四話 魔法との遭遇
いつもの日常、いつもの通学路、優斗はいつもより早く学校へと向かっていた、そうすると唐突に肩をたたかれる。
「優斗、いつもより早いじゃん。」
「そういう春也も、早いな。」
「・・・昨日の事なんだけど。」
「分からない、早く確認してみないとな。」
昨日の夕方、彼らは異世界から帰還し、各々の家へ帰った・・・だがしかし、彼らはそこで困惑する出来事が待っていた。
さかのぼる事、半日前。
優斗は憂鬱に自分の家の玄関に立っていた。
ガチャ・・・
「ただいま」
「おかえり」
以外にも、返ってきた言葉は安否を気遣う言葉でもなく、罵倒するでもなく、ごく当たり前な母親の返事だった。
今から何処かへ出かけようとしている。
「ごめんね、夕飯待ってて、醤油切らしちゃって今買ってくるから。」
「あ・・・それなら俺が行って来るよ。」
「あら本当、じゃーお願いしちゃおうかしら。」
「醤油以外に買ってくるものある?」
「う~ん、甘いもの適当に買ってきてもらえる?」
「分かった、行って来る。」
優斗は再度玄関を出る・・・
(おかしい、なんで母さんは平然としているんだ、俺は確かに昨日異世界に行ってたよな。)
自問自答を繰り返す優斗、すると携帯が鳴る。
(春也からか。)
「どうした?」
「優斗どうしよう!なんだか変だ!昨日が今日だ!」
「落ち着け春也、今俺もその現実に直面したところだ。」
「え?」
「まぁ落ち着いて聞け、俺たちは昨日異世界に行った、これは事実だ、ただ向こうの世界とは時間の流れが違ったんだ」
「どういうこと?」
「向こうの異世界の一日はこっちの世界の1秒にも満たないかもしれないって事だ。」
「そんなことあるの!?」
「分からない、ただアレは常識でどうにかなるような物じゃない。」
「そんな・・・だとするとミリアちゃんは?シノラさんは?」
「よぼよぼのおバーちゃんだろうな今頃・・・間違えたら宇宙の終焉を迎えてるかもしれない。」
「嘘だー!!!」
優斗は携帯から耳を遠ざける。
「うるさい、悪までも可能性だって事を忘れるな。」
「うう・・・。」
(マジ泣きしてるなこいつ・・・めんどくさい。)
「春也はテストの前にあの森の風景を見てるんだよな?」
「うん・・・。」
「なら大丈夫だ、もしかすると一年ぐらいはたっているかも知れないが、たったの一年だ。」
「約束守れなかった・・・。」
「気にするな”待ってる”なんてただの商売上の言葉だ。」
「・・・なんだかそれも寂しい気がする・・・」
「俺も明日までには色々考えておくから、今日はこれまでな?」
「うん、分かった、ごめん優斗。」
「気にするな、じゃーな、きるぞ?」
「うん。」
プツ ツーツー
(本当にめんどくさい奴だ。)
優斗は耳から離した携帯の画面を見る、画面の端にある日付と時間を確認する。
(やっぱり一日経過してるよな。)
まだ不安がぬぐえない優斗は鞄の中の奇妙な砂時計を見て再確認する。
(大丈夫、まだ大丈夫だ。)
彼等は不安を抱えて夜を過ごすことになる、虚しくも朝がやってくる。
時間は進むこと授業中
現在、年末テストも終わり春休みへと入るまでの繋ぎの様な授業が行なわれてる。
優斗はとある科目で頭を抱えていた。
「であるからして、ユウコは・・・・・・」
(マジかよ・・・どうするんだこれ。)
授業の終わりの鐘が鳴る。
優斗は春也の前にやってきた。
「あれ、優斗がこっちに来るなんて珍しい。」
「さっきの英語の授業聞いてたか?」
「うん、英語はまったくやってなかったね。」
「それについてもなんだが・・・この消しゴムを手に持って力をこめてくれ。」
「いいけど・・・・・・!!?」
「はぁ・・・俺達は向こうの世界の影響を受けてるらしい。」
春也の手の中には砕けた消しゴムがポロポロとつぶれて存在していた。
「どうりでおかしいと思ったんだ、今朝、爺ちゃんの朝稽古の組み手で勝っちゃうし、英語授業は日本語話してるだけだし。」
「爺さんに勝ったのか!?」
「そんなに驚くこと?」
「はは、いや何でもない・・・よかったな春也これで世界のヒーローになれるぞ。」
「やめてよ、小学校の時の事を持ち出すの。」
「それにしても困ったな・・・。」
「便利でいいじゃん、困ってる外人さんとか道教えてあげられるよ。」
「お前がそれで良いんだったらいいか。」
何事も無く時間が過ぎ放課後がやってくる。
二人は神社へと向かう。
階段をのぼり境内へと入り、裏手の岩へとやってきた、二人は昨日作ってもらった平民の服を着る。
「くれぐれも取り乱すなよ?」
「自信が無い。」
その時がやってくる、空間にヒビが入り、歪みが現れた。
「森・・・だな。」
「よかった。」
二人は異世界へと移動する。
「変わった様子は無いな。」
ドン!
