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悪役令嬢、断罪されたので男になりました!?   作者: 雨水卯月


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25/62

10-2.悪役令嬢、救出劇に身を投じる

翌朝、ルドはアギトと一言も交わさず、宿を後にした。


「ルド…一人で行くなと言った」

「……いい、ついてくるな」


アギトは渋々ながらも後ろをついてきた。

ルドの機嫌は未だ直らず、むっつりと黙ったまま、重い空気を醸し出していた。


赤の王国を出国し、神聖国の転移門(ゲート)を経由すると、その日の内に青の王国の国境付近に辿り着いた。街道は閉鎖され、物々しい雰囲気が漂う。


青の王国は、最北に位置する為、他国と異なり、冬が厳しく、夏も涼しい。金の王国の貴族などは夏の避暑地として利用していた。そんな観光大国が、街道を封鎖している。


(何これ…戦争でも始めるつもり?)


一変した青の王国の様子に言い知れぬ不安が広がる。二人は日が落ちるまで待ち、夜陰に紛れ、青の王国へ侵入した。



***


王城の地下牢への侵入は慎重に行われた。アギトの呪術により気配を消し、ルドは鍵のかかった扉を目の前に止まった。


「セシル様!」


地下牢の奥深くで、セシルが鎖につながれ、頭を下げたまま牢に座っていた。

ルドは駆け寄ろうとするが、アギトが制止する。


「まずは兵士を眠らせる。少し待っていろ」

「……わかった」


アギトの呪術で扉の前の兵士を眠らせ、影に紛れ牢内へと忍び込む。

ルドはセシルの姿を見つけ、声を上げる。


「セシル様!」

「…ルドさ、ま…!…にげ…、わ、なです…」

「大丈夫!?」


セシルは何事かつぶやき、首を振った、そしてそのまま気を失う。ルドが駆け寄ったその瞬間、背後から冷たい声が響く。


「ふん…聖女殿の言った通り、か。」


振り返ると、青の王国の宰相、ユリウス・アーデルハイドが立っていた。青の髪と眼鏡のツンデレ枠は噂に違わぬ冷たい目をしていた。

鋭い視線は最初から敵意に満ち、容赦はない。


「まんまと罠に嵌ったな」

「罠…!?」


青の王国は魔導大国でもある。ユリウス自身も青の王国有数の魔導士だ。ルドが青の王国で魔法を徹底的に使わなかったのは、隠密行動をするためだった。


転移などの大掛かりな魔法は魔導士ならば、一発で感知する。王城には転移出来ないよう魔法の制限や、魔力感応式の時限爆弾のような物がゴロゴロしている。金の王国の王城でもそうなのだ。魔道大国の青の王国であれば、況やもっとすごい装置がたんまりあるはず。


しかし、待ち伏せは想定外だった。

――否、アギトの様子を見るに、彼は想定内だったのだろう。自分だけが、考え足らずだったのだ。


(反省は後!今は集中!)


ルドは魔法で鎖からセシルを開放する。キッとユリウスを睨むと、剣を抜き構えた。アギトもタガーを抜き、呪術で防御態勢を整える。見つかってしまったのだから、魔法を制限する必要もない。


ユリウスは冷笑する。


「すでに包囲されている。どう逃げる?」

「…あんた、悔しくないのか?」


苦し紛れの言葉だった。しかし、ピクとユリウスの眉が動く。


「たかだが15,6の小娘に良いように操られて…!悔しくないのか!」

「小娘とは聖女殿のことか…?」


ユリウスは「馬鹿馬鹿しい」と、断じたが、その動きが止まる。青い瞳が、ぐるりと回る。


(…何?もしかして揺さぶりが効いている?)


「聖女はこの国を乗っ取ろうとしている。お前は言いなりになって、それでいいのか?」


ルドは言葉を続けた。


(ユリウスは宰相として優秀だったはず。こんな状態の国を良しとするはずがない…!)


ルドの目の前で、ユリウスの身体が硬直する。すると、ユリウスの身体から光が漏れ、人形のように意思とは別の行動を示す。


「この男、聖女に操られているようだな…」


アギトの声が後ろから響く。振り返ろうとすると、ユリウスがギギギと首を回し、こちらへ近づく。


(ひっ!!ひぇえ!!こ、怖っ!!)


思い入れがないキャラではあるが、こんな人形みたいに操られているとさすがに同情してしまう。でもそれより怖いが勝つ!一刻も早く逃げたい!


「一旦、聖女からの干渉を切る!今のうちに逃げるぞ!」


アギトが声を掛けると、ユリウスの身体は糸が切れたように床に倒れこんだ。


ルドはセシルを抱え、地下牢の隙間から外へ逃れる。大勢の兵士が捕縛を試みるが、ルドの魔法で階段でドミノ倒しになった。ルド達は、その上を軽やかに魔法で飛び逃げる。


王城から高く飛びあがり、月を背にした。

夜風が頬を撫でる。もはや隠匿する必要もない。


――ルドは一気に神聖国まで転移した。


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