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月下の神殿――銀麗月と聖香華  作者: 藍 游
第十六章 香華族の秘宝
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ⅩⅥー8 三つの秘宝

■香華族の秘宝

 アカデメイアからセイを送り届けたヤオが呼び出された。ヤオはセイから一部始終を教えられ、ファウンとシュンに平伏し、リリアとレオンに泣いて詫びた。


 ファウンが言った。

「そなたが身を呈したおかげで二人の孫は生き延びることができた。負い目に感じることはない。これからも励め」


 ヤオは身を震わせて、ファウン皇帝夫妻とリリア、レオンに忠誠を誓った。そして、あるものを取り出した。

「アリア皇帝陛下から皇子さまに直接お渡しするよう命じられた品でございます。どうぞお納めください」

 神獣の絵が刻まれたペンダントであった。ファウンが告げた。


「それは、わたしがアリアに授けた香華族の秘宝――聖香華のみが開けることができる。レオンよ、その神獣の浮き彫りの上に右手の人差し指をかざせ」

 レオンが指をかざすと、ペンダントが開いた。煌めくような銀色の光があふれ出た。


 ファウンが言葉を継いだ。

「香華族の秘宝には三つのものがある。〈月の華〉、〈月の夢〉そして〈月の音〉だ。そのペンダントは〈月の夢〉。銀色の光は、時空を超える。見るがいい」


 ファウンが指さす方を見ると、銀色の光の中にぼうっと何かが浮かび上がっていた。


「彪吾!」


 思わずレオンがその名を呼んだ。光の中で、少年の彪吾が小さな琵琶を片手に動物たちの前で音楽を奏でていた。


 ファウンが息を呑んだ。

「これは……まさか!」

 シュンが思わずファウンを支えた。

「ファウン、いかがした?」


 ファウンの頬は上気していた。喜びがあふれている。

「〈月の夢〉は、それを持つ者の強い記憶を光のなかに写し取る。レオン、その少年がそなたの思い人か?」

 レオンは驚きながらも頷いた。

「さようです。これは、わたしたちがある孤島で再会したときの記憶です。彪吾が、島の古い神殿で見つけた琵琶を用い、わたしが作った曲を奏でている光景です」


 ファウンはわずかに震えながら言った。

「島の古い神殿と申したな。その神殿は、そのペンダントに刻まれた神獣に守られていたのではないか?」

「仰せの通りにございます」

「間違いない……わたしもじかに見たことがある。皇帝だった頃、予期せぬ空間移動でそこに運ばれたのだ」

「陛下……」


「そなたの思い人はその琵琶を奏でることができるのだな?」

「はい。その音色は森の動物たちの傷を癒やし、わたしの魂にも染み渡るいともやさしい音色でございました」


 ファウンは、居並ぶ皆を見渡した。

「秘宝〈月の音〉だ!」


「久しく行方がわからなかった秘宝だ。〈月の珠〉と〈月の夢〉は皇室で大切に守られてきた。だが、〈月の音〉は、どこにあるのか、長く不明だったのだ」


「神獣に守られる神殿に安置された琵琶――その琵琶こそが〈月の音〉。音を出せるのは、聖香華とその伴侶のみ――そなたとその者はルナの神の祝福を受けたことになる」

 レオンは驚きながら、ファウンの説明に聞き入った。


「三つの秘宝が揃った時に、香華族がもつルナ神聖石盤を読み解くことができると伝わる。レオンよ、〈月の音〉がある島がどこかわかるか?」

「島は、ウル舎村の領有する島です。高度なバイオセンターが設営されておりました。しかしながら、海霧で守られているらしく、場所を特定することはできません」

「では、カイと二人で探すのだ。天月にもルナ神聖石盤があるはず。それぞれの一族が保有する石盤には独自の呪術がかけられておると聞く。だが、香華族の秘宝はなにがしかの役に立つだろう」

「はい」

 レオンとカイは並び立ってファウンに一礼した。


 ファウンは、ヤオに向き合った。

「ヤオよ。そなたの忠義はまことに篤い」と褒めたたえ、ヤオをファウン夫妻の護衛長に任じて言った。

「いましばらくは、レオンを守るのだ」

 ヤオは、平伏して、皇帝の命令を受けた。


 シュンは新しい部屋のそばにそびえる木の葉の上に白いカエルを置いた。カエルは喜んで籠から飛び出し、葉っぱの上に止まった。


「けろん、けろろん」

 これからもずっとシュンとファウンのそばにいたいのだろう。


 降り始めた雨の中で、白いカエルは踊るように跳び跳ね続けた。

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