8-5.悪役令嬢、バグとなる
すばやく旅支度をすると、セシルは親交のある青の王国へ、ルドとアギトは赤の王国へと向かった。行き先を決める際にちょっと揉めた。
ルドはそれを思い出し、遠い目をする。――
「では、各国への警告を最優先し、私は青の王国へ、ルドは赤の王国へ、そしてアギトは白の王国へ――」
「断る」
アギトの声が即座に割り込んだ。
「……は?」
「俺は、ルドから離れない」
硬質な声は淡々としているのに、決意の強さが圧を伴って伝わってくる。セシルは一瞬だけ驚き、すぐに瞳を細めた。
「……ですが、それでは効率が悪すぎます。”一刻を争う”と言ったのは、どこのどちら様で?」
「知ったことか。ルドをひとりにする方が、よほど危険だ」
ぴり、と空気が弾けた。セシルは癒し系ワンコキャラだというのに、漫画の背景なら、ゴゴゴと効果音と炎が見えそうなくらい怒りをたたえている。
「お前への説明の時間が無駄だと言っただけだ」
「…ここは妥協して、3手に分かれるべきでは?」
「他のやつがどうなろうと知ったことか。聖女なんぞの魅了にやられる方が悪い」
「……(怒)」
この口喧嘩を止めるべき第三者であるルドは…
(アギトがめっちゃしゃべってる…!)
別のところに驚いていた。とはいえ、このままでは平行線だ。ルドは口を挟んだ。
「アギトぉ…」
(お願いすれば聞いてくれたり…?)
しなかった。アギトがプイッとそっぽを向いてしまう。
「はぁ…仕方ない。2手に別れましょう。」
ルドが言うと、アギトはルドの頭を抱え込んで、セシルにシャーっと怒った。
(猫か…)
ルドはどっとくる疲労感に項垂れた。――という事があり、出立前に要らない労力を使ってしまったルドたちはいそいそと神聖国の最外周に転移するための転移門をくぐった。
神聖国は転移門という、ワープするための魔道具がある。他の国にはない長い歴史と神聖力の研究の賜物だ。転移門は神殿ごとに設置されており、それによって神聖国内の移動は大幅に時短出来る。ルドたちは明日には神聖国を出て、赤の王国へ入れるだろう。




