とある兵士と少女達の長い夜3
第16話です。
前話同様、残酷な描写が御座います。
ご注意下さいませ。
誤字修正致しました。
沙摩柯が隊商の男達が減っている事に気づいた頃、ジェフは岩の隙間から狙撃出来そうな箇所に陣取っていた。
(残弾を大盤振る舞いしても残るからな…対象を絞って混乱させりゃあ、後は何とかなるだろ)
ジェフは其処まで考えた後、思考を凍らせた。
ジェフと焚き火を挟んだ位置に座った、ガタいの良い髭面の大男の額にスコープを合わせると、静かに引き金を引く。
軽い音と共に弾丸が発射され、大男の額に弾丸が吸い込まれると、大男は胡座をかいた状態でゆっくりと上半身を後ろに倒した。
隣に居た小男は、大男が倒れた事に気づいたが、周りに散らばった酒瓶からかなり呑んだのだろう。
眠ってしまったのだと思ったのか、また騒ぎに参加した瞬間、小男の額に穴が開き座った状態で小男も倒れると、一瞬辺りが静まり返る。
そして、何事かと動きだそうとした時に、円筒形の筒が焚き火の上に放り込まれると、空中で激しい光を発し男達が叫び出す。
何も見えなくなった相手にジェフは、腰のヒップホルダーから右手でU_P.45を引き抜き、近くに居る武器を持った男達2人の後ろ姿を確認した瞬間、胸に向かって弾丸をぶち込む。
断末魔の叫びを上げる男達を無視し、右手の方向に居る武装した男の胸にも弾丸を撃ち込み沈黙させると、あとは気にせず弾丸を吐き散らし(と言っても大体胸に当てているが)次々と人夫達を撃ち殺していく。
人夫の残りが1人になる頃には、目が回復し生き残っている人夫がジェフを見た後、一目散に逃げ出した。
「た、助けてくれー!!」
人夫が叫びながら逃げる背中を瞬時にスコープで覗き込むが、直ぐにL1_8Aを下げるのだった。
逃げた先に徐栄がおり、短槍で横から不意打ちを食らっている人夫を目撃したからである。
(真面目な性格だから、不意打ちは出来ないかもと思いきや、彼奴も軍人だったか…俺もまだ甘いわ)
そう思いながら、最終対象の商人2人を確認すると、小太りの商人はその場で震えているが、細身の商人は後ろに向かって走り出していた。
しかし酔っているのだろう、細身の商人の動きが遅かった為、ジェフは落ち着いてL1_8Aを構えて後頭部に向けて弾丸を放つと、進行方向に向けて赤い血飛沫を吐き出した細身の商人は、その勢いのまま倒れた後、痙攣しそのまま動かなくなるのだった。
〇
自分の所へ逃げて来た人夫を不意打ちで始末した徐栄が、再び待ちの体勢になると先ほどまで断続的に発生していた音、銃声が止んだ事に気付いた徐栄は、息を飲んだ。
(トルーマン殿に何かあったのか? いや、あの方に限って…しかし、むっ? そう言えば、合流の合図をきめていなかったな。…卑怯だが、それを逆手にとって状況を確認しに行くか)
ジェフが半分程心配だったが、もう半分は任せろと言っていた内容への興味で見に行く徐栄だったが、徐栄が見た景色は、男達の額や胸に小さな穴が開き、辺り一面がゆっくりと赤く染まっていく風景だった。
一瞬呆然とする徐栄だったが、直ぐに気を取り戻し辺りを見渡すと、汚い天幕を見つけた。
「多分此処に奴隷達が…子供が居たら余り見せたくない光景だな…まあ、とにかく救助が先だ。しかしトルーマン殿は…いや、私などが心配など…」
そして徐栄は、首を振りながら天幕の中へと入っていくのだった。
〇
その頃、ジェフはと言うと、細身の商人を狙撃した直後、小太りの商人を気絶させ目隠しをした後、担ぎ上げて細身の商人が逃げようとした方向へと移動していた。
岩場の暖かな焚き火の光から離れ、辺りは真っ暗な闇夜と虫の音が包んでいた。
(さて、最後の仕事と行こうか。此処なら、ガキ共にも音は聞こえるだろうが、見えないだろうしな)
