とある兵士と遠くの隊商
第13話です。
河東群に入って3日が経った。
前に居るジェフの歩く速度は、少女達に合わせているため、現在はゆっくりと移動している。
そして少女達は相変わらず賑やかなままだった。
「お~い、お前ら。まだまだ移動すんだから、こんなとこで騒いでると途中で疲れるぞ? もちっと静かにしろよー」
そう言うと、少女達から、はーい、と言う返事の後、静かになったが、暫くするとまたガヤガヤとし始めるのだった。
「一回誰か吊しあげた方が良いかねぇ? 遠足じゃねぇんだから」
ボソッと物騒な事を言うジェフに、苦笑しながら徐栄が話し掛けた。
「嬉しくなってしまうのは仕方ないかと、もうじき安全な所に行けると判れば、あの子達では我慢出来ないでしょうし…、ただ、余りに目につくようなら、窘めておきますね」
そう言うと、徐栄は柔らかい笑顔を見せた。
「ふふふっ、萌ちゃんったら、すっかり落ち着いちゃって。一体何があったのかしら?」
徐栄をからかうつもりでそう言った李儒だったが、徐栄は首を傾げていた。
「うん? 私はいつもどおりだが? 何かおかしかったか? 響」
柔らかい笑顔のまま答えた徐栄に、李儒は呆れた表情をした。
「はぁ、萌ちゃんの春は何時来るのかしらね」
李儒の言葉に徐栄はただただ、頭の上に?を増やしているのだった。
ジェフは、辺りを見回しながら移動していたのだが、何時もの光景と違う事に若干の違和感を感じていた。
何時もなら、オジさんオジさんと近くに来ては、話し掛けて来る徐晃が道案内以外は話し掛けて来なかったからだ。
そして、時折チラリと、どこかを見つめており、見つめる位置が一定なので、大体何があるのかは判っていた。
(さて、どうしたもんかね、こいつの村があるんだろうが、こいつから村の話を聞いていない以上、どうなってるのか分からんしなぁ)
ふと、後ろに居る徐栄を見ると、徐栄も此方を見た為か、目が合ってしまった。
丁度良いと思ったジェフは、小さく手招きすると、少し足を早めた徐栄が右隣にやってきた。
「トルーマン殿、何かありましたか?」
徐栄が近付いてきて、ジェフに声をかけると、ジェフは右手の人差し指を口に当ててサインを送る。
「何かありましたか?」
意図を汲み取った徐栄は、前を向いて小声で話してきたので、ジェフは質問するのだった。
「徐栄、徐晃の住んでた村か街について、なんか聞いてるか?」
そう聞かれた徐栄は、少し目を伏せながら答える。
「藍の村は焼き払われた、と藍からは聞いています。後、その時に藍のお父上も、と。お母上は、藍を生んだ時に…」
徐晃から聞いていた身内だけの話だったが、ジェフが聞いてきた為、素直に話す徐栄。
「なる程な。ちっ、あの状態の徐晃を村に連れてっても、良いことは無さそうだな。村が跡形も無いってんなら、補給すら受けられんから…仕方ねぇ、真っ直ぐ洛陽を目指すか」
そう言って前を見据えるジェフに、徐栄は少し驚いていた。
「藍を村まで送るつもりだったのですか?」
そう聞かれたジェフは、苦笑いをしながら答える。
「汚い大人の事情って奴さ。もし村があったら、徐晃を見捨てにくいだろうと思ってな。徐晃を連れて帰ってきたから補給をみたいな話さ。汚いだろう? 他人様の情に訴えるんだからな」
肩を竦めながら笑うジェフに、微笑みながら徐栄は首を振った。
「そう言う事にしておきましょうか。とりあえず、このまま洛陽へ向かうのは判りましたので、李儒に伝えておきます。後、徐晃にはなるべく判らないように…無駄かも知れませんがやっておきます」
そう言いながら、ジェフの隣から徐栄は離れていき、李儒の下に移動するのだった。
〇
事態が急変したのは、ジェフが徐晃の村に寄らないと決めた2日後の昼頃だった。
