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悪役令嬢、断罪されたので男になりました!?   作者: 雨水卯月


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15/62

8-1.悪役令嬢、バグとなる

結局告白の返事は有耶無耶(うやむや)なまま、二人で旅に出ることになった。


「とりあえず、近くの国に行こうかなと思うんだけど」


ルドは当初、黒土で病の治療法を見つけ次第、隣国である赤の国に入る予定だった。

今、滞在している呪術師の集落が黒土のどのあたりに位置するかも分からないため、アギトに相談しているところだ。


「緑の神聖国か赤の王国が近いな。神聖国なら山もなく平坦な道だ。」

「神聖国かぁ…」


ルドは緑の神聖国について思い出す。確か攻略対象は――セシル・フォン・エヴァンス。神聖国の神官長にしてエルフ族の少年、年下ワンコ系、癒し担当。初対面から人懐っこく、攻略難易度は低めの初心者ルートだった。


(でも……元悪役令嬢のオレに対しては、どうなるか分からないんだよな……)


不安が胸をよぎる。

けれど、ここで立ち止まるわけにもいかない。


「うん。緑の神聖国に行こう!神聖国からなら、手紙も出せるし」


ルドは令嬢時代に緑の神聖国に訪問済みだ。勝手知ったるあの国なら、実家への手紙を出すことも出来るだろう。


言い切った瞬間、隣でアギトが小さく眉をひそめた。


「手紙……か。」

「うん。実家に。心配してるだろうから。」

「……」


それきりアギトは何も言わなかった。

ただ、無言のまま黒い瞳でルドを見つめてくる。

その視線に気づき、ルドの心臓がどくんと跳ねた。




***


緑の神聖国――。

国境を越えた瞬間、世界は一変した。


黒土の荒野から、目にしみるほど鮮やかな緑の大地へ。

神聖国は常春の「緑に祝福された国」と呼ばれるだけあって、青々とした緑の匂いがした。

柔らかな風が髪を撫で、遠くから聖歌のような歌声が響いてきた。


(うわぁ……前も思ったけど、ゲームのまんまだ……!)


脳裏に“Colors(カラーズ)”のOPムービーがよぎる。

ヒロインが初めて神聖国を訪れるシーンと、まるっきり同じ風景だ。

違うのは、ヒロインではなく自分がここに立っているということだけ。


「……ここが神聖国か。」


隣のアギトが低く呟いた。

その横顔は相変わらず冷ややかで、少しだけ目を細めている。


「うん! わぁ、あれ何回見てもすごいなぁ…白い神殿!」


小高い丘の上に建つ巨大な神殿。

柱には複雑な紋様が刻まれ、屋根のエメラルドの宝玉が太陽を反射して輝いている。

近づくにつれ、街行く人々の衣装や装飾品も華やかになり、胸が自然と高鳴った。


そして――神殿の前に、彼はいた。


緑がかった明るいブロンドの髪、湖面のようなエメラルドグリーンの瞳。

真っ白な神官服を身にまとい、笑顔で駆け寄ってくる。


「ルドヴィカ様……! お久しぶりです!」

「えっ……!?」


驚いて足を止めたルドに、少年は深々と頭を下げた。


「覚えておられますか?セシル・フォン・エヴァンスと申します!」


もちろん、覚えている。

Colors(カラーズ)”の神聖国ルート、エルフ族の癒し系年下ワンコ枠――セシル。


「えっと……エヴァンス神官長様…?」


恐る恐る呼ぶと、セシルは顔を上げ、ぱっと花が咲くように笑った。


「よかった、覚えててくださったんですね!」


太陽みたいな笑顔。そして、ためらいもなくルドの手を取る。


「以前お会いしたときより、ずっとお綺麗になられました……!」

「……!」


少年のような見た目をしていても、さすがエルフ、口が上手い。この世代の少年には真似できない自然な紳士的振る舞いと歯の浮くようなセリフに目を見張る。令嬢時代の必殺“貴方のことは何とも思ってないけど褒めてくれてありがとうスマイル”を出そう、とルドは笑みの形を作りかけた。


(あれ…?ちょっと待って…!!オレ、いま男じゃん!!)


ルドは自分の性別を忘れていた!


もう一度言おう


ルドは自分の性別を忘れていた!


(ってことは、悪役令嬢(ルドヴィカ)と勘違いされてる!?そんなことある!?)


「……手を離せ。」


背後から、低い声が落ちた。


「え?」


セシルがきょとんと振り返る。

アギトは表情を変えないまま、ルドの手をすっと取り返した。

そのまま背後に隠すように抱き寄せる。


「ルドヴィカとは誰だ。こいつは男だ。」


低い声が、拒絶にも似た圧を含んでいた。


「えっ……あ、す、すみません!知り合いに似ていたもので!!」


(どわー!!すみません、オレも一瞬自分の性別忘れてました!)


セシルは慌てて手を引っ込めた。

目の前では攻略対象と隠しキャラが無言で牽制している。乙女ゲームでもなかなか見られないド修羅場だ。しかし渦中の中心人物であるルドは


(コレ、「やめて!オレの為に争わないで!」って言うべき?かなぁ…)


などと呑気なことを考えていた。


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