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悪役令嬢、断罪されたので男になりました!?   作者: 雨水卯月


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46/62

15-2.悪役令嬢、運命に抗う

翌朝、朝食の席で兄が珍しく顔を出した。

アギトが帰ってきたことを知らされたのだろう。


「つまり…聖女はサムターンの呪いを解呪出来てない可能性があり、治療方法の情報開示より前に青の王国に潜入する必要がある、ということか?」

「関所と王都は大規模魔法が制限されている。転移魔法は使えない」


朝食を取りながら、アギトからの話を聞き、オルフェウスは考え込む。


「移動に関しては、方法がないこともない…」

「ホントに?魔法を使わずに速く移動出来る夢みたいな方法があるんですかっ!?」


兄は少し嫌そうな顔をして、頷いた。

そして、窓から空を指さして、言った。


「運び屋を呼ぶ」

「はこびや?」




***


「わぁ!すごい!!兄さまを初めて尊敬しました!」

「俺はその言葉に驚きを隠せない」


兄はとある伝手から、空を飛ぶ生き物を呼んだ。


「お前か?オルフェウスというのは」


空に浮かぶ “虚鯨(きょげい)”の上に乗っているのは、

長い外套をまとい、砂に焼けた顔をした肌の浅黒い男だった。

男が兄に名前を尋ねる。どうやら知り合いではないらしい。


(どういう伝手なんだろ…?それにしてもなんて綺麗な生き物…!)


ルドはうっとりと虚鯨(きょげい)を見つめる。

巨大な鯨の骨格を思わせる巨体に、

半透明の鉱煙と黒曜石が埋め込まれたような肌は光を受け、キラキラと輝く。

胴体は舟のように湾曲しており、平らな背甲の上には絨毯がのっている。


「運び(こいつ)なら、魔法障壁に阻まれることなく、光の速さで青の王国まで運んでくれる。追跡も不可能だ。」


ルドはいそいそと虚鯨(きょげい)に乗り込む。


「ドゥルガンの運び屋、アマシュだ。こいつはマルドゥーン。」


アマシュと名乗った虚鯨(きょげい)の操縦士がルドを指差す。

名乗れという事だろう。


「オレはルド。あっちはアギトだ」

「そうか。オルフェウス、お前も来い。飛ぶぞ」

「は?」


アマシュはオルフェウスの首根っこを掴んで、

猫のように虚鯨の背に放り投げた。


「俺は運搬の必要はないっ!降ろせっ!!」


兄は叫ぶが、虚鯨はそのまま空高く飛翔し、

「オオーン」と不思議な声でひと鳴きすると

あっという間に空と空の狭間に入った。


(え…?非戦闘員(にいさま)も一緒って!どうすんの!?)



虚鯨は白い光の帯の中を、まるで泳ぐように滑っていった。

背中の絨毯に縫い付けられた綱を握るルドは、尾から放たれる虹色の雲を目で追った。

風はない。だが、胸の奥に不思議な圧迫感が伝わってくる。光の層をくぐるときの“間”だ。


「わあ――すごい! 空を飛んでるのに、風がないよ!」

「正確には『空隙からすき』だ。地と空の境界にある層を泳いでいる。虚鯨は空隙を泳ぐ生き物だ。」


運び屋のアマシュが淡々と説明する。

彼の声は砂漠の風のように冷たく、余計な感情がない。


「お、落ちる…」

「マルドゥーンは荷物を落とさない」


オルフェウスは膝を抱え、震えた声で言う。

アマシュが無表情で言い返す。


「アマシュ、なんで、兄さま…オルフェウスを連れてきたの?」

「俺はオルフェウスを運べと言われた。契約通り、オルフェウスを運んでいる」

「お、俺は荷物じゃない…」

「じゃあ、落とすかもな」


アマシュの意地悪い言葉にオルフェウスが一層震える。


「あの…兄さまは連れ帰って欲しいんだけど」

「帰りについては契約していない。俺たちは別の仕事がある。別便を頼むんだな」


運び屋はにべもなく言った。


「そ、そんな…死ぬ…きっと俺はこのまま死ぬんだ…」

「兄さま、気を確かに…!めちゃくちゃ足手纏いだけど、守るよ!」

「い、妹がひどい…!」

「弟だよ!」



虚鯨は魔法障壁をものともせず、

契約通り、王城の深部まで送り届けてくれた。

ルド達は、古い塔の屋根に降り立つ。


「こ、こんな高い所に置いていくなっ…ひ、ひぇえ!!死ぬっ」

「兄さま、うるさい。」


ルドとアギトは、周囲を探る。見たところ、見張りの兵は居ない。

いや、全くと言っていいほど、人の気配を感じない。


「おかしいな…見張りの兵も居ないし」

「周囲に人は居ないようだ。降りてみるか?」

「へっ!ここから降りる?む、むりだ……」


アギトがオルフェウスの背をとん、と押す。


「ぎゃああぁあ!」


悲鳴を上げて、失神した兄を

アギトが荷物のように脇に抱えた。


「お前たち本当に血がつながった兄弟か?」

「兄さまは父さまに似て、運動神経が切れてるんだ。頭は良いけど。オレは母方の伯父に似て、運動は得意だけど、勉強は出来なかった」


妃教育でどれだけ教師から、ため息をつかれたことか。

戦えることは妃教育では何の評価もされなかった。

ルドは浮遊魔法でふわりと塔の上から降りる。

アギトは器用に片手と足を使い、勢いを相殺しながら降りてくる。


「この辺りに閉じ込めておいた方が安全だ」と、アギトの言うまま、兄を倉庫に押し込む。

兄ささま、ごめんなさい。と心の中で謝っておく。


「行こう」


城の異様な静けさの中、二人は城の中へと駆けていった。


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