表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第五幕:鈍に揺れる縁

狂気は自認を蝕んでゆく。

はたして混沌が本質であろうとは、理解してすらいなかった。

空には鈍色の雲がかかり、太陽はわずかに漏れる光でしか感じられなかった。

雨でも降りそうなものなのに、じっとりと湿気がまとわりつくだけで汗が肌から離れない。


「悠ちゃん。こっちにおいで」

「は〜い」


子供が母と覚しき人物に駆け寄り、抱きついた。

なにやら懐かしい感覚に襲われ、自然に笑みがこぼれる。


”◯はあそこには座れてない”


当然だけれどそう思った。徐々に地面にシミができ始める。


「あ、雨だ」


空を仰ぐと、透明な放射線が目に入った。


「痛っ」


じわりと雨も涙も含む露が頬を横切る。

目を開けると、肌色の液体が地面に広がっているのが見えた。それが私の体であると気づくのに時間はかからなかった。

シュワシュワとジュワジュワと体が溶けてゆく。

痛みはなく、むしろ液体が自身を流す感覚が妙に心地よい。

冠は甲高い音をたてて雨を反射し、巫女の衣装はこんな中でも一際輝いている。

衣装の端が肌色に染まっているのが見え、急いで捲し上げると網膜の端に黒い革靴が見えた。


「藍!」


背筋が逆立ち、急いで近くの茂みに逃げ込む。


「何してるんだ、早く祠へ向かえ」

「嫌。この子と遊んでる方が余程楽しいもの」

()()()?」


藤色の縁のスクリーンにはあの頃の風景が無断転載されている。

肩を強張らせ、フルフルと全身と空気を震わせている。


「楽しめるほど余裕なんかないだろう!」


父は髪に掴みかかる。

髪型と表情が歪み、雨音も強くなっていって霧で視界が埋まってゆく。

しかし、あの様相は脳裏に焼き直されたままだった。


”ゴチン”


いつもの、見覚えのある部屋にいた。

まだ、手が震えている。

カーテンを開けると、まだ外が薄暗く、まだ寝られる時間帯であるがどうにも眠気は表に出てこない。

とりとめもなく部屋を出ると、目の前の山はほんのり日に照らされ、ほんのりと僕の目を焼いた。


「ふぅ」


しばらく様子を眺めた後、部屋に戻ろうとすると、自分の隣に影が見えた。

文字通りの動揺を示しながら影は近づいてくる。しかし、近づくほど薄くなっていき、触れると思ったときには霧散してしまった。


「ん?」


代わりにというふうに、風が頬を撫でた。


”ジリリリリリィ”

ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ。次回はちゃんとするから。許して、切に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