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なんばー4 『普通の』悪い人


あんなに瞳を潤ませた美少女に頼みごとをされたのなら、断れないのが男のサガ――なんて、ラブコメの主人公のような思考で私は動いたりしないのだが、彼女のマネージャーとして、これくらいの軽いお願いなら何とか叶えてあげないといけないので、結局私はラブコメの主人公と同じく話を断ることはできないのだ。


ということで、今、



「え~、みんな! マネちゃん配信、OKしてくれました! ほんともう、心優しいマネちゃんがみんなのためを思ってきてくれたんだから、みんな、ちゃんと感謝してよね! ……ホントごめん。それじゃあマネちゃん挨拶どうぞ!」


「 ……はい、チロメさんのマネージャーをさせてもらっています、この場ではマネちゃんと申させていただきます、どうも皆さんこんにちは!」



――私は配信に出ていた。


視聴者に媚びるため、いつもより数段階トーンを上げた声を出している。

流石に本名を言うわけにもいかないので、適当に名前はチロメがいつも私のことを話すときに使っている『マネちゃん』で行かせてもらうことにした。


チロメがこそこそと私に謝ってくるので笑顔で暗に「大丈夫」と伝える。


『こんにちは!』

『こんにちは!』

『声可愛い!!』

『ふぉおおおおお!!』

『ふぁっ!? なんだこの萌え声は!?』

『これは女の子』

『アニメ声やな!』

『こんにちは!』

『チロメよりかわいい』

『かわいいよぉおお!! 結婚してくれ!!』



私の登場とともに、コメントがものすごい勢いで流れだす。

意識して萌え声を発した甲斐はあったようだ。これで少しでも話題性が出て、チロメの今後の活動の足しにでもなってくれればいいのだけれど。



『声だけ?』

『顔は?』

『顔も欲しいです声だけじゃなくて絶対かわいいでしょ見たい』



「えー、視聴者のみんな! マネちゃん、流石に顔出すのはNGだって話だから声オンリーです! 声だけでしっかり満足してね!」



配信に出る――ただし『声だけ』である。


何が起こるか分からないネットに、流石に顔は出したくない。

しかし全く出ないのも状況的にいかがなものだと思ったので、声だけで出させてもらう形にしてもらった。


なので現在の配信風景は中々にシュール。

チロメは普通に顔を出して喋らないといけないからカメラを切るわけにもいかないので、壁際にあった配信パソコンと机を部屋の真ん中に移動させ、私はパソコンを挟んでチロメの対面に座っていた。


学校とかの二者面談みたいなイメージ。



「チロメさん、私は何をしたらいいですか? すみませんが、チロメさんみたいに豊かなトークなどはできないのですけど……」


「うーん、視聴者のみんなはマネちゃんに何かしてほしいことある?」


『スリーサイズ』

『チロメとの出会い』

『何人家族?』

『好きな食べ物』

『好きな男のタイプは?』

『結婚してくれ』

『この後の配信全部マネちゃん一人でやってほしい』



私に何をしてほしいか、色々とコメント欄に流れてくる。

今現在1500人ほどの人間が私の声を聴いているのだと思うと少々落ち着かない気分だ。



「あんまり長いのとか、スリーサイズやら変な質問はマネちゃんに迷惑掛かるから止めようね。軽い質問とかにする?」


「チロメさんがそうおっしゃるなら私は構いませんよ」


『すぐ行っちゃうんか』

『もうちょっとなんかしようぜゲームとか』

『この配信ずっといるんじゃないの』

『結婚してくれ』

『なんか恋愛相談のってよ』

『この後の配信全部マネちゃんがやって』

『もうちょっとなんかしてよ』


「だからごめんだけど時間かかるのはマネちゃんに迷惑掛かっちゃうから……けどみんな結構マネちゃんのこと気にいっちゃった感じ? もうちょっとなんかしてほしい? うーん……」



