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悪役令嬢、断罪されたので男になりました!?   作者: 雨水卯月


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8/62

5-2.悪役令嬢、運命に出会う


「…ん……ぅん………うん?」


ルドは自分の寝言で目を覚ます。目を擦ると、目の前に黒い何かがいる。それを抱え込んで横たわっていた。


「えっ!?はっ?…な、に!?」


ルドが飛び起きると、男はのそりと起き上がった。


「あの…なんで?」

「お前がそのまま寝てしまったから、一緒に寝た。」


この人には常識とかないのかな?心配だなーと思いつつ、ルドは素直に謝った。


「えっと…ごめんなさい」

「謝ることはない。悪くなかった。」


何が…とは聞けない。なんだかイケナイ領域に手を出してしまいそうで。


「でも、ごめんなさい。オレ、触っちゃって…」


腕を捲って皮膚を見せる。以前、両親に見せた時より酷くなっている。皮膚、というより鱗のように隆起した部分と、ぐじゅぐじゅと膿んだ部分が混在している。基本的には患部に触れなければ感染しないはずだが、それでもだ。


「サムターンの呪いにかかっているのに…」

「知っている。」

「え?」


知っていて、ルドの手を拒まなかったのか。正気の沙汰ではない。ルドは顔面蒼白になって、アギトを見返した。アギトは何のことはないように、自分の首元を緩めた。鎖骨のした辺りの皮膚を見せ、言った。


「あ…!それ!!」


ルドは思わず、手を伸ばした。伸ばして、気づく。触れてはいけない。

アギトがルドの引き返した手を握って、鎖骨に導く。ルドが力いっぱい拒否しても、びくともしなかった。


「ちょっと!」


抗議しても、手は離されない。


「大丈夫だ。触れてもうつらない。」


ルドが力を抜く。アギトの鎖骨の下あたりはごつごつとしていたが、乾いていた。ルドとは違う。しかし、同じ病の跡。

「これって…!?」

「ああ、完治している。治す方法も知っている。」

「ほ、本当?…治るの?」


ルドは震える手で、アギトの皮膚を撫でた。


――治る!やった!!治るんだ!!


なでなでと皮膚に触れている内に、気づく。こんなに人と触れ合うことなどなかった。しかも、いつのまにかアギトに抱き込まれるような形になっている。ルドは赤くなって、アギトの胸を押した。


「ごめん、離して」

「何故?」


アギトは心底不思議そうに聞いてきた。


「オレ、男だけど」

「見ればわかる」

「昨日会ったばっかりだよね?」

「そうだな」

「え、そっちの人?」

「そっちとは?」


埒が明かない。ルドは、「はあー」と盛大なため息をついた。諦めよう。なんかこの人は変だ。でも、初対面で触れたり、抱き着いたり、自分だって変だった。諦めよう。


「コレ、どうしたら治るの?」


アギトはやっとルドを下ろし、片づけを始めた。


「ついてこい。」

説明はしてくれないらしい。ルドはアギトの半歩後ろを歩いた。


一人、と二人は随分違う。同じ荒野、同じ太陽、同じ風、そして得体のしれない男と一緒なのに、ルドは心が浮き立つのを感じた。一歩一歩が軽い。そういえば、昨日はしっかり眠れた。不眠は精神的ものも重なっていたのかもしれない。


奇妙な旅は3日3晩続いた。

夜は男に抱きこまれて眠った。最初は拒否していたものの、何故か男の肌に触れると熱を持った皮膚の痛みが和らぐのだ。


「鎮静作用がある」

「完治した人の肌に?あの噂って本当だったんだ」

「噂?」

「完治した人が薬として売られてるって」


「そうだな」と男が答える。その瞳はどこか遠くを見ていて、それ以上聞いてくれるなと言っているようだった。ルドは、一つの答えを見つけたような気がした。男は自分を薬として売る気なのではないだろうか。しかし、何故かそれを尋ねる気になれなかった。



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