とある兵士と少女達の情報交換
第18話です。
完全に遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
とりあえずジェフは、先程まで奴隷だった少女達のグループと、徐栄達のグループに夜食を食べさせた後、少女達の大半を直ぐに眠らせ、眠らせなかった徐栄と李儒を呼んで、商人から聞いた情報を話そうとしていたのだった。
「で、だ。何でお前まで起きてんだ? 沙摩柯」
何故か沙摩柯まで起きており、何食わぬ顔で話の輪に参加してきていたのだった。
「…聞いてるだけ。邪魔?」
小首を傾げて聞いてくる沙摩柯に、ジェフは右手を横に振り徐栄と李儒に向き直ると商人から聞いた噂を話す。
すると、徐栄からは怒りが、李儒からはため息が出て来た。
「桂花ちゃんの名前を聞いた時には、何故そんなご令嬢が此処にいるのか、と思いましたが…蓋を開ければ、と言った感じですね」
李儒は頭が痛そうな表情で、そんな事を言っていた。
ジェフも正直な話として、聞いておいて迷惑な話ではあったが、これ以上ない幸運でもあると判断していた。
「その宦官とか言うのが、どんな奴らなのかは知らんが、少なくとも、今、この情報が知れたのは幸運かも知れねぇな」
徐栄が何故? と言った表情をしていたが、李儒には判っていたらしくしきりに頷いていた。
「全くです。このまま何食わぬ顔で、洛陽へ帰ると再び襲われる可能性があります。と、言っても一度失敗した以上、今度は早々簡単に、事を起こすなんてしないでしょうが…」
真剣な表情で語る李儒を前に、ジェフは余り首を突っ込みたくはなかったが、宦官と荀家の事について聞いてみる事にした。
「はぁ…あんまし聞きたくねぇんだが、宦官と荀家は仲が良くねぇのか?」
ジェフの言葉に、少し考えた李儒は首を振った後、言葉を返した。
「宦官とは仲が良いとまでは行きませんが、険悪…少々難しい所ではありますね。確か宦官の子供が桂花ちゃんの許婚だと言われています、まあ、圧力があったとか言われておりましたけど、清流派と宦官側の折衝役を買うことも少なくなかった筈なのですが…」
そう言う李儒の言葉を聞いた徐栄は、ふと今の言葉で思い出した。
「確か、桂花の父君であられる荀コウ様は、宦官が軍務の権限を得ようとしていた時に、横槍を入れたとか何とか聞いた事があるんだが…関係ありそうか?」
徐栄の話に、李儒は少し考えた後、頷く。
「まさか、こんな場所で厄介な話を聞く事になるなんて、思いもしませんでしたね」
ため息をつきながら話す李儒に、ジェフは内心で同感だと思っていた。
(最悪の事態って程じゃねぇが、状況はかなりnegativeだな。こいつらにはわりぃが、洛陽に着いたら速攻別れた方が良いな。まあ、口約束の契約だが、洛陽までって言ってたのが良かったな)
そこまでジェフが考えていると、徐栄と李儒は、何かを言いたげな表情になっていたので、こいつはマズいと考えたジェフは先手を打つことにした。
「言っとくが、契約の延長は無しだ。今の話を抜きにしてもな」
徐栄と李儒は、顔を見合わせた後、笑みを浮かべ合うと、徐栄が首を振った。
「当たり前ですよ。大恩あるトルーマン殿に、此処までして頂いてまだ何かして貰おうなんて、其処まで恥知らずでは無いつもりです」
徐栄の言葉に頷きながら、李儒も続く。
「それよりも、トルーマン様から私達にとっては金に等しい情報を頂いてしまったので、どうしようかと思ってたんですよ」
苦笑しながら話す李儒に、ジェフはバツが悪くなった。
(そりゃそうだ、こいつらだって軍人と役人なんだからな。んな事を言ってくる訳がねぇ。なまじガキだと思ってた俺がどうかしてたな)
