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1.婚約は突然に

※ 不定期連載です ※




「相談がある」 今日こそ、デートに誘う!


「ハイ、所長。なんでしょう」 頼まれていた新しい魔法陣作成の進捗について聞かれるのだろうか。提出期限を早めて欲しいという要望だったら困るな。今は少し……いや、かなり厳しいが、うーん何とかなる、か。


「婚約してくれ」 ……あっ。まずはデートに誘って距離をつめるつもりだったのに。先走ってしまったあぁぁぁぁぁ。


「いいですよ」 なんだ。そんなことか。


「え、いいのか」 え、いいの?! マジで???


「所長もお見合いの申し込みが多すぎて困っているんでしょう? 私も困ってたんですよ」 ナイス提案です、所長。


「そんなにお見合いがくるのか」 知らなかった。モテるんだ。


「世の中、働きもしない息子ちゃんが可愛くて仕方がない馬鹿親が多すぎですよね」 ホント困る。困るったら困る。


「どういうことだ?」 働いていないのに、結婚するのか。え、していいの?


「息子ちゃんが働いてくれないからお金を稼げる妻をあてがおうってことなんじゃないですかねぇ」 知らんけど。


「なんだそれは」 そんな男との結婚なんて。お父さん、赦しませんヨ!


「別に、働いてお金を稼ぐまではいいんですけど、稼いで、家事して、子供しかも長男産んで親の介護までしろと言われても困るんですよねぇ」

「それは、無理があるだろう」

「ですよね」

「妊娠や育児は片手間でできるものではないはずだ。勿論、仕事もだが」


「妊娠中はどうするつもりなのか聞いことあるんですけど、『妊娠したら仕事を辞めて、その職場を息子ちゃんに譲ってくれたらいい』だそうですよ」


「そいつも魔法師なのか?」 誰だろう。国家魔法師の資格を持っていて無職の者などいるだろうか。難関資格だぞ。有資格者は民間でも引く手数多だろうに。


「家族なんだから資格証明書くらい貸してもらえる筈だそうだす」


 ……。


「…………冗談、だよな」 魔術師協会を何だと思っているんだ。


「本気でしたね」 お年寄りだと、所詮女でも勤められる場所だって認識の人、結構いるんですよねぇ。


「馬鹿なのか」 馬鹿なんだな。


「たぶん?」 馬鹿というより、情報の更新ができないって感じかも。


「ん? 親の介護というのはどういうことだ。お相手だって、まだ30代そこそこだろう?」 歳が行ってからできた息子なのか。だから溺愛して変なことを口走っているのかもしれないな。


「介護の話があった息子ちゃんは50代でしたねぇ」 あれ、まだ40代だったかな。覚えてないや。


「アイシャくん。君、まだ27歳だよな」 もしや後妻としてなのか。許さん。


「女性の年齢を堂々とばらすとか。デリカシーないですね、所長」 むぅ。


「す、すまん」 そうか。壁に貼ってある国家魔法師の免状に書いてあるとしても、口にしては駄目だな。


「平民なら十分行き遅れの年齢ですからねぇ。『それでもまだ子供が産める年齢だから許してやる』だそうですよ」 お前の息子ちゃんの方がずっと適齢期すぎてんだろうがって言ってやりたかった。いや、今からでも言えばいいのかしら。


「そんな失礼なことをいう男の言うことなど、気にかける価値はない」 全部忘れて私の妻に。うわーうわー、式は一年後かな。教会に寄進積んで早めて貰おうかな。


「言っていたのは男性の親御さんですね。お相手とは一言も口を利いてないです」 ホント、無駄な時間だった(遠い目)


「それ、結婚相手として難ありすぎじゃないか」 結婚するつもりあるのか、それ。


「ですから、所長からの協約のお申し出は大変ありがたいです」 ホント。助かる。


「きょう、やく?」 共役、共訳、今日約(束)、……?


「貴族令嬢としてだって完全に行き遅れですから。『貰ってくれる相手がいるだけありがたい』って言って、親も防波堤になってくれなくて。困っていたので助かります」 残業がんばります。


「世の中、狂ってる」 (眼鏡を外して眉間を押さえる)……押さえろ。怒鳴るにしても相手が違う。アイシャは、被害者だ。


「ですよね。ですから、所長と協約を結んで婚約できるのは嬉しいです」


「私との婚約は、嬉しいか」 よかった。何か間違えてる気がしなくもないが、喜んで受け入れて貰えて嬉しいな。


「協約相手として選んでいただけて光栄です」


「そっちかぁ」


笑顔で礼を告げたアイシャに、アイシャ以外の部署にいる全員が同時に同じ声をあげたので、アイシャと所長二人揃って、身体が跳ねた。


吃驚しすぎて、二人は顔を見合わせ笑い合う。

空気がほわっと柔らかくなったところで、所長はありったけの勇気をふり絞った。


「そ、それでは、週末、一緒に食事でもどうだりょう」 やばい。最後の最後で声が裏返っちゃった。


「今夜では如何でしょう。早めに細かい協定条件を出し合った方が合理的です」 なんだか飲みたい気分だし。ワインボトルでいっちゃおうかな。


早めに、のところまで聞いて上昇した心が、続きで叩き落とされて、「ぐぬぅ」と変な声が出た。今度も、彼女以外の全員だ。


「ソウダネ」 それでも婚約はできるのだからと、所長は心の涙を拭った。




この世界は、平民だと16歳から婚姻が可能です。

貴族籍にある者は、学園の卒業が義務付けられているので18歳以上からの婚姻が許されていますが、

高等教育を受けることも多いので大体22歳以降に婚姻を結ぶことが多いです。



******


二人が結婚するまでは書きたいです( ´ ▽ ` )ノ


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― 新着の感想 ―
喜楽先生こんばんわ。新連載ありがとうございます。 すごい、読者には内心がまるわかりですね!二人同時に心の声が聞けるなんて、面白いです。すれ違いっぷりが楽しみですー。(これ今話だけだったらごめんなさい)…
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