相変わらず少ない食料を分け合いながら、西へ移動を続けていたジェフと少女達一行は、妙な雰囲気の隊商を発見する。
本来なら直ぐにでも、飛びつくのだが、ジェフは嫌な予感が走った為、少女達に声を出さないように、きつく言いつけた後、全員で静かに隊商の後をつけた。
暫くすると、隊商の前からも隊商が現れ、ジェフが見た感じでは、良さそうな服を着た男2人が各隊商から離れて話をし始めた。
ジェフは、男の会話を見ようと、腰に手をやるが欲しい物が掴めずにいた。
「オジさん? 何してるの?」
久しぶりに声をかけてきた徐晃に声をかけようとしたが、男達の会話が聞きたかったジェフは、徐晃に静かにと人差し指でジェスチャーをし、姿勢を低くしながら隊商に近づく。
ジェフはついて来ようとした少女達に、来るなとジェスチャーをした後、徐栄見ると、徐栄は頷き李儒と共に少女達を下がらせるのだった。
「はてさて、お客様は何をお話なのですかね? わたくしめにもお聞かせ下さいませっと」
軽口を叩きながら、低くかった姿勢は何時の間にか匍匐に変わり少ない雑草に身を潜めたジェフは、双眼鏡の代わりにL1_8Aのスコープを覗き見る。
男達の会話、唇の動きを読んで内容を頭に入れていくジェフは、口汚く罵る。
「Fu_k!! クズは何処にでもいるもんだな…」
頭に大分血が登ってきたジェフだったが、男達が話を終える頃には辺りは夕暮れに差し掛かっていた。
ジェフは、何も言わずに、姿勢低く保ちつつ少女達の下に戻るのだった。
〇
ジェフが少女達の下に戻ると辺りは夕暮れから夜になりつつあった。
隊商からかなり離れた岩の陰で待機していた少女達がジェフの帰還を喜び、お帰りなさいと挨拶をする。
それに続いて徐栄が、真剣な表情でジェフに話し掛けた。
「トルーマン殿、あの隊商に何かあったのですか?」
徐栄の言葉に、静かに頷いたジェフが語り出す。
「あいつら、どうやら奴隷商人らしい。今は商品の受け渡しと交換をしてる最中だぜ」
その言葉に少女達一同が呆然とするなか、徐栄の顔付きが変わる。
奥歯を噛み締める音が聞こえそうな程、歯を噛み締め形相が憤怒に染まる。
「外道共が、ふざけおって!!」
今にも飛び出しそうな徐栄の肩をジェフは掴む。
「どこ行く気だ?」
「決まっているでしょう!! 愚かな商人共を蹴散らして来るのです!!」
森の中から二週間以上経った為、徐栄の身体は疲労こそ多少あるが、怪我自体は完治しているので、やれると判断しているようだったが、その様子を冷ややかに見ていたジェフが言葉を返した。
「お好きに、俺は手伝わんぞ?」
その言葉に、徐栄は驚愕した後、ジェフに対して怒鳴る。
「何故ですか、トルーマン殿!! 今も賊徒に捕らえられていた私達と同じ目に合っている者達が居ると言うのに、何故助けようとしないのですか!!」
徐栄は怒り心頭といった様子でジェフに掴み掛かるが、ジェフに掛けられた言葉に水を浴びせられた。
「お前ら、ちっと勘違いしてないか? 俺は誰でも彼でも助ける訳じゃないんだぜ? しかもわざわざ、お前らを危険に晒す可能性があるのに、仕事を放り出して助けに行くなんざ出来るかっつうの」
そう言うとジェフは背を向け、大きな焚き火をし出した隊商の野営地を見始めた。
辺りが静まり返ると、小さな泣き声が聞こえ始めた。
「オジさん…もうこんなのやだよ、見たくないよ、助けてよ…オジさん…」
泣きながら徐晃がそう言うが、ジェフは背中を向けたまま答えた。
「俺は只の人間だ。俺1人じゃどうしようもねぇよ」
実際に言えばそうでも無いのだが、ジェフはこれ以上自分に過度な期待をされると禄な事にならないと思い冷たく拒絶するのだった。
戦闘シーンとか言いながら、まだ話とか引っ張りすぎな作者です、申し訳ない。




