表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/182

第47話 ステータスカード

「ステータスカード? ステータスと聞くと、テレビゲームを連想してしまいますね」


「実際、RPGに出てくるステータスを思い浮かべてくれていい。それを可視化できるカードだ」


 サイズはキャッシュカードや免許証などと同じだ。


「さっそく試してみましょう」


 フィリアは持ってきていた針で自分の指を刺す。出てきた血のしずくを、ステータスカードの規定の位置に押し付ける。


 それからステータスカードを手に取り、自分の頭から腕、胴、足へと滑らせるように移動させていった。


「今の動作で、カードにわたくしの能力を読み取らせました。ご覧ください」


 フィリアがあらためてカードを置き、しばらくすると文字が赤く浮き上がってくる。


 体力(HP)最大体力(MHP) :5/85

 魔力(MP)最大魔力(MMP) :0/120

 筋力(STR)最大筋力(MSTR) :4/60

敏捷性(AGI)最大敏捷性(MAGI):5/90

抵抗力(DEF)最大抵抗力(MDEF):3/50


「この数字は……?」


「使用者の能力を数値化したものです」


 フィリア曰く、カードには魔力回路というものを刻んでいるのだそうだ。


 こちらの世界でいう電子回路の魔法版のようなもので、魔力回路に魔力を供給すると、組まれた回路通りに自動的に魔法を発動させる。


 おれが異世界(リンガブルーム)で活動していた時期にはなかった技術だ。


「このカードは、使用者の血と大気中の魔素(マナ)を反応させて発生させた微弱な魔力で起動しております。そして血液と身体全体を読み取らせ、どれだけ、そしてどのように魔素(マナ)を活用できる状態かを診断したのです」


「左側の数字が今の状態だ。魔素(マナ)のほとんどない迷宮(ダンジョン)外にいるから数値が低い。そして右側の最大値は、濃厚な魔素(マナ)に満ちた異世界(リンガブルーム)での能力値になる」


迷宮(ダンジョン)の第1階層ではまだ魔素(マナ)が薄いので、現在値に、最大値の数パーセントが加算される程度かと」


 おれたちの説明を受けて、丈二は興味深げにステータスカードを手に取り、まじまじと見つめた。


「……他の項目はわかりますが、この魔力というのは? このカードの起動にも魔力が使われているとのことですが……。魔力というと魔法のイメージなのですが」


「そのイメージで合ってるよ。異世界(リンガブルーム)には、魔法が存在する。こちらの世界でも、魔素(マナ)を活用できるようなれば、訓練次第で誰でも使えるようになる」


 ごくり、と丈二は息を呑んだ。驚きというより、好奇心の顔。


「ではやはりあの動画でグリフォンを撃ったのは魔法でしたか。訓練次第で誰でも、というと、それは例えば私でも?」


「充分に魔素(マナ)に慣れて……そうだな、このステータスカードの最大魔力(MMP)が10くらいあれば、第1階層でも初歩魔法くらいは使えるはずだ」


「それは……心が躍りますね。魔法には詠唱などは必要なのでしょうか?」


「詠唱は必要ありませんが、意識を集中するために短く掛け声を上げる方はいらっしゃいます」


「おれがそのタイプだ」


「では、どんな言葉でもいいのですね。それはいい。少年時代を思い出します。実家からノートを取り寄せなければ……」


「ノート?」


 丈二はハッとして、小さく咳払い。


「失礼。私的な話でした。ともかく、これで各冒険者の能力は即座に把握できるわけですね」


「そう。たぶん第1階層の魔素(マナ)じゃ、どこかで成長が頭打ちになる。そこまで育った冒険者なら、第2階層に挑戦してもいいはずだ」


階層(レベル)1、階層(レベル)2と言えそうですね。いい基準になります」


「そこで、だ。これはフィリアさんのアイディアなんだけど、冒険者たちの成長を促す意味も込めて、能力に応じて仕事を斡旋する制度を作ってみてはどうだろう?」


「いわゆる冒険者ギルド、ですか?」


 丈二はあくまで冷静だが、どこか楽しそうでもある。


 そんな彼の質問に、フィリアが返答する。


「はい。異世界(リンガブルーム)では、様々な依頼を冒険者ギルドに集約し、冒険者に斡旋しておりました。ランク制を採用しており、難易度Bのお仕事なら、B級以上の冒険者やパーティのみが受注できる……といったシステムになっております」


 ちなみに冒険者のランク制もおれの時代にはなかった。いいシステムだ。


「いいですね。今のところ、冒険者の方々は獲物を狩って稼いでばかりですが、本当はもっと色々な仕事をお願いしたかったのです。これなら頼みやすい」


「ついでに、実力以上のことをしようとして、引退や死亡する例を減らせる」


 丈二は上機嫌にうんうん、と頷く。


「面白くなりそうです。現行のやり方を、大きく見直しましょう。一条さんが提案してくださっていたパーティ制も、一緒に採用いたします」


「期待してるよ。法改正には時間がかかるだろうけど」


「いえ、それほど時間はかけません。今でもある程度は融通が利きますので。どうしても改正が必要なところは、試験運用とでも言っておけばいいのです。やっているうちに法律が追いつきますよ」


「思ったよりやり手なのかな、丈二さん?」


「いいえ、私より上の者たちこそ、あなたのご意見を尊重したがっているのですよ」


 そして丈二はにやりと笑った。


「まあ見ていてください。すぐにやってみせますから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