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悪役令嬢、断罪されたので男になりました!?   作者: 雨水卯月


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32/62

12-1.悪役令嬢、帰還する※R15

ことん、と紅玉を机の上に置く。

セシルがまじまじとそれを上から眺めた。


「これはまた…すごい魔力の塊ですね。」


今、ルドたちは神聖国のセシルの元を訪れていた。

重厚な石造りの神殿は、天井が高く、陽光を受けて七色に煌めくステンドグラスが壁を染めている。

けれど荘厳なその輝きとは裏腹に、窓の外では風が荒れ、厚い雲が空を覆っていた。


「何か分かりますか?」

「おそらく…対象者に触れれば、発動する解呪の魔法です。しかも持続型の…」


さすがエルフ、博識!とルドは内心感心した。

だが、セシルは紅玉をしげしげと物珍しそうに見つめたまま動かない。

遠くで鳴る雷鳴が、微かに床を震わせる。


「触れたら発動するんだ。便利だなー」


(魔王さま、ぶっきらぼうだったけど、意外と親切じゃん!)


そんなセシルを横目に眉を顰めているアギトを振り返る。


(まだご機嫌ナナメ…)


セシルを頼ろう、と言ったルドにアギトは最後まで難色を示した。

神殿の荘厳な静けさとは対照的に、窓の外では突風が木々を揺さぶり、遠くで鐘の音が不安を煽る。

人々の心を覆う情勢の影――それが、目の前の紅玉とどこか重なるように思えた。


(そんな嫌い?)


セシルが特に何かしたとも思えないが、アギトは徹底的にセシルを嫌っているようだ。


(困ったなぁ…唯一の仲間なのに)


白の魔王のダリウスを仲間に勘定する勇気はないため、

今のところ協力者はセシルだけなのだ。


***


ルドはクッションを抱え、アギトを睨んだ。

神殿にも客室はあったが、耳がキンキンするとアギトが抗議した。

ルド達は仕方なく、近くの宿を取った。その一室でルドはふてくされていた。


「もー!なんで仲良く出来ないの!?」

「エルフと?そもそも神官と呪術師とは元から仲が悪い」


神聖力と呪力は反発し合うものらしい。


「それにしたって…」

「個人としても相性というものはあるだろう」

「そんな言い方…」


ルドが情けない顔で見つめると、考えるようにアギトが言った。


「ルドの為に、最低限の付き合いはしよう。」

「ほんと!?」

「ご褒美をくれるなら」


と、アギトは笑顔で両手を広げた。

全力で喜んだルドは、なんだ、としょげた。


「俺が頑張るのはお前の為だけだ。」

「えー…もっと、人と交流した方がいいよぉ」

「ははっ!呪術師相手にそんなことを言うヤツがいるとは」


そうだった。呪術師は厭世的な存在だった。

ゲーム内でもひたすら影に徹して生きる。


「うーん、ごめんね。らしくないことをアギトにさせてるのは理解した。」

「そうか」


ルドは大人しくアギトの胸に抱かれる。

アギトは頬にちゅっと軽いキスを落として、笑った。


(オレにはゲロ甘なのに…)


嬉しくもあり、歯がゆくもある。

こんなに優しいのに、誰にもその優しさが伝わらないなんて

もったいない。


「ごほうび、何がいい?」


アギトの首に腕を回し、首を傾げる。

にこりと笑うと、アギトの黒い瞳に自分が映る。


「お前が欲しい」

「ぴぇっ!」


ルドはおかしな声を出して、アギトから距離を取る。

とはいえ、抱き込まれていたので数センチ離れただけだった。

同じ黒い瞳に映っている自分を見ていられなくて、俯く。


「きちんと意味は理解しているようだな」

「…俺、経験ない。」

「ああ、前に聞いた。」

「やり方、しらない…。アギトは知ってんの?」

「やったことはないが、知識はある」

「っ!なんで?」

「さあ?」


アギトは薄く笑って答えた。呪術師という職業柄か、アギトには秘密が多い。

あまり自分のことも語らないし、感情も出さない。

自分ばかり振り回されているようで、なんだか気に食わない。


ルドはぷうと頬を膨らませて抗議した。


「子ども扱いしてっ!」

「実際子どもだろう?いくつだ?」

「え?…16、いや17になったかな?」

「やはり子供だ」


アギトに笑われ、ルドはますます頬を膨らませた。


「アギトだってそんな変わんないじゃん!」

「俺?俺は28だが…」

「えっ!そんなに!?」


二十歳かそこらと思っていたルドは驚いた。


(十も違うんじゃ、オレが子供に見えるわけだ…)


「子供を誑かす、悪い大人の気分だ。」


そう言って、アギトはルドの頬をつぅっと撫でる。


「だが、待ってはやれん。お前の周りは羽虫が多すぎる」

「セシル様を虫に例えるのはどうかと思う…」


二人のくちびるが自然と重なる。

これが初めてじゃない――けれど、今日はどこか違っていた。


(……深い)


アギトの手が背を支え、逃げられないように抱き寄せる。

ただ触れるだけの口づけじゃなく、想いを確かめるように重ねてくる。


「んっ……」


息が詰まりそうになって、思わず押し返す。

それでも離さない。むしろ強く、ルドを包み込んでくる。


「……俺のものになれ」

「なっ……」


耳元で囁かれ、全身が熱くなる。

今まで優しくされていたとわかるような――縛りつけるみたいなキス


(こんなの……ずるい……)


アギトの腕が強くルドを抱き込む。

背にまわされた手に力がこもり、逃げ場をなくす。


「んっ……アギト……」


声を漏らすと、余計に深く口づけられる。

“もう遠慮はしない”と言わんばかりの激しさがあった。


(ちょっと……苦しい……でも……)


胸の奥が熱くなり、抗う気持ちよりも、応えたい想いの方が強くなる。

指先で服を掴み、必死にしがみついた。

やっと唇が離れたとき、熱のこもった声が耳元に落ちる。


「……俺はお前に甘い」

「……そんなの、知ってる」


頬を赤らめて言い返す。

けれど次の瞬間、アギトの黒い瞳に映る自分を見て、心臓が跳ねた。


「ルド、嫌だったら言え。今なら聞いてやる」

「……っ、ずるい……」


唇を重ね直しながら、ルドは観念したように瞳を閉じた。


「……ん、アギト……」


小さく漏れる声に、アギトは軽く笑った。


「やめるか?」

「……いや、やめないで……」


ルドがもじもじと答えると、アギトは微笑みながら、額にそっとキスを落とす。

とぷん、と水に落ちるような感覚だった。

上も下も分からなくて、ただただ、アギトの熱を感じた。

抱き合うだけより、もっと深く繋がることが出来るのだと知った。



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