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ミックスジュース  作者: 天笠唐衣


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第8話 少しだけ信じてみる

「ただいま」

 私が凪と電話した後、母がパートから帰って来た。近くの飲食店で夕方まで働いている。

 

「今日は何作るの?」と私。

「寒いから鍋でも作ろうかと」

「何鍋?」

「普通の寄せ鍋。他の鍋が良かった?」

「ううん。別に」

 私は夕飯の支度をいつも手伝っている。

 

 その時、スマホが鳴った。知らない番号なのでスルーした。

 たまに変な番号からよくかかってくる。そういうのは、怪しい勧誘か、詐欺電話と相場が決まっていた。


「材料切るよ」

「じゃ、お願い。着替えてくる」

 母がいなくなると、スマホの通知音が鳴った。見ると留守電が来ていた。

 (仕事の依頼じゃないよな……?)

 再生してみた。

  

 聞き慣れない女性の声だった。


『佐藤優斗の妻です。またあとでかけ直します』

 

「優斗……えっ!?」

 思わず声に出てしまう。


「どうしたの?」

 母が戻って来た。

「ごめん。急な仕事の依頼きてた。電話してくる」

 私は階段を踏み外しそうになったが、二階の自分の部屋に急いだ。


 ――優斗の妻? 結婚してるの? ……まさか。それとも、妹とかが別れさせようとして?

 

 私は深呼吸して息を整えると、さっきの電話番号に電話をかけた。

 

「もしもし、水野奈々です」

『佐藤絵里です。《なな》さんですね?』

「はい」

『佐藤優斗の妻です。優斗から奈々さんのことは聞いています』

「ほ……本当なんですか? 結婚……て」

 

 ――絵里は奈々が浮気相手だと、確信した。 

『ええ。別れたいと言っています』

「本当に――?」

 大地と美桜が喧嘩を始めた。

『あーん!』『ママー! 美桜がー』

「子供がいるの?」

『息子と娘がいます』

 絵里は、美桜を抱っこした。

『大地、ごめん。もう少し待って』


 私はスマホを握る手の力が抜け、スマホを落とした。慌てて拾う。

 

「ごめんなさい。……それは本当なの?」

『何度も言ってますが、本当です。遊びだったと言ってます。なので、今後会わないでください』

「優斗が……そう言ったの?」

 私は信じられず、聞き返した。

 

『もちろん、そうです。では、よろしくお願いします』

 そう言うと、電話は切れた。

 

 ――まじで? どうして? なんで黙ってたの? 優斗……


 私は、裏切られたというより、信じられていなかった気がして、悲しくなった。

 

 (直接聞かないと……)


 私は優斗に電話をかけた。


 なかなか出なかったが、やっと出た。

「優斗?」

『奈々……』

「今どこにいるの?」

『駅の近くのバーにいる』

 優斗の声は、元気がなかった。

 

「今から行くわ」

『スターライトってとこ』

「わかった」

 親には仕事の話をしに行くと、嘘をついてバーに向かった。


 ◇


 店に入ると、優斗はカウンターで一人で飲んでいた。

 私は隣に座る。ノンアルコールビールを頼んだ。

「……絵里さんから電話が来たよ」

 優斗はこっちを向いて驚いた顔をした。

「色々言ってただろ」

 優斗はグラスを傾けながら続けた。

「絵里とは別れようと思ってるんだ」

 私は、次の言葉を飲み込んだ。


「優斗はどうしたいの?」

 私が聞くと、優斗は私の頭に頭をコツンとした。

「奈々と一緒になりたい」

 (やっぱり、絵里さんの言ってたことと違う……)

 

「絵里さんは、別れると言っているの?」

「いや、まだ……」

「そっか」


 私の前にノンアルコールビールが置かれた。

 (やっぱり、一緒に飲む気になれない……)

 

 私はそれを優斗の前に移動させた。

「私とは……奥さんと別れてからだね」

「奈々……」

「じゃあ、またね」

 私はそう言って、バーを後にした。

 (一つくらい……誠意を見せてもらっても良いよね)


 ――後から聞いた話によると、その日優斗はベロベロに酔っ払って帰ったらしかった。

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