ⅩⅧー3 十五歳と二匹のチーム
■十五歳と二匹のチーム
ヨヌが去った部屋では、レオンと彪吾もやってきて、ヨヌが話したことの分析がはじまった。もちろん、ヨヌがやたらと「友レオン」を語ったことはだれも口にしなかった。
ばあちゃんが言った。
「セイさんよ。月香草は、カトマールの貴重な薬草じゃなかったかの?」
「ほうよ。じゃが、ずっと昔に皇帝のご命令で、わしが天月に献上したのよ」
「ほう、献上か。天月草と月香草は近縁種と聞くが、ホントか?」
「そうじゃ。なんであんなに性質が違うようになったのかは、わしにもわからんがの」
「ふうむ。おもしろい話じゃの」
「どうやら、カトマールと天月では、月香草も違っておるようじゃ」
「ほう?」
「カトマールでは、群生地があちこちに広がるようなことはないでの」
「そうじゃったか」
「月香草はいたって繊細な植物での。なかなか合う土地はない。カトマールでもごく限られた谷にしか生息せんでの。皇宮でも栽培しておったが、同じ土を維持するのがたいへんじゃった」
「ほう……天月は土が変わっておるのかの? まあ、いずれにせよ、天月草が手に入るのであれば、薬を作っておいたほうがええじゃろの。どうじゃ? セイさん」
「そうじゃな。櫻館には初代銀麗月の薬草書もある。その手順通りに作れば危険はあるまい。ミヨさんも手伝ってくれるしの」
老女二人は、あははと顔を見合わせて笑った。
――セイさん? ミヨさん? 二人はいつのまにお友だちになったんだ?
リトが驚いていると、彪吾があっさりと言ってのけた。
「天月草の薬を作る施設を作りましょう。子どもたちに万一危険があってはならない。ガレージそばの倉庫を改装することにしよう。レオン、どう?」
「いいですね」と同意した上で、レオンが言った。
「症状の出方に違いがあった原因はもう少し考える必要がありそうですね。自然資料館の薬草について改めて調べる必要があると思います」
みなが頷いた。
「天月宗主の治療用の薬品とやらも十分に怪しいの。まともな天月草ではなく、わざと粗悪品を出していたのかもしれんな」とばあちゃんが言い、これにもみなが頷いた。
「天月宗主の病気をレオンは治そうとしたんだ。でも、だれかがそれを邪魔したってことだよね?」と彪吾が言うと、「そうでしょうな」とセイが頷いた。
彪吾はうれしそうにレオンを見た。レオンが人殺しだなんて、誰にも言わせたくない!
サキが言った。
「ホスピタルにも、御典医周辺にも、資料館にも、いろいろと妙なヤツが入り込んでおるようだ。文化資料館の古参の天月士というのが怪しいな。資料保管庫にフリーで入れるということは、例の木片にもアクセスできるだろう」
「わたしのほうでも調べてみますが、その者の普段の行動を監視するには何らか別の方法が必要です」と、カイが言った。サキがつぶやいた。
「うーん。アイリの金ゴキがあればなあ。だが、子どもたちを巻き込みたくはないしな」
突然、ドアが開いた。
「あたしがやるよ!」モモを抱いたアイリだ。
「オレもやる!」キキを抱いたオロだ。
「わたしだって!」風子までが鼻を膨らませている。そのそばにシュウとリクも頷きながら立っていた。後ろの方で、キュロスがオロオロし、そばでミオ姉が笑いを堪えている。
「おい! おまえら、盗み聞きしてたのか!」
サキが怒鳴った。
「そっちがこそこそするのが悪いんだよ。妙なヤツがクマ先生に会いに来たと思ったら、ばあちゃんも一緒にみんなで話し込んじゃってさ。おかしいと思うのが普通だろ?」
アイリの剣幕に、サキがぐっと詰まった。いちいち正論だ。
カイが言った。
「わかりました。では、アイリさんたちにも協力してもらいましょう。ですが、くれぐれもお願いします。危険なことに勝手に首を突っ込まないでください。必ず、わたしか、サキ先生の許可を得てください。いいですね?」
アイリは不服そうだったが、しぶしぶ頷いた。
「では、みなさんのとりまとめは風子さんにお願いします。風子さんをリーダーにして、集団で行動してください。何か分かったら必ずサキ先生に伝え、必要な指示を仰いでください。それができない場合には、わたしのほうでみなさんの自由な行動を制限せざるをえなくなります」
カイの目は怖いほどだった。美形の迫力はすさまじい。しかも、子どもたちを物理的に外出禁止にする力を持っている。
――カイは、アイツらのことを本気で心配してるんだな。リトは感激した。
レオンは、カイがリクを含む子どもたちの安全を最優先していることに感謝した。「異能の媒介者」たる風子がいれば、子どもたちはまとまるだろう。
風子が元気よく言った。
「わかりましたっ! ねっ、みんな、いいよねっ? 十五歳と二匹のチームだよっ!」
シュウが喜んで頷き、リクが無表情に頷き、アイリとオロがしぶしぶ頷いた。古城の件と言い、彪吾拉致事件のときと言い、いざというとき、風子が一番頼りになることは身に染みてわかっている。
――さすが、銀麗月。指導力と決断力がハンパじゃない!
感動しているリトの手に、カイがそっと自分の手を重ねた。
――リト、これから忙しくなる。子どもたちを守らねばならない。手伝ってくれるか?
――もちろん!




