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悪役令嬢、断罪されたので男になりました!?   作者: 雨水卯月


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20/62

9―1.悪役令嬢、剣術大会で無双する

赤の王国に着いた瞬間、首都は昼間からお祭り騒ぎだった。

旗が風にはためき、屋台からは肉を焼く匂いが漂い、広場には人が溢れている。


「なんだろう、この人だかり……」


周囲から聞こえてきた言葉で理由がわかった。


――今日は年に一度の剣術大会だ。


しかも、一般部門の優勝者は、王国騎士レオン・ヴァレンタインと手合わせできる特典付きだ。会場に貼られた大きな告知には、堂々と彼の肖像画まで描かれている。


(……これ、イベントじゃない?)


脳裏にゲームの記憶がよぎる。もしそうなら、ここでレオンと接触する可能性が高い。このチャンスを逃すわけにはいかない、と胸を高鳴らせた瞬間


――広場の奥で大歓声が起きた。


「――聖女様だ!」


観客の誰かの叫びに、ルドの心臓が跳ねた。


「……え」


視線を向けた先、群衆の中に白いドレスが揺れていた。

明るい茶色の髪、聖光をまとったような微笑。

その姿を見た瞬間、背筋に冷たいものが走る。


(なんでここに……!?)


まさか赤の王国まで聖女が出張ってくるとは思わなかった。

一度の外遊で一気に複数の国を回る可能性を、完全に見落としていた。


(ど、どどどどどうしよう!まずい、まずいまずい――!!)


「聖女だな」

「……ソウデスネ」


横で聖女を見ているアギトの視線から、ルドは思わず目を逸らした。


「この国は飛ばして次に行こう」

「マダワカラナイジャナイ……」


隣のアギトが低く言った。

聖女を直視する瞳が冴え凍るようだった。ルドはひやりとしながら返事をし、ちらりと横目でアギトを見る。彼の表情は影になっていた。


聖女がいる危険回避というより、(レオン)に会わせたくないと考えているのでは、と勘繰ってしまう。


(……う、説得、できるかな?)


「ちなみにレオン・ヴァレンタインの性格は?」

「まっすぐで純真な人デス」

「…もう遅いんじゃないか?」


アギトの低い声に、ルドは即答した。


「ゴモットモ!」


だけど、諦めたらそこで試合終了ですよ、とZ世代を置き去りにして、脳裏で安西先生が囁く。

「先っちょだけ、ちょっとだけだから!」と、ルドはアギトを必死で説得し、なんとか剣術大会への登録を済ませた。


アギトは微妙な顔をしていた。


なぜだろう。


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