第三幕:ただ覚ゆるあずま
狂気とは妙に整合していた。
歪な正しさから離れるように、ただ舞っていたのだ。
「次、17番さん」
その後も続々と自己紹介は進んでいったが、まったく視線が定まらなかった。
張り紙もなにもない教室なのに、すべてを見切ることができなかったのだ。
「華堂悠里です。趣味は...」
何を話したのかは、よく覚えていない。
ただ、広がった水平に反射したあずま色だけが妙に目に焼き付いていた。
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「気をつけ〜、礼」
委員決めされた学級委員の声を皮切りに教室から人がなだれ、水平は大きくうねった。
だからだろうか、そこをゆっくりと抜けてきた彼はいやに不整合だった。
「君、朝にあったよね?悠里君だっけ?」
肩に触れた手は妙に暖かく、目に写った彼の顔は一切の無駄がなく、美しい笑顔だった。
「うん、そうだけど」
「あぁ、良かった。悠里君、一緒に帰らない?」
衝撃を覚えたけれど、答えはあまりに早かった。
「いいけど、どこ住みなの?」
「あぁ、俺はあの山のあたりさ」
指差す先には2つの山が見えた。白日に照らされ、街や自然の様々な境目がよく見えた。
「えぇ、どっちの?」
「左の方だよ」
「あぁ、憶紫山?」
強い光に細めた目の中に彼の末端が入り込んだ。
「へぇ、オクシサンっていうんだ。いい名前だねぇ」
わずかに笑顔が深まったように感じた。
「でも、僕の家とは反対側だなぁ」
「じゃあ、送ってくよ。せっかく友達になれたんだし」
”友達”という言葉に耳が赤く跳ねる。彼の笑顔が少し深まったように感じた。
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「紫苑はさ、どの辺から来たの?」
「ん?あぁ、この街の外さ。つまんない所だよ」
「この街も何もないけどねぇ」
彼は少し苦笑いしながら、眼の前を指さした。
「そんなことないさ。この街のあの桜、この坂の桜。とてもいいじゃないか」
彼の目はどこか遠いところを見ていた気がする。
「じゃあ、この辺で」
「また明日」
夕陽の桜花に照らされた彼は朝とは少し違って見えた。
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「やっぱり素晴らしい桜だなぁ」
移り変わる月夜に照らされ、わずかに色が濃くなったその樹木を見て俺はつぶやいた。
「でも、ちょっと歪んでるか」
そっと背を向けてあの山へ帰る。
「華堂くんかぁ」
わずかに心臓が跳ねる。
「いい1日だった」
やっと新話投稿までに1ヶ月を切ったぞ〜!(もう限界)
次回もお楽しみに!(彼は調子に乗っています)




