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悪役令嬢、断罪されたので男になりました!?   作者: 雨水卯月


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44/62

幕間

黒衣の男は、荒れ果てた王都を見下ろした。


寒さと飢え、そして感染する呪いによって人々の心は(すさ)み、

街には浮浪者が溢れ、盗みや暴行が昼夜を問わず横行している。

道端には凍え死んだ子どもの亡骸が放置され、誰も埋葬する余裕はない。

やがて雪が積もり、その死体さえも白く覆い隠していく。


一部の暴徒と化した民衆は、松明を掲げ王城へ押し寄せていた。


(王城の魔力障壁はもって一か月、というところか)


いや、それより前に民は飢えと寒さで死に絶えるだろう。

国内の領地も同じ有様だ。

貴族は門扉を閉ざし、外で農夫たちが飢えてゆく。

青の王国は、滅亡寸前だった。


アギトは継承した古い記憶を呼び起こす。

千年経っても人は変わらない。

争い、憎み、殺し合う。


ふと、ルドのことを思い出す。


(何故、あいつだけが違う――)


この世界でたった一つ、アギトが大切に思う魂。

アギトにもその理由が分からなかった。

ただ、ひと目見て、美しいと思った。

異質なまでに強く澄んだ輝き――おそらく聖女の魂と対極を成すもの。


世界は拮抗する。

強きものが生まれれば、それに比肩するものが現れる。

長寿のエルフに対し、人間は短命ゆえの生命力をもって挑み、

神聖力が覇権を握れば、必ず呪力が対抗する。

そして、力を持ちすぎた聖女に対し、ルドがこの世に生まれ落ちた。


(それが世界の法則ならば――聖女を倒すのは、ルドでなければならない)


王城は何十もの魔力障壁に包まれ、内側の様子を覗くことは出来ない。

だが、障壁の奥から時折、苦悶の呻き声と血のように赤黒い光が漏れた。


(――まだ生きている。だが、長くは持つまい)


その時、胸裏に浮かんだのは、やはりルドの顔だった。


(世界が選んだなら、あいつしか終わらせられない)


アギトは王城を一瞥し、踵を返した。

雪を踏む足取りは、静かに、しかし決然としていた。


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