10-1.悪役令嬢、救出劇に身を投じる
「……あのエルフ、捕まったようだぞ」
アギトが面倒そうに言った。
「え!?セシル様が…?」
セシルの名前を出した途端、アギトは眉をしかめ、渋々といった感じに頷く。
「どういうこと!?ちゃんと説明して!」
ルドはアギトの服を掴んで、体を揺すった。
***
「精霊?」
ルドはきょとんとして、アギトの言葉を繰り返す。
「呪術師は精霊を使役する。精霊には陰と陽があって…」
「っと、これは今関係ないか」とアギトがつぶやく。
「ともかく、精霊にエルフを守るようにつけていた。そいつが戻ってきた」
「守ってないじゃん!?」
「精霊は報酬以上のことはしない」
「今回の報酬に見合った働きは、“守ったが敵に敵わなかった、と俺に報告する“、までだっただけだ。」
「ふうん?悪魔の契約と一緒だね」
「悪魔も精霊だ」
「え!?そうなの!?」
ルドはぴょんと飛び上がった。「じゃあ、オレも呪術師に…!?」と期待を膨らませる。しかし、「呪術が見えないお前には無理だ」とアギトに断じられ現実に引き戻される。
「セシル様がどこで、誰に掴まったかは分かる?」
「青の王国の騎士団に捕えられ、王城の地下に投獄されている。」
(青の王国は神聖国と友好国だったはず…もしかしてもう聖女に支配されている…?)
そこまで考えて、背筋がぞくりと冷えた。
嫌な想像を振り払うように、首を小さく降る。
「…解放は無理だが、新たに精霊を送って見張らせるくらいなら出来る」
「本当!?」
ルドは暗かった顔がぱっと輝く。
よかった――アギトは少なくとも、セシルを仲間だと思ってくれている。
しかし期待は、簡単に裏切られた。
「なんでっ!」
「効率の話だ。白の王国へ行くのが先だろう」
「セシル様が心配じゃないのっ!?」
「…」
「アギトっ!!」
一刻も早くセシルを救出したいルドと、効率優先で白の王国を目指すアギト――議論は平行線のまま、時間だけが虚しく過ぎていく。
「青の王国がどう動くか分からないんだから、セシル様の救出が先!人命第一!!」
「人命というなら、青の王国より、白の王国の方がはるかに脅威だ。」
「…アギトはっ…セシル様のことが嫌いだから、そう言ってるだけじゃないのっ!」
ルドは涙を溜めて、アギトを見つめる。
アギトは眉を寄せるだけで、答えない。
「…もういいっ!オレ一人で助けに行く」
「ルドっ…!」




