◇泣き虫男子高校生とJK×2と魔王社長 編
ラーメン屋さんは今回出てきません。
「最近マジでラーメン屋のおにーさん見ないな」
「それな。ヤベェ醤油ラーメン食べたいんだけど」
「そういえばそうっすね。そろそろ餃子食べたいっすけど、呼び方もわかんないし……」
「まおーは何か知らねぇの? マジでやる気出ない」
「わかる。味噌ラーメン食いたい。ヤベェ、明日の移動中に誤射しそう」
「魔王社長だって知らないことはあるっすよ。大魔王会長だったらなんでも知ってそうっすけど」
「待て待て。娘らは落ち着いて座れ。勇者はさりげなく貶めるんじゃない。ラーメン屋の事は知らぬが、あの男の弟子からラーメン屋のチラシは受け取っている」
「はぁ!? マジで!? 私聞いてませんけどぉ!?」
「どおいうことよ、まおー! アタシらに隠し事するたぁ、いい度胸じゃねえか!」
「二人とも落ち着いて! 輩みたいにメンチ切らないで! じょしこーせーの体裁取り繕って!」
「……先日7人の従業員を引き連れたパン屋さんと会ってな。その時に、師匠であるラーメン屋の店主が暫く屋台を休むことになったということを聞いたのだ。そのかわりに一部の品をテイクアウトができるようにしたとかで、そのチラシを貰った。ああ、頼むから休む理由は聞くな。知らんからな」
「マジで……」
「あのどこでもいつでもラーメン屋台で現れるおにーさんが、お休み……ヤベェな……」
「ていうか、いつでもどこでもなんてブラック企業っぽいし、お休みあっても逆によかったんじゃないっすか?」
「「確かに!」」
「チラシによると、チャーシューと、穂先メンマ、それと自分で焼くタイプの餃子が注文でき……」
「「ぎょーざ! 餃子!!!」」
「いいっすね!! 餃子頼みましょう!」
「そう言うと思って、餃子は取り寄せしておいた」
「まおー! まおー社長! 天才かマジで!!」
「まおー社長! ヤベェ! 素敵!!」
「魔王社長! 流石っす!」
「現金すぎるだろうお前たち!」
「でもこれ、自分たちで焼くタイプじゃん、マジか……」
「アタシ焼こうか。得意よ焼くのは」
「いや待ってダメダメ! 餃子を駄目にするのが目に見えてるっす!」
「あ、未来見えたわ。消し炭になった餃子を目の前にして喧嘩してる私らの未来が。ちゅーか、未来見なくても知ってた。無駄打ちしたなコレ」
「いやでも、これ、みんなで協力すればなんとかなるのでは? ほら、火の調節を未来視しながら調節して、オレが勇者パワーをつかってフライパンを……」
「「それだ!」」
「若者たちよ、待つがよい。具体的に言うと席について暫し待て」
「は?」
「へ?」
「はい?」
「む、来たな。……入ってくれ」
「失礼いたします、マオー様。こちら、ご依頼の品でございます。なにぶん、初めてのことでしたのでご注文通りできましたかどうか……」
「ふむ、素晴らしい出来だ。流石この街一番のホテルの厨房を任されるだけある」
「お褒めいただきありがとうございます」
「報酬の他に、礼を上乗せして届けさせよう」
「ありがとうございます。では、ごゆっくりお楽しみください」
「……あの店主ほどではないが、やはり料理は料理人に任せるに限るな。さあ、焼きたての餃子だ、思う存分食すがよい」
「マジで待って今の誰」
「今いるこの宿の、三件隣のホテルの厨房の料理長だ」
「ヤベェ、どういう流れかよくわかんねえけど、餃子はアタシらが焼くより遥かにいいってことは理解した」
「うん、なんていうか、ふつーに美味しそうっすね。え、わざわざ頼んだんっすか?」
「お前たちは、自分たちが上手く餃子を焼けると本気で思っているのか、絶対食わんぞお前たちが作ったものは」
「いやでも、焼くだけっしょ」
「ふざけるな、お前に野営の時に火の番以外させたことがあるか」
「……いや、あるっしょ。……いや待って、マジか、無かったかも」
「あれ、ヤベェ、ほんとだいつも誰かやってくれてた気がする……」
「え、あれ? 魔王社長、オレたちって、いつも他の冒険者の人たちと一緒だった気がするんすけど、これって……」
「お前たちは、お前たちのような若いパーティーに最も必要なメンバーがどういう者か知っているか。これは、ラーメン屋の店主とも一致した意見だったのだが」
「わかんない、マジで」
「なんかヤベェ予感してきた」
「ええと、どういうメンバーが必要なんすか?」
「お前たちのような若いメンバーに必要なのは、普通に常識があって経済力のある大人だ」
「まおーそういえばマジで常識人だった!」
「まおーそういえばヤベエ金持ってた!!」
「大人……財力で殴れる常識のある大人……未成年パーティーには確かに必要っすね……」
「ラーメン屋の店主は、お前たちが子供の身で知らぬ土地に放り出されたことが不憫で、その大人の役目を暫し買って出ていてくれたのだ。今は余がお前たちのそばにいるからな。お前たちの前に現れる頻度も減ったのだろう」
「でも、私、ラーメン……食べたい……」
「アタシも」
「オレもっす」
「わかっておる。お前たちが元気にうろついておれば、彼方の都合がつく頃にはまた会えよう。
あやつは、
『知り合いには甘いラーメン屋さん』
だからな」
「よっしゃ、元気に餃子食って、冒険しよ! あ……、どこかはわかんないけど、パン屋のおねーさんと一緒に、みんなでおにーさんのラーメン屋台でラーメン食ってるのが見えた!」
「ん、あの料理人の人、焼くのじょーずじゃん! ヤベェ、ちゃんとじゅわっとパリっとしてる!」
「魔王社長、ありがとう。……一緒にここに来たのが魔王社長で、オレ、よかったっす……! うぇええん! 魔王社長ー!」
「泣くな! 泣き虫はなおらんなお前は! 皆、餃子を食べてゆっくり寝ろ! また明日からは次の街へ移動するのだからな……」
end
今回のお話は、蛇足として
このメンバーのある一日を付け足させていただきました。
時々増えるかもしれませんのでよろしくお願いいたします。