チロメがうんうんと頭を悩ませている。

私はコメントを見て少し考えて、チロメにこう提案することにした。



「チロメさんチロメさん」


「ん? 何マネちゃん」


「どれか一つ、チロメさんと一緒に一通お便り読むのはどうでしょうか? 視聴者さんの一部の方もそう望んでくださっているようですし、時間的にもちょうどいいんじゃないです?」



『いいんじゃない』

『読んでみてほしい』

『マネちゃん声良いな、あんたも配信やればいいのに』

『変なお題マネちゃんは引かないでほしい』

『おとしどころとしては妥当では?』



視聴者さん達も納得してくれているようだ。

後はチロメがOKかだが、だそこは言うまでもないみたいだ。



「ただ、私も変なことを口走って嫌な思いを視聴者さん方にさせてしまうかもしれないので、別の案の方がいいかもしれませんけど……」


「いいよ! 全然大丈夫! むしろ、私からマネちゃんにおねがいしたいくらいだよ!」



これで決まりだ。

明るく返してくれたチロメに私もニコリと笑みを返す。

コメント欄を見ても反応は上々なので大丈夫そうだ。



この状況。

『無難なセリフをそれっぽく言い、善良なキャラクターを演じること』が目指すところだろう。



頭の中で目標を定める。

先程述べた通り、どこまでも私は打算的に行かしてもらおう。悪いことしてるわけじゃないし。



「それじゃあ早速行っちゃおっか。マネちゃんと私の特別バージョン! レッツスタート!」



――そうこう考えている間に、チロメがお便りをパソコンに表示した。



チロメのパソコンを挟んで反対側に私はいるため、私はパソコンを見ることはできない。それを察してチロメがお便りを音読してくれる。



「『私は20歳の大学生です。ここではアリスって名乗らせてください。

チロちゃんの配信いつも楽しく見させてもらってます。

今日は彼氏のことで相談に来ました。彼とは付き合って4年目くらいです。2年目くらいから同棲していて価値観も大変合う人なので、私はこの人が運命の人なんじゃないかと、そう思ってしまうくらいには彼のことが好きでした』



おー! アリスさんお便りありがとうございます! こ、これは久しぶりに普通の恋愛相談ができそうじゃない? さっきまではちょっと大人な相談が多かったけど!」


相談者の年齢が20代だ。

多分今日のチロメの配信内で初。私ずっとこの子の配信聞いてたから知ってる。


見るに、分かりやすくチロメが興奮していた。

白い肌を紅潮させて瞳を輝かせている。

彼女も中高年の人生相談が嫌なわけではないのだろうけど、やっぱり華の女子高生、同年代の若い子からの恋愛相談の方が好みなのだろう。



しかし、まあ、うん。

――本当にかわいい恋愛相談なのかは、まだ分からないと思うけれど。


『はいフラグ』『20歳はブラフだな』『これはトラップ』『第一関門抜けただけやで』と、コメント欄も言いたい放題言っている。



「『そんな彼にはカメラの趣味がありました。

なんでも、もう死んでしまいましたが彼がとても慕っていた祖父が小さい頃にカメラを教えてくれたそうで、今でも彼はカメラや写真が好きなそうです。

私とのデートの時でもデジカメを持ち歩くくらいカメラが好きで、私も写真は好きでしたので、そんな彼の趣味のことは大変好ましく思っていました』



……いい感じじゃない!? いい感じじゃないこれ!? ここまですごくいい流れだよ! 写真良いよね、私も好き! なんだかすごく平和そうな話じゃない?」



チロメの期待がさらに上がる!

