッサンの真面目なオネェ言葉を聞き流しつつ、レオンは重要な事だけ頭に刻み込む。
『そうそう、リュックの中身も一応1日毎に補充されるようになったから、飢え死にはしないはずよん。ごめんなさいねん? あたし達から出来るのは今このくらいだわ』
レオンは若干疲れを感じながら返答する。
「いや、なんも無いより遥かにマシだ。あんがとよ、とりあえず頑張って生き残ってみるわ」
『ええ、また何かあったら連絡するわん。あの子達にも宜しくね』
「ああ、またな」
本日最後の仕事を終えてレオンは、ふぅ、と一息ついたあと徐栄達の野営地に顔を向けると少しだけ離れた場所に、何平がレオンを見つめながら立っていた。
「よう、何平。どうした、眠れねぇのか?」
そうレオンが言うと、何平が暗がりながらレオンを睨んだように見えた気がしたが、明らかに何時もと雰囲気が違いトボトボと力なくレオンの近くに歩いて来る。
そして、レオンの近くまで歩いてくると、レオンの正面に正座で座り込んだ。
レオンは訝しげに何平に話しかける。
「どうした、調子でも悪くなったか?」
そう聞いてみたが、何平は首を力なく振りそのままレオンを見つめる。
「どうしたんだ、元気が無いな? 何時もの様に怒鳴り込みに来たんじゃねぇのか?」
何かを言いたそうにしている何平だったが、口元が上手く動かないのか唇を震わせている。
レオンはその様子を見て寝る時間が遅くなりそうだな、と思いつつ何平が話すのを待っていると漸く震えた声で話し出した。
「オッサン、やっぱりすげぇな」
「あ? 一体どうしたんだよ? 何時ものお前らしくねぇぞ。なんかあったのか?」
「ぁあ、あった」
そして、また何平は沈黙してしまうが、レオンは話し出すまで待つことにした。
こういう気の強い奴が打ちのめされた様な状態の時は、放り出すと確実に良くないパターンになると経験上で感じ取ったためだ。
話をとりあえず聞けるだけ聞いて、その上でどうすれば解決出来そうかを考えてやった方が、相手の信頼を勝ち取れる。
実際徐栄達から真名を預かったが、唯一何平のみ真名の交換をレオンだけではなく他の少女達ともしなかったのだ。
何か理由があると思ったのだが、真名の交換時は徐晃がベッタリくっついていた上に、少女達がひっきりなしに真名を預けてきたので、レオンは何平を構えなかったのだ。
丁度話をしようと思っていた相手が、思い詰めた感じで近づいてきたのは寧ろ好都合だった。
そして完全に覇気のない表情になっている何平が、また話だす。
「オッサンが居なくなった後、アイツ泣いてたんだ」
「アイツ?」
「徐晃だよ」
話出した何平だったが、脈絡が無いのでマズそうだとレオンは感じたがとりあえず待ちに回る。
「俺、何にもしてやれなかった。アイツが大丈夫だって言っても無理してるって分かってたのに…俺、アイツを助けられなかった」
そう言って何平は頭を下げながらくしゃりと顔を歪める。
頭を下げた何平の目尻からは雫が零れ落ちていた。
「俺達が襲われて、アイツ、必死になってみんなを守ろうとして、でも…」
戦闘終了後直ぐに徐晃は限界になったが、実は何平も限界だった事に今更気付かされたレオンは内心で舌打ちする。
ただ、何平が言いたいことは大体分かってきた。
なので、とりあえず吐き出させる為に、何平を捕まえると服の上から胸に顔を押し付ける形で抱きしめる。
すると、堰を切ったかのように、何平が泣き出した。
(強がっててもやっぱガキだよなぁ。てか、此処まで我慢出来た方がすげぇか?)
