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みじかい小説

みじかい小説 / 032 / モーニング

掲載日:2025/10/01

「アイスコーヒーひとつ、無糖で」


今日も俺はいつもの喫茶店でアイスコーヒーを頼む。

暦は10月になったとはいえ、家から喫茶店までの道のりを歩くと、軽く汗ばむ陽気だ。

「モーニングセットはおつけいたしますか?」

「いや、いい」

朝食は家で軽く食べてきたので、いつも断ることにしている。

俺は入り口近くの専用コーナーから適当な新聞を取ってきて、自分の席で広げた。

今日は何か目新しいニュースでもあるだろうか。

今時スマホもあるのだが、老眼のため、より目に優しい新聞に頼ってしまう。

しばらく新聞を読んでいると、隣のボックス席に男性3人組がやってきた。

和気あいあいとした雰囲気で、高校生以来の友人がそのまま定年を迎えたような仲の良さだった。

俺にもああいった友人がいたらなぁ、と思うが、いないのだから仕方がない。

3人の声を背中で聞きながら、俺は再び新聞に目を落とした。


家に帰ると妻がベランダで布団を干していた。

「あら、おかえりなさい。いつものとこ?」

妻が尋ねる。

「そう、いつものとこ」

と俺は答える。

この年になると夫婦の会話も減ってきて、話題はいつも同じものになってしまう。

そういえば、もうすぐ妻の誕生日だ。

何か特別なことがしたいが、妻は一体何に喜んでくれるだろう。

そう思い、妻の背中に「誕生日、何が欲しい?」と率直に尋ねてみた。

すると「何もいらわないわよ。あなたと過ごせれば」という声が聞こえた。

そう言われると少々照れ臭いが、そうは言っても何かプレゼントを渡したい。

「じゃあ、一緒にいつもの喫茶店に行くか」

と、俺はなんとなく思いついて、そう口にしていた。


誕生日の朝、俺と妻は喫茶店のボックス席にいた。

「アイスコーヒー二つ、無糖で」

二人とも家から歩いてきて息があがっていた。

「それから、モーニングもお願いします」

俺はそう言うと、妻と目を合せ、にかっと笑った。


※この小説は、youtubeショート動画でもお楽しみいただけます。

 以下のurlをご利用ください。

 https://youtube.com/shorts/vrJoIzoLNuI

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