15-3.悪役令嬢、運命に抗う
大理石の床にコツン、コツンと足音が響く。
誰かがこちらへ向かっている。
ルドはアギトを振り返り、頷く。
カツン、と足音が止まる。
青の王国の宰相、ユリウス・アーデルハイドだ。
青の髪と眼鏡の冷たい印象はそのままに、
しかし隠し切れない疲労で顔色は真っ白だった。
背後から襲い掛かり羽交い絞めにする。
何の抵抗もなく、ユリウスは捕えられた。
「聖女の所まで連れていけ」
濁った瞳の中に、人の意思を感じ取る。
(抵抗しない?魅了が切れている?)
ルドは油断なく、ユリウスの首に切っ先を向ける。
「西の塔だ…案内する…アレを倒してくれ…」
「何?」
「聖女は救国の使者ではなかった…あれはバケモノだ…あんな…あんなモノに私は…」
ユリウスはブツブツと呟いて、ウッと嗚咽を漏らした。
「お、おい…」
演技には見えず、ルドは思わず顔を覗き込んだ。
その顔は、半分以上がサムターンの呪いで覆われていた。
青い瞳が後悔に揺れている。
「これを…もしかしたら効果があるかも」
持っていた紅玉を渡す。白の魔王に魅了を解呪するために貰ったものだが、赤の王国での一件で、死霊が入っていると判明したアレだ。
アギトはサムターンの呪いは媒体があれば、解呪出来ると言っていた。
すると、紅玉の中の赤黒い塊が動き出す。
スルスルとユリウスの呪いを吸って、辺りに白い霧を吐き出した。
「こ、これは…っ!」
虚ろな目に光が差す。
「それ、貴方にあげるから、他の人にも使ってあげて」
すると、城の向こう側から兵士が走ってくる。
「閣下、朗報です!金の王国よりサムターンの呪いの治療方法が開示されました!これで民を、王国を救えます!」
兵士はよく通る声で、ユリウスに告げた。
ユリウスがその言葉に、ピクリと動く。
「オレたち、行くね」
ルドとアギトはユリウスを残し、西の塔へと向かった。
もう時間がない。サムターンの呪いの治癒方法が聖女に知られる前に、
倒さなくては。
王城の広間を抜けて、中庭を通り
西側へと向かう。
昼間だというのにおどろおどろしい雰囲気が漂う暗い林を抜けると
そこに塔が見えた。
「あそこだ!」
ルドは魔法を放つ。
塔の壁を壊し、中の階段を駆け上がる。
塔の中はぼろぼろだった。しかし老朽化というよりは、
最近何かの衝撃を受けて壊された、と言う感じがした。
「聖女エリス!!」
「ああ……アンタなの。――琉瑠」