そうジェフが内心で反省していると、沙摩柯が船を漕ぎ出していたので、話は其処までにして今日は眠る事になった。
少女達が眠りについた頃、火の番をしているジェフは、これからの事を考えていた。
(正直な話、帰る手立てが全く想像出来ねぇんだよな。とりあえず洛陽で情報を集めようにも、俺にとっての有益な情報は望み薄、だな)
ため息をつきながら、火を木の細い枝で弄っていると、見知った気配がジェフの背後に来た後、ゆっくりとジェフの背中にもたれてきた。
「オジさん、交代の時間だよ」
声が若干変わっているが、徐晃が交代する為に起きた様だった。
その徐晃の首根っこをジェフ捕まえて、ジェフの前に徐晃を持ってくると徐晃が顔を見られたくなかったのか、ジェフの胸に飛び込んできた。
ジェフは、徐晃の行動には何も言わず徐晃の頭や背中を撫でていると、徐晃が話しかけてきた。
「…やだよ、オジさんとお別れするなんて…」
夜に徐栄達との話を聞いていたのだろう徐晃が、そう言ってきた。
「オジさん、私、オジさんについて行っちゃダメ?」
ジェフの胸に顔を押し付けながら、徐晃はくぐもった声で話すと、ジェフが答える。
「満寵達をほっといて、自分だけどっかに行くって事か?」
そう切り替えされた徐晃はビクッと身体を震わせた後、恨めしそうに言葉を返した。
「オジさん、いっつも意地悪だよ。緑も萌姉達も放っておける訳ないもん」
顔を一切上げずに答える徐晃の背中を軽くあやしながら、ジェフが話す。
「お前らの道ってのがあるなら、俺にも俺の道ってのがあってな。今はそれが交わってるから一緒に居るが、いずれ別れってのがやってくるもんだ。今は、多少寂しいと思えるかも知れんが、直ぐに忘れるさ」
そう言うジェフに、徐晃は思いっきりジェフの胸を抓ると少し強めの口調で話す。
「忘れる訳ない、忘れない、オジさんの事、忘れたくないよ…」
そう言った後、静かに泣いているのかひくつく徐晃に、ジェフが話しかける。
「オジさんは止めろ。これからは、ジェフって呼びな」
そう言うと、徐晃は泣くのを忘れた様に、ジェフの胸に身体を預けたまま顔を上に上げる。
「い、良いの? オジさんの名前だよ?」
ああ、と言うジェフに対して笑顔になった徐晃が答えた。
「ありがとうオジ…ジェフさん? う~ん、オジさんって言ってきたから慣れないや」
小さく舌を出す徐晃だったが、意を決した様に徐晃が話す。
「ジェフ、さん。私の真名は、わっぷ」
徐晃が真名を言いかけると、ジェフは徐晃を自分の胸に押し付けて黙らせる。
「俺にとっては軽い名前でも、お前らにとっちゃ重い名前なんだろ? 大切なモンなら、大事な時にとっとけ」
そう言われた徐晃が、真名を受け取ってもらえなかったからか、ジェフの胸を再び抓った後、何も言わずに軽くジェフの胸を叩くと、ジェフにだけ聞こえる声で呟いた。
「じゃあ、私もジェフって呼ばない。オジさんだけ教えて、私に教えさせてくれないなんて、やっぱりオジさんは意地悪だよ、ほんと…意地悪、だよ」
再び震えだした徐晃を前に、ジェフは徐晃の背中を撫でながら思う。
(駄目だな、自分の事で精一杯の状態で相手の事を考えたって、こうなる事くれぇ分かりきってた筈じゃねえか。馬鹿過ぎるぜ、俺よぅ)
ジェフは、一瞬謝りそうになった言葉を飲み込むと徐晃を撫で続けるが、徐晃は嫌がらずに、そのまま胸の中で震え続けるのだった。
またしても、真名フラグを強引にへし折る主人公に、制裁が下る日は来るのでしょうか?
主人公さん、一杯一杯ですから、かなり参ってます。
そして作者も一杯一杯だったのか、仕事から帰って布団にダイブしたら、気がつくと1時という事態でした。