そんな事を考えながら泣きじゃくる何平の背中を撫でさすり、時折軽く背中を叩いて慰める。
大声こそ出さなかったが、声を出して暫く泣いた何平は、漸く泣き止みだした様だった。
レオンの服から顔を上げて上目遣いでレオンを見つめる何平。
「なんか、わりぃな。…」
何かを言おうとして、黙ってしまった何平だったが、意を決したのか、レオンに訪ねた。
「な、なあ、そのあんたに頼みたい事があるんだ」
「ん? ああ、俺に出来ることなら構わんぜ」
そう言われた何平は、レオンから離れて頭を地面に付ける所謂土下座である。
「俺を強くしてくれ!! 下さい…」
流石に教えを請うのに口調が悪いと思ったのか言い直し、それを聞いたレオンは苦笑した。
「んで、何平。誰を守りたいんだ? 萌か? 響か? それとも藍か?」
徐栄と李儒の真名の後に、徐晃の真名が出た途端、何平の肩がびくついた。
それを見たレオンは、女同士かぁなど等思いながら何平に話しかける。
「正直、お前を直ぐに強くしてやるなんざ無理だ。時間は相当かかるが、俺の訓練についてこれるか?」
「ああ、死んでもついてく」
頭を上げた何平の目を見ると相当な覚悟がにじみ出ていた。
なので、レオンは何平の頭頂部へ手刀を入れる。
「~~!! ってぇなオッサン!!」
「馬鹿たれ、軽々しく死ぬなんざ言うんじゃねぇよ。俺が教えんのは、死なない為の技術なんだからな。それにてめぇが死んだら、誰が藍を守るんだよ」
頭が痛い何平は涙目になりながら頭を両手でさすっていたが、目はレオンを見つめていた。
そんな様子を見て、レオンはニヤリと笑いながら何平に宣言する。
「まあ、これから少しずつやっていくか。言っとくが、俺は相手が女だろうが子供だろうが容赦しねぇからな。そのつもりでいろよ」
とは言いながら、相手が少女と言うこともあるので、どうやって手加減すれば良いかを考えていると、何平が勢いよく答える。
「ああ、俺だって男なんだからな、あんたみたいにはなれないかも知れないけどやってやるさ!!」
そう言われたレオンは、目が点になっていた。
そんな様子を見て、何平は妙に思ったのか首を傾げている。
「なんだと!?」
漸く絞り出したレオンの言葉は驚愕の一言だった。
実際、何平の容姿は少しボサついているショートカットの茶色い髪に、目つきを除けば少女の様な可愛らしい顔立ちをしていた。
何平の服装が、徐栄や徐晃の着ている布切れを胸と腰に巻き付けているだけという露出した感じではなく、布切れを被って腰部分を縄で縛った貫頭衣の様な衣装で大半の少女達が着ている物だった。
それに付け加えてレオンは何平に対して問診をしてはいたのだが、何平はことあるごとに噛みついてきたので、余り接触出来ていなかったのだった。
「あのさ、まさかとは思うけど、あんた、俺のこと女だと思ってたんじゃねえよな?」
「ソンナコトナイゾ。オレガソンナコトスルワケガナイ」
完全に棒読み且つ何平から目線を逸らすレオンに、何平は少し拗ねた様な仕草を見せる。
「た、確かに俺って顔は女っぽいけど、ちゃんと男なんだからな」
そう言いながら頬を赤く染め顔を逸らして、レオンに下半身を見せた。
そこにあるものを見て、レオンは口を開く。
「あ~、確かに。こりゃすまんかったな。悪かった」
そう謝りながらレオンは頭を下げると、何平はまだ恥ずかしいのか頬を赤くしながら、顔を逸らしつつ話す。
「俺、頑張って少しでもあんたみたいになる。だからこれから宜しく…」
今まで散々喚いてレオンを困らせたと思っている何平からすれば、恥ずかしいのか言葉の最後の部分が小さくなった。
「ああ、何平これから宜しくな」
気にするな、と言わんばかりに何平の頭を撫でるレオンに何平が答えた。
「神楽だ」
「あ? 何がだ?」
「俺の真名だよ」
と、急に何平が真名を預けてきたので、レオンは細かいことは言わずに受け取ることにした。
「あいよ。なら神楽も俺のことは好きに呼びな」
そう言われた何平は、相変わらず赤い頬のまま恥ずかしそうに聞いてきた。
「じ、じゃあ、こう呼んでも良いのか」
「あ?」
何平から告げられた呼び名は、レオンからすれば面倒な(主に徐晃関連で)事になるだろうな、と予想出来たが男ながら美少女顔の何平が上目遣いで頬を赤く染めており、その上涙目だったので、数秒の気まずい沈黙の後、レオンの何かが折れて許可を出すのだった。
〇
レオンと何平が真名を預け合った明くる朝、機械音が小さく鳴るとすぐ音が消える。
音の発信源であるレオンの腕時計をレオンがボタンを押して止めたのだ。
レオンは目を開けて一瞬ボケッとした後、直ぐに上体を起こし何平の寝ていた個所を見ると、何平は既に其処に居なかった。
「親父、おはよう」
そうレオンが言われ、ふと声のした方向を向くと何平が体育座りで横に居た。
「ああ、神楽。おはようさん」
そう言って何平の頭を撫でると、何平はくすぐったそうに目を細めていた。
「~っく、んじゃ初めっか。行くぞ神楽」
「お、おう!!」
レオンは伸びをしながら何平に話しかけて、移動する際に徐栄にも挨拶をする。
「っと、萌もおはようさん」
「へ、あ、はい、おはようございます。とるそー殿」
その様子を火の番をしながら見ていた徐栄は、目が点になりながら挨拶を返していた。
「い、いったい何があったんだろうか。かなり仲が悪いような気がしたんだが…」
少し首を傾げる徐栄だったが、レオンと何平が仲良くなったという事実は理解出来たので、自然と頬が緩む。
「やはり仲が悪いより良い方が良いに決まってるからな。ん…っ!? ちょっと待て、何平は今なんと言った!!」
何平の言葉に思い立った徐栄が驚きの余りに叫んでしまった事で、眠っていた少女達が起き出してしまい、叫んでしまった理由を知ってしまったとある少女達(主に徐晃と荀イク)はレオンに説明を要求され、遅かれ早かれ起こるだろうと思った事態が意外に早かったことに、レオンは辟易とするのだった。
やっと旅が再開するかと思ったら、登場人物の1人と和解話だったりする。
「和解っつうか、仲は悪くなかっただけだぜ? 良くもなかったがな。まあ、あいつの親父なんて成れんのかねぇ」
ともかく、またしばらく旅話ですが、よろしくお願い致しますね~。




