とある兵士と少女達の長い夜1
第14話です。
遅れてしまいました。
ジェフは、徐栄からは恨みがましい目を、李儒からは悲しい表情を、徐晃からは涙声のお願いを、少女達からは困惑をそれぞれ受けながら、その全てをスルーし、少女達を無理矢理寝かしつけ、寝静まった所でジェフは静かに起き上がり自分の現在の得物、L1_8Aに手を伸ばした。
「トルーマン殿、どちらに行かれるので?」
内心で舌打ちしながら後ろを振り向くと、近頃板に付いてきた微笑みを浮かべた徐栄が起きていた。
それ所か、李儒や徐晃達まで起きていたのだった。
「おいおい、子供は早く寝ないといけないんだぜ? サッサと寝な」
ジェフは、L1_8Aを片手に取り移動しようとしたが、徐栄にズボンを掴まれ止められてしまった。
「トルーマン殿、もし商人共の所まで行くなら、お供致します」
真剣な表情の徐栄に、ジェフは鼻で笑いながら答えた。
「フン、お前1人が来たって何が出来るってんだよ。ガキはおとなしく寝てろ」
その言葉に、徐栄は冷静に答えた。
「しかし、トルーマン殿は1人では無理だと仰っていました、ならば1人でなければやれると言う事だと思うのですが、違いますか?」
真剣な表情の徐栄にジェフは、ため息をついた。
「ありゃ嘘だ。1人でもどうとでも出来るが、これ以上期待されるのも嫌だったんでな。すっぱり諦めて貰おうと思って言ったのさ」
何か得心したのか、頷いた徐栄がジェフに聞いた。
「本当に何もありませんか? 私も武官、多少は武を心得ております。何かさせて欲しいのです」
真剣な表情で熱く語る徐栄に、若干押されるジェフだったが、もう少し強めに断ろうとした時、徐晃が割り込んできた。
「オジさん! 私も手伝うよ!! 教えてくれたら、何だってやるから!!」
ジェフは徐晃のこの言葉に、怒りを覚える。
そして、少女達にみせたことの無い表情、激怒を通り越して、極寒の寒さすら感じる冷たい殺気を放ちながら、言葉を紡いだ。
「ふざけんじゃねぇ。 自分のケツも拭けないガキに何が出来る? 寝言は寝て言え」
少女達はジェフの見たこともない表情に、脅えるのだが徐晃は涙目で震えながらも、何も言わずただジェフを見つめ続ける。
そして…
折れたのはジェフの方だった。
「ガキのクセに度胸だけは、すげぇな。ったく、何もしなくて良いっつってんだから素直に喜べよ」
左手で頭を抑えながらジェフが言うと、徐晃は涙を拭いながら真剣な表情で話す。
「自分から何かしないと、多分何も起こらないって思ったから…でも、オジさん怖すぎ」
最後はおどけながら言う徐晃に溜め息をつき、周りを見渡すと先程まで脅えていた少女達も、ジェフを見つめているのだった。
「はぁ…、お前ら手伝うっつうんだったら、条件がある。俺の指示以外の行動は絶対にとるな。例え、目の前に助けたい対象が居たとしてもだ。これが聞けないんなら、これ以上話はない。どうする?」
真剣な表情のジェフに、少女達は黙って頷くと、ジェフは肩を竦めながら話し始めた。
「つってもだ。正直な話、お前らはほぼ全員が戦力外だ。それは理解してるよな?」
そう言うと少女達の大半が頷く。
「良し、そこでだ。Offenseは俺が引き受けるから、徐栄にはSupportを頼みたい」
そう言われ少女達は、全員の頭の上に?マークが付いた。
「すみません、トルーマン殿。おふぇんすとさぽぅと、と言われても意味が…」
真剣に困った顔をした徐栄に、ジェフが頭を掻く。
「ああ~、えぇっとなぁ、ああ攻撃は俺が受け持つから、徐栄には補助を頼みたいってこった」
この言葉に徐栄の顔に喜色が浮かぶ。
「はっ!! お任せ下さい!! トルーマン殿に商人共の手先など指一本触れさせません!!」
そう言う徐栄に、一瞬意味が分からなかったジェフだったが、自分の言った言葉を思い返して、返事をした。