続けて、




「『しかし先月私は不注意によって、彼の祖父の形見のカメラを壊してしまいました』」




チロメが口を開けたまま固まった。




「『彼が祖父からカメラを教わるときに譲り受けたらしい、今日までずっと使い続けていた大切なカメラを私は壊してしまいました。

それもデート中に、一緒に歩いていた時に躓いて転んでしまった際、彼の首に掛かっていたデジカメのネックストラップを引っ張ってしまい、地面に思いきり叩きつけてしまいました。古いものだったのもあり、直る見込みはないそうです。


私は彼の大切なものを、壊してしまいました。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


サッと青ざめて、涙が出るくらい後悔しました。

彼にはたくさんその場で謝って、彼は当然ショックを受けていたようでしたが、私のことを慮ってか「気にしないでくれ、仕方のないことだったんだ」と気丈にふるまい伝えてくれました。あんな顔をさせたくなかった。私は私を許せません。


以後、それ以来、今日までずっと彼とは気まずい状態です。

彼は私に何か話しかけようとしてくれますが、私の顔を見ると、悲しそうな顔をして口をふさいでしまいます。


私のせいなのですが、今後彼とどうやっていけばいいのか分かりません。

最近は特に現状を変えようとしても空回りばかりしている気がします。


一緒にいる時もずっと彼は悲しそうな顔をしていて、私といても楽しくないように思えます。

彼のことはまだ好きですが、彼のことを考えると私は彼と別れたほうがいいのでしょうか。


長話になってしまってすみません、どうかチロメさんにご意見窺いたいです――』



……はい、分かりましたアリスさん。早速ですけど、できる限りのご相談をしていこうと思います……」




――案の定だった。


最初に期待させておいてこの顛末。

形見のカメラを壊してしまったと、中々難しい問題。恋愛云々と言うよりはハードな人間関係の修復に近いこの相談。


少なくとも甘酸っぱい青春ラブコメではないだろう。


コメント欄は『知ってた』の四文字で埋め尽くされていた。それにたくさん草も生えている。

何ともまあ報われない。チロメは人生相談から逃げられないらしい。


どれ、今のチロメはどんな表情をしているだろう。

そうふと思い、目の前のチロメの方を見る。


多分、ショックで魂の抜けたような表情をしているんじゃないか、と。

そう予想を立てながら――。




「…………」



しかし。

――チロメは目を大きく見開き、愕然とした表情でパソコンを見つめていた。




少し青ざめた表情でいつもの元気が出ていない。

恋愛相談じゃないことにショックを受けた、にしては、少々暗すぎる表情である。


顔を眺めても視線を合わせようとしてこない。下を向いている。

いつもはずっと目と目を合わせて会話をしている彼女が、だ。


……何があったのだろうか。

明らかにチロメはこの短期間で気分が落ち込んでいるように見える。


異常だ。

何かしらの原因がある。



「チロメさん、大丈夫ですか?」


「あ、う、うん。大丈夫だよ」



チロメが喋らないものだからコメント欄で『どうした?』『チロメちゃん具合悪い?』と心配の声が出始めたので声をかける。

するとチロメもこちらに戻ってきてくれたのか、慌てて返事を返してくれた。



「ちょっとボーっとしてた! ごめんねみんな! 昨日マネちゃんお家来るって話だったから夜中ずっと部屋の片づけしてたから寝不足なの。い、以後気を付けます!」



『寝不足か』

『マネちゃんに迷惑かけんなよ!』

『寝不足分かるわ俺もめっちゃ最近ぼーっとする』

『具合悪くないならよかった』

『ちゃんと配信しろよチロメ』

『しっかり寝なさい』



チロメが二パッと笑って視聴者に謝罪をする――明らかな作り笑顔で。

その表情は明確に少し引きつっていた。

チロメを茶化し始めているコメント欄を見るにおそらく視聴者は気付いてなさそうだ。


明るい雰囲気が形成されつつあるこの場。

チロメは何とか配信は明るい雰囲気で続行したいらしい。

なら、深く追求して場の雰囲気を壊すのも彼女のマネージャーとして良くない。彼女のことも心配だけど、ここは一旦スルーしよう。



「えっと、じゃあ気を取り直してアリスさんの恋愛相談していこっか! 今回はマネちゃんも同席だから、最初にマネちゃんから感想言ってみよう!」


