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悪役令嬢、断罪されたので男になりました!?   作者: 雨水卯月


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17/62

8-3.悪役令嬢、バグとなる

意気揚々と封筒と便箋を買い込み、カフェで手紙、もとい報告書を書き始めた。隣でアギトが覗き込んでいるが、特に読まれて不都合はないので、放っておく。


----

拝啓 お父様へ


・当該の皮膚病は治療法を発見し、完治。安心されたし

・黒土に死海あり、確認されたし

・現在、黒土の呪術師が同行中。安全は確保済

・緑の神聖国に入国済み。引き続き神聖国にて情報収集予定

以上、報告まで。


ルド

----


「それは何だ?」


アギトが手紙を盗み見て、眉をしかめた。


「え?お父様への手紙だけど…?」

「お前の家族は仲が悪いのか?」

「普通かな?」

「その手紙、本当にそのまま出すのか?」

「うん。何か変?」


「親しみが足りない」と、アギトは顔を顰めた。


「いいよ。いろんな人を経由するし、必要最低限の方が漏洩した時のリスクが少ない。あんまりダラダラ書くのも苦手だし。」


ルドはいつもの明るい表情のまま、応えた。


「意外だ。きちんと考えているのだな」

「えー!何それ、酷い。」


ルドは笑いながら、抗議した。


「ちゃんと考えてるよ。家族に迷惑かけたくないから、手紙も直接は出さない。経由するルートをいくつか決めてあるんだ」

「そうか、俺が心配することはなかったな」


アギトはルドの頭を軽く撫でた。

そうか、黒土で家族へ手紙を書くと話をした時、眉を顰められたのは、心配されていたのか。わっかりにくい!とルドは微かに笑った。


(でも、嬉しい…)


くすぐったい気持ちにルドはほんのりと頬を染めた。




***

わぁ!と民衆から歓声が上がる。

白い鳩がパタパタと飛び去り、青い空と白い塔とのコントラストを引き立てる。その中心で聖女が手を振っている。


「な、なんで…」


聖女が緑の神聖国に、セシルの隣にいる。

ルドは絶望と共にその光景を見た。


確か“Colors(カラーズ)”では、同時攻略は不可能だったはず。最初に相手を選ぶと、自動的にその国の聖女見習いから始まる。そして攻略対象一人と向き合い、愛を深めていくゲームだ。ルドは薄れつつある記憶を掘り起こす。


(確かアギトを開放する前に、もう一人隠しキャラが居たはず…一回しかやってないから記憶が…)


その後、推しとなったアギトルートは何度もやったのに、全開放前の隠しキャラが思い出せない。


(聖女…そういえば、断罪の時になんか言ってたな…たしか、「ルド様ルート」…そうだ!!)



***


ルドは宿に帰って、自分の体をまじまじと見た。

銀の髪、菫色の瞳、カリスマの塊のような色合いと顔出ち。公爵家直系という立場。


何か思い出せそうな…何も思い出せなさそうな…


うーん、うーん、と夕食も気がそぞろになった。


ふと、深夜に記憶の蓋が開く。


(思い出した!!)


銀(隠しルート):ルド・フォン・ルクレツィア

金の王国、悪役令嬢ルドヴィカの存在しないif世界の公爵令息。銀の髪、菫色の瞳を持ち、そのカリスマ性でアレクシスに並び立つ金の国の公爵令息。

攻略難易度★★★★


(オレのこの姿、隠しキャラまんまじゃん!)


性格は兎も角として、ルドはif世界の“ルド・フォン・ルクレツィア“そのものだった。ルドルートは唯一アレクシスと天秤にかけ、三角関係を楽しむことも出来るルートだ。


「とすると…聖女はルドルート狙いだった可能性が濃いな…。道理で殺されそうになったわけだ…」


呪いをかけられた理由がやっと理解出来て、誰に言うともなく、ひとりごちる。

隣で眠っているアギトが、もぞもぞと動いた。


「どうした?」

「ごめん、起こした?」

「いい。昼間の聖女の歓迎パレードのせいか?」


アギトは寝転がったまま、ルドの前髪を優しく撫でる。


「うん…聖女は金の王国のアレクシス殿下を狙ってたはずなんだけど。神聖国にも来るなんて…」

「王族とその婚約者の表敬訪問ならば、よくあることだろう。考えすぎじゃないか?」

「そうかなぁ?あの聖女がそんな無駄なことするかな?」


とは言え、聖女のことをルドは知らない。性格も、思考も、能力も未知数だ。


「とりあえず、もう一度エヴァンス神官長に会わなきゃ」


言うと、アギトが眉を顰めた。

露骨に嫌な顔をするアギトを見て、ルドは笑ってしまう。すると。前髪を引っ張られ、ちゅっ、と頬にキスをされた。


ルドは驚き、頬を手で覆った。


キスされた頬がほんのり熱を持っていた。


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