ジェフは、リュックの中にある気付け薬を使用して、商人の意識を強制的に戻し後、商人の全身が見える位置へ少し移動した。
すると、直ぐに意識を取り戻した商人は辺りが真っ暗で何も見えない事に騒ぎ出すが、ジェフに左膝を撃ち抜かれて叫ぶ。
「あぁー!? 痛い痛い!! た、助けてくれ、頼む、助けてくれ!!」
助けてくれと叫び続ける商人に対して黙れとジェフは命令するが黙らなかった為、商人の右膝を撃ち抜くと、歯を噛み締めて黙り出す。
「それで良い、てめぇは黙って俺の聞くことに答えりゃいい。ちゃんと答えりゃ楽にしてやるよ」
商人には、見えないが無表情のジェフが言う言葉に商人は歯を噛みしめながら頻りに頷く。
「それじゃ質問だ。おっさんは奴隷商人らしいが、何処の商人なんだ?」
聞かれた商人は、叫びながら答える。
「ら、洛陽だ! 洛陽で商売をしている」
その言葉に一瞬ほくそ笑むジェフは、再び無表情になり質問をする。
「なら次だ、こんな荒野で商売してたんだから当然おっさんか誰かが地図を持ってるんだろうと思うんだが、何処にある?」
商人は懐に手を突っ込んだ瞬間、最大級の警戒に移行し商人にU_P.45を向けたが、出してきたのが地図だったので、警戒は解くが一応の警告の為に、左膝を踏むと商人が叫ぶが気にせず話す。
「俺に許可無く懐に手を入れるな。良いな」
痛みに商人は首を縦に振るが動きが悪くなってきた為、ジェフは最後の質問をする。
「次で最後だ。おっさん、洛陽で今何か話題はあるか?」
ジェフにとって、最後の質問は余り意味が無いが、必要な情報は得たので、後は今から向かう場所の小ネタが掴めればと思い質問したのだった。
だが、ジェフにとっては、余り聞きたくない情報が耳に飛び込んできた。
「し、商人達の噂では、と、特に私達の様な商人達の間で…流れて…いる…噂だ、荀家の…ご令嬢…を攫った…奴がいる、らしい。裏で…手を引いたのは…宦官…だと、聞いて…いる…た、助け、て…」
息も絶え絶えな商人の額に銃口を向けて、引き金を引いた後、ジェフは服の使えそうな箇所を剥ぎ取って商人達の野営地へ移動を開始するのだった。
〇
ジェフが商人に質問した後、野営地に戻ると徐栄と、見たことのない白髪の女が荷物の整理をしていた。
ジェフが野営地に入ってきたのを、目ざとく見つけた徐栄は、直ぐにジェフに駆け寄り、白髪の女もゆっくりとジェフに近付いてくる。
「トルーマン殿、お疲れ様でした」
何をしていたのか、大体予想がつくのだろう、徐栄は何も言わずにジェフを労うと、徐栄の隣に立った白髪の女が、赤い瞳でジェフの顔を覗き込む。
「…なる程、徐栄が強いと言ってた理由が判る。お前、相当やる」
探るような瞳と何故か臭いを嗅ぎながらそう言う女に、ジェフは指を指して女の奇行に慌てる徐栄に聞いてくる。
「徐栄、こいつ何モンだ? 奴隷っつぅのは判るんだが…」
そう言われ、焦りながら徐栄は女に叱りつつ説明を始めた。
「し、沙摩柯!? 人を覗き込みながら臭いを嗅ぐなど…し、失礼だろうが!? すいませんトルーマン殿、彼女は貴方の仰る通り、捕まっていた奴隷の1人で…」
其処まで言うと、沙摩柯と言われた女が、割り込んできた。
「…さっきまで、奴隷だった沙摩柯だ。宜しくな、トルーマン。強い奴は好きだぞ」
そう舌なめずりをしながら、言う沙摩柯に辟易しながらジェフは思う。
(また、個性的な奴が来たな。好戦的なタイプだが、冷静さも持ち合わせた奴か…どっちにせよ、こりゃまた何というか…綺麗所いっぱいでヒャッホイなのに素直に喜べん。こいつも美人な上に、声も良いのになんて残念な…)
考えが途中で違う方向へ飛んだ(現実逃避とも言う)ジェフを徐栄は焦りながら、沙摩柯は笑みを浮かべつつ首を傾げて見つめるのだった。
個性的な人物を出すと、纏めるのが大変です。
が、自分の想像(妄想)ですから、やはり楽しいものですね。




