表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月下の神殿――銀麗月と聖香華  作者: 藍 游
第十七章 〈蓮華〉の秘密
90/274

ⅩⅦー4 エピローグ――リトの焦り 

――カトマール離宮。


 ばあちゃんとサキとリトをパドアが丁寧に出迎えた。しばらく前に訪れたばかりだ。

 今日は、副大統領夫人アユがじきじきに三人を招待したのだ。ヤオが送り迎えを担当した。


 通された客間は、この前とは違う立派な部屋だった。アユとセイ、そしてレオンとカイが上品な老夫婦のそばに立っていた。

 ばあちゃんの姿を認めた老夫婦は二人に笑顔を向けた。


 アユが言った。

「あまり日も置かないにもかかわらず、遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます」

「いや。わしらに遠慮は無用じゃ。して、これほどのお方がお集まりとは、よほど重大なご相談であろうの」

「はい。とても大事なご相談でございます。まずは、こちらのお方をご紹介させていただきます。わたしの祖父母にあたります」

「ほう、それはそれは……ということは、カトマールの元皇帝ご夫妻であられるか?」


 ばあちゃんが言うと、老婦人が優雅な笑みを漏らした。

「ほほほ。〈九孤の賢女〉どのとうかがっておりまする。お見知りおきくだされ。わたしはファウン。仰せの通り、元皇帝です。こちらは夫のシュン。そして、すでにご承知の通り、わたしの女官長セイと、孫のリリア、そしてレオン。こちらはリリアの息子カイです」

「ほう。セイどのとアユどの、そしてレオンどののことは察しておりましたが、カイどのまでカトマール皇室にゆかりの方とは思いも寄りませなんだ」


 リトは、ばあちゃんの横で固まっていた。顔が真っ青だ。


――遠すぎる……!


 カイは銀麗月。それだけでも遠いのに、カトマール皇子だなんて……。とてつもなく遠い存在だ。異能があるとばあちゃんに言われて浮かれていた自分が情けない。

 これからどうしたらいいんだろう……。


 ばあちゃんたちは老夫婦と何事かを相談している。リトにはすべてがうわのそらだ。

 端然としたカイのたたずまいがうっすらと涙に曇って見えなくなる。歯を食いしばっても、足を踏ん張っても、体の震えが止まらない。


――このまま、カイがアカデメイアを出て行ってしまったらどうしよう……。二度と会えなくなったらどうしよう……。


 リトの手が震えているのをカイはじっと見ていた。


 帰り際、カイがリトのそばにすっと寄り添った。手に触れ、思念で伝える。

(リト。驚いただろうが、わたしを避けないでほしい。キミは、わたしのただ一人の友だ)


 その瞬間、リトの顔がうそのように輝いた。

(うん、わかった! キミはオレのいちばん大事な友だちだもん! ずっと一緒にいるよ! キミのためならなんでもする!)


 ほとんど愛を告白したに等しいことにも気づかず、ニコニコ顔に変わった弟の隣で、サキは、うれしいやら、呆れるやら。


――リトの単純ぶりは知っていたが、ここまで分かりやすいと、ほとんどバカに見えるな……。


 リトは、カイのひと言でまるで地獄から天国に行ったみたいに表情が変わった。


――わかってんのか? こんな大事な秘密を明かすということは、これからの苦難に協力してほしいという意味なんだぞ。

 ま、リトなら頼まれずとも、カイに尽くすだろうけどな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