優斗が振り向き春也を見るが居ない、あるのは春也が居たであろう場所に土煙がたちこめ小さなクレーターが出来てた。
ストン!
「お帰り、どうだった?」
「町はあった、変わった様子は無いよ。」
「なら急ぐか、門が閉められる。」
「!! なら背中に乗って。」
優斗は前回同様、背中に乗る、春也は全力で走り出す。
(前より手加減無しだな、早い!)
地を蹴るたんびに土が舞い上がり轟音がする。
門が見えたあたりでスピードを落とし優斗をおろす。
優斗達はあたりを見る、外観は変わったところが無さそうだ。
「そんなに時間はたってなさそうだな。」
「じゃーミリアちゃんもシノラさんも居るよね。」
「ああ」(なんともいえないな。)
二人は門を潜ろうとすると、止められてしまう。
「おいそこの二人!」
「「!!」」
「こっちへ来い。」
「俺達に何か?」
「お前達さっき門をすごい勢いで出てった奴だろ? せめて一言ぐらい言ってから出ろ、そうしないと後々面倒だろうが。」
「すいません、急用だったもので。」
「町の外でか? まぁいい門を閉めるから早く入れ。」
「・・・これって」
「まぁ、なんだ、よかったな。」
二人は宿の”鳥小屋”へと向かう。
「あれ、明日来るんじゃなかったの?」
「いや、ミリアちゃんの顔が見たくてすぐに来ちゃった。」
「って、何で涙ぐむの!?」
「いらぬ心配で色々あったんだ、さっしてくれ。」
「ふ~ん、何か飲む?」
ミリアは春也をなだめながら奥のカウンターの席に案内する。
「男の子が泣くな、飲み物取ってくるから待ってなさい。」
「あ、酒はやめてくれ。」
「了解。」
「ミリアちゃんいい子だよ~。」
「・・・にしても、分かってると思うが、元の世界に居る間も異世界が止まってるとわな。」
「・・・うん。」
「お前は泣きすぎだ。」
「ごめん・・・。」
ミリアが飲み物を持って現れる。
「早いな。」
「早く回せばその分お金が儲かるからね。」
「こんなところで油売っていいのか?」
「休憩時間よ、にしても何でハルヤは泣いてたの?」
「まぁ、どうでもいい事なんだ。」
「どうでもいい事なんて無いじゃない。」
「聞かないでやってくれ。」
「どうしても?」
「・・・。」
「///」
春也が恥ずかしそうに俯いたのを見てミリアは聞くことをやめた。
「分かった、ならこっちには答えて?」
「?」
「今朝貰ったマッチなんだけど・・・アレは何? 何で魔力を使ってないのに火が出るの? 何所で手に入れたの?」
「質問が多いな・・・そうだな逆に魔力って何だ?」
「魔法を知らないの!?」
「知らないな。」
「どんだけ田舎ものなの? まぁ良いわ教えてあげる、ただしマッチについても教えて。」
「分かった。」
「じゃー魔法を教えてあげる。」
ミリアはそう言うと持ってきた水を少しテーブルに垂らす、そしたらその水で円を描き絵のような文字のような物を描きつぶやく。
「”水よ、我が使命をに応え形を成せ”」
何も無い空間から水が湧き出るように球体状に出現する。
「これで終わりじゃないわ。」
水はやがて白く凍りつきテーブルに落ちる。
「これが魔法。」
「マジか・・・」
「ファンタジー」
「これで分かったでしょ、さーマッチの事を教えて。」
「分かるか!」
「何でよ、今水の精霊にお願いして水を作って氷にしてもらったじゃない、結構難しいのよこれ。」
「そう言う問題じゃない、魔法が何なのかまったく説明になってない、実演しただけだ、てかそうじゃない!」
「じゃー何から説明すればいいの?」
「そうだな、魔法って何だ、どうやって動いてる?」
