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月下の神殿――銀麗月と聖香華  作者: 藍 游
第十六章 香華族の秘宝
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ⅩⅥー7 世代を繋ぐもの

■新しいチーム

 ファウン皇帝はレオンに尋ねた。

「そなたたちは櫻館にてルナ神話と異能に関するチームをつくっていると聞いたが、まことか?」


「仰せのとおりです。櫻館には異能をもつ十五歳の子どもたちが数人集まっており、その子たちを訓練することも目指しております」

「どのような者たちだ?」

「一人はわたしの娘リク。この子は、幼い時に異能を封じられ、表情も感情も損なわれています。しかし、再生の力と雨を呼ぶ力を持っているようです。もう一人はミグル族と龍族の間に生まれた子で、時間を止めることができます」

「再生の力を持つ子と時を止める子か……いずれも最高度の異能だな」


「さようです。ほかにも、「火の谷」出身の天才科学者、ウル舎村の御曹司がおります。これら二人の異能についてはまだよくわかりません。また舎村御曹司の双子の兄は、どうやら「森の王」と思われます」

「「森の王」だと? おまけに、「火の谷」と舎村か……その子たちも異能を持っていても不思議ではないな」


 カイが言った。

「加えて申し上げてもよろしいですか?」

「よい。申せ」

「九孤族出身でわたしと同い年の青年は、弦月の力をもっているようです。九孤族宗主に頼まれて、彼の異能のコントロール方法を探しております」


「弦月だと? うーむ。していかなる力だ?」

「時空を歪める力をもち、驚異的な聴力と視力をもちます。身体能力もすぐれ、銀麗月たるわたしと闘うことすらできます」


「なるほど……そこまでの力を持つのは、たしかに弦月だな」

「そして、九孤族宗主によりますと、子どもたちの中に「異能の媒介者」がいるそうです」

「「異能の媒介者」? 聞いたことがないの」


「九孤族の古書に伝わる存在で、その者がいると異能者は自らの心身を損なうことなく異能を発揮できます。リクさんもまたその子がそばにいるときのみ異能を発揮するのです」

「ほう……」


 ファウンは少し思案して、居並ぶ者に一つの提案をした。

「櫻館のチームと並んで、新しいチームを作りたいが、どうじゃ?」

「新しいチーム?」

「そうだ。香華族の血を引くわれわれのチームだ。櫻館の若いチームとは違って、老人中心のチームになるがな」


 セイが尋ねた。

「陛下、目的は、天志教団と天明会への対策でございますな?」

「さすがセイだな。言わずともわかるとは。これらはいずれもカトマール発祥の巨大組織。香華族とカトマール帝国を壊滅させた組織だ。子どもたちの手には負えまい。いや、将来がある子どもたちをいたずらに関わらせてはならぬ」

「はい」

「われわれが片をつけるべきではないか? のう、シュン」

「そうだな。わたしもそう思う。レオンとカイが二つのチームの間に立って、子どもたちを守るのが最善だろう。そういうことだな? ファウン」

「さすが、わが夫だ」

 二人は、手をつないで笑み交わした。


■世代を繋ぐもの

「さて、リリア、これを受け取るがいい」

 ファウンはリリアに小さなペンダントを渡した。

「そこには、カトマール皇室の財宝が隠された場所が示されておる。そなたの母が財宝を隠し、死ぬ前にそなたに渡して欲しいとわたしに託したものだ。これをいかように使おうとすべてそなたに任せる。新しいチームの資金は心配せずとも良い。わたしがあるところに保管しておる金銀で十分まかなえるからな」

 リリアは恭しくそれを受け取った。


 ファウンはさらに続けた。

「そして、レオンよ。この時計はわたしから聖香華たるそなたに与えるものだ。香華族の禁書を含むさまざまな記録を保管する秘密の場所を示した地図が仕込まれておる。子どもたちの異能の統制にも役立つだろう。カイよ、そなたにも禁書の利用を認める」


 レオンとカイが並んでお辞儀した。

「陛下、ありがとうございます」

 ファウンは二人に告げた。

「禁書庫には、香華族が持つルナ神聖石盤が保管されておる。この戦いに必要であろう。神聖石盤の扱いの難しさは承知しておろうが、そなたたちならば可能であろう。自由に利用してよい」

 レオンとカイは互いの顔を見合わせた。最も重要な手がかりが与えられた。


 ファウンとシュンは満面の笑顔になった。

「シュン。これまで生きてきてよかったな」

「そうだな。キミの願いがやっと身を結びそうだ」


 新しい香華チームの本拠地は、この離宮とすることが決まった。パドアは、ファウンとシュンのための部屋を設けた。セイはしばらく櫻館で擬薬等の調査をしたのち、こちらに移ることになった。

 ファウンが結界を張り、老夫婦を中心とするチームメンバーの存在は外部に隠された。

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