「徐栄、俺はお前と行動するなんて一言も言ってないぜ?」
その言葉に、徐栄は気落ちしたあと困惑する。
「し、しかし、ではどうやって補助をすれば?」
またため息をつきながら、頭を振りつつジェフが話をし始める。
「とりあえず俺の話を最後まで聞け。良いか? 相手は商人2人を合わせて大凡二十人程だ。数は圧倒的に相手の方が多い。だがな、まともに戦えるのは、八人だ…どうした? 李儒」
その言葉を聞いた李儒は、少し考えた後におずおずと手を上げて答える。
「他は人足と言うことですか?」
そう言う李儒に、ジェフは頷く。
「ああ、商人共の近くに寄った時に、ついでに配置と装備も見たが、ゴロツキに毛の生えた様な兵隊と、後の残りは人夫だったからな、そして、こっちで戦えるのは2人だけだ。となると…」
其処まで言って言葉を切ると、顎に指を添えて考えていたらしい荀イクが答える。
「奇襲位しかないわね。でも、火を使う事も出来ないし、どうやって2人で奇襲なんてするのよ?」
そう聞く荀イクに、ジェフは肩を竦めながら答えた。
「人数が居りゃそれで良いんだが、こっちに不利な条件が揃ってる、様に見えるだろうが、な。このMissionは殊の外、余裕なのさ。まあ、見てろ」
ニヤリと笑うジェフに一同は一瞬困惑したが、ジェフが笑った時は大概上手く事が運んでいる為、逆に安堵し始めた。
「オジさん、私は勘定に入らないの?」
目をウルウルさせている徐晃をジリジリとジェフに近付いてきて、とうとうジェフの顔近くまで近づいてきたが、ジェフは無視しようとしたのだったが…
(無視して行動したら、後ろから「てへっ、ついて来ちゃった」とか言われそうだな。だが、仕事なんて用意できねぇぞ…いや待てよ)
ピンと閃いたらしいジェフが、嫌そうな顔をしつつ徐晃に話をする。
「いや、お前俺の命令を無視する可能性があるからな、仕事は与えられねぇな」
そう言われた徐晃は、首を激しく振った後、ジェフの言葉を否定した。
「大丈夫だよ!! オジさんの言う事ちゃんと聞くから、お願い!!」
そう言う徐晃に、まだ嫌そうな顔しつつ、ジェフは言う。
「ほんとかぁ? お前は、旅の最中も嘘をつき続けたからなぁ。辛くないとかよぉ。違うか?」
うっ、とつまる徐晃にジェフは畳み掛けるように、話した。
「そんなお前を信じろと? 無理だなぁ…」
またもや涙目になり始めた徐晃に、ジェフはカードを切る。
「だが、どうしても手伝いたいなら、そうだな…満寵と荀イク、それとそこの嬢ちゃんを連れて、向こうの辺りに隠れられそうな場所を探して帰ってこい」
ジェフは自分達の前、商人達の野営地から逆の方向を指差しながら話した。
「緑や桂花達を連れて行くの?」
困惑しながら聞く徐晃に、ジェフは頷く。
「ああ、これなら絶対無理できないだろ? 無理するって事は、満寵達を殺すって事だからな。で、どうするんだ? やるのか? やらないのか?」
やる、と静かに言いながら頷く徐晃に、んじゃ、サッサと行って帰ってこいと、背中を押すと、走り出すと思っていた徐晃は、自分の後ろについてきている困り顔の満寵と嫌そうな荀イクに、小さな少女の4人を気にしながらもなるべく音を立てずに移動するのだった。
「トルーマン殿…商人共の野営地からはかなり離れていますが、危険ではありませんか?」
徐栄は困惑しながらジェフにそう言うと、ジェフは首を慣らしながら、逆に聞き返した。
「ならよ徐栄。奴を放置して、突然俺かお前の後ろに徐晃が来たら、支障をきたすとは思わないか?」
数瞬考えた徐栄は、きたすと思いますと力無くうなだれるのだった。
ジェフと少女達の長い夜はまだ続くようだった。
一話に収まりきらなかったので半分位にしてみました。