「うーん、どうやって動いてるって聞かれれば、そうね魔力を使ってるわ。」
「じゃー魔力って何だ?」
「魔力ってのは世界に存在する5つの神と12の女神そして数多の精霊加護による恩地こと。」
「・・・。」プルプル
「どうしたのユート、震えてるわよ?」
「はは、もう優斗限界じゃない?」
「?」
優斗は春也が言った通り、限界だった。
(何が恩地だ! 意味が分からん! だいちなんだこの世界は最初から胡散臭かったんだ! モンスター有り? 物理法則無視? 魔法有り! 何所の厨二病だよ! ファンタジーじゃねーか!・・・・・・そうかファンタジーだ。)
「あ、戻ってきたみたい。」
「ま・・・まぁいい1万歩譲ってファンタジーは認めよう、じゃーその魔力の神様ってのは何だ?」
「うーん、私も教わっただけだから詳しくは知らないけど、神様って言うのは5人居てそれぞれが火・水・風・土・光と闇を司ってるの、そして女神はそれらを補う形で存在してる、んで声で精霊に伝えるの、こうして欲しいって、そうする事で魔法が完成するの。」
「・・・。」ボン
「まーたどっか行っちゃったよ。」
「もういいでしょ、マッチの事教えて? アレは何で火がつくの?」
「確かあのマッチの赤い部分に・・・」
「リン・・・」
「が使われててそれを・・・」
「塩素酸カリウム・・・」
「に擦る事によって火を起こしてるんだよ。」
「リン? エン何?」
「なんて説明したらいいのかな?」
「・・・・・・それを一から説明するとなると一時間じゃすまない。」
「えーそれじゃ分かんないわよ。」
「そうだな、木が燃える理由・・・分かるか?」
「それは木に宿った火の神様が力を使ってるんでしょ?」
「違う・・・木が急激な酸化をすることで起きるんだ、ちなみに酸化ってのは空気中の酸素を取り入れた状態だ。」
「なにそれ、よく分からない。」
「まぁ見てろ。」
優斗はコップの水を飲み干すとマッチと蝋燭を取り出し火をつける。
「いいか良く見てろ、今この蝋燭に火をつけた、だがこの火を消すにはどんな方法がある?」
「えーと、これぐらいだったら吹き消すか、水をかければ消えるでしょ?」
「じゃー俺は風も水も使わずに消してやる。」
そんなことどうやるのよとミリアがつぶやく前に優斗は手に持ったコップを蝋燭にかぶせる、数秒したらコップを外す、案の定火は消えている。
「・・・。」
「さぁ、何で消えた? 答えは簡単、空気中の酸素がなくなったからだ。」
「ただの偶然よ、ユートが何かしたのよ。」
「じゃーミリアもやってみろ。」
そこまでゆうならとミリアは自分で試してみる。
「・・・。」
「分かったか?」
「・・・。」
「優斗ミリアちゃん可哀想だよ。」
「・・・。」
「・・・。」(大人げなかったか。)
「・・・分かった、ユートに明日私が正しいって証拠出してあげる!」
「今じゃ駄目なのか?」
「言ったでしょ、私はまだ教わってる最中なの、この事について詳しく先生に聞いてくるから!」
首を洗って待ってなさい!という勢いでミリアは部屋へと駆け込んだ。
「優斗・・・。」じー
「すまん・・・大人気なかったと思う。」
「だったら今すぐ謝って来たら。」
「いや、向こうは答えを提示すると言ってたし・・・問題ないだろ。」
「おーいお前達・・・。」
突然目の前に厳つい中年男が現れる、ミリアの親父さんだ。
「ミリアはあの状態になると絶対に部屋から出ないんだ・・・配給どうしてくれるんだ、夜は長いんだぞ?」
「「あ。」」
二人は自分達の愚かさに気づく、配給の仕事は忙しく、ミリア一人で全部こなしてたのかと思うと、正直頭が上がらない二人だった。