「私からですか?」



人生相談のお時間である。

チロメに話を振られてしまった。


先程までチロメのことを考えていたけれど、今はとりあえず目の前の相談事にどう答えるかを考えなければいけないようだ。

目下の目標に頭を切り替える。

できるだけ耳触りが良くて、「チロメのマネージャーはいい子なんだな!」と思わせることができるようなセリフを考えなければいけない。



「そうですね……」と数秒うんうん考える中、そんなセリフを構築する。



「私はアリスさんが別れるのはまだ早んじゃないかな、と思います」


「マネちゃんはそう思う? その理由は?」


「アリスさんのお話を聞く限りお二人は長い間思いあってきたんですよね? カメラを壊した事実が消えないものだとしても、お二人が育んできた愛の過去もまた消えないものだと思います。ですので、すぐに別れる、と言うのは……すごく悲しいことだと思うからです」



――まあ、及第点はあるんじゃないだろうか。いい子ちゃんの回答。


心にもないことを心の底からの言葉のように私は語りながらそう思った。

多分「優しくて素敵なマネージャーさん」は十分演じれたはず。まあまあいい線行ってるんじゃない?



『おおおおおお!!』

『天使!』

『ええこと言うな!』

『2人そろって相談適正高いのな』

『結婚してくれ!! 天使よ!』



コメント欄の反応を見ても上々っぽい。



「マネちゃん意見ありがとうね! うん、すごくいい言葉だったよ! 私もあんなこと言えるようになりたいな――やっぱりマネちゃんはすごい!」


「私は思ったことをそのまま口に出しただけですよ。チロメさんの言葉の方が重みがあって素敵だと思います」



チロメも喜んでいるらしい。

私の空虚な言葉に感激を覚えているようだ。


というかこんなことでじきるようになるなよチロメ。

純粋なままでいてください。



「――私のターンも終わりましたし、今度はチロメさんの番じゃないですか?」


「そうだねマネちゃん、じゃあ私もやっていこうか」



私がそう長々とやっていても仕方がない。

ここはチロメの配信だ。

先程のセリフも短さは意識したつもりでいる。チロメにターンを譲ろう――私の浅い打算にまみれた言葉じゃなく、『本物』のセリフを聞いてシメにしようじゃないか。


まあ……チロメの精神状態が、少し不安ではあるが。

まあ、なんやかんやで明るく振舞ってはいるチロメだ。きっとうまくやってくれるだろう。



……大丈夫だよなね?



「私もアリスさんが彼氏さんと別れるのは、まだちょっと判断が早いんじゃないかな、と思います」



そうして私が不安がっているうちにチロメの相談が始まった。



「マネちゃんの言う通り、カメラが壊れちゃったのはお互いにとって辛い出来事だったと思いますけど、アリスさんたちの愛はまだまだ終わってないと思います。お互い愛し合ってるのなら、2人の思ってることを時間をかけて話し合えば、きっと元の関係に戻れるはずです」



チロメのいい感じの言葉。

やはり私の浅い意見の何倍も心がこもって聞こえる。

これが私と彼女の心の善性の差だろう。



「彼氏さんが悲しそうな顔をしていた、と言っていましたけど、多分それはあなたが思いつめた顔をしていたからだと思います。彼氏さんも話を聞いている限りだとあなたのことを思ってくれていそうですよ。ギクシャクしてるのはそういうすれ違いのようなものが起こっているからかもしれません……ま、まあ、想像に過ぎないところもあるんですけどね」



私の不安も杞憂だったんじゃないかというほどに順調に話が進んでいた。

コメント欄もいい感じに盛り上がっている。


このまま終わってくれれば――。

と、私は星に願っていたのだけれど。



「アリスさんは自分を責めすぎないといいと思います。確かにあなたは彼氏さんの大切なものを壊して()()()()()()()()()()()()()()()かもしれませんけど、その自責の念がまた――」



なんて話をチロメがしていた時、ふと、目の前にいた彼女と目が合った。

私としてはただ文字通りに目が合っただけ。なんてことのない、取るに足らないことだと思ったのだけれど。



チロメは私の顔を見て大きく目を見開いたかと思えば、「あ、」と声を漏らして、そのまま口を止めてしまった。



まるで何かに気付き、動揺し始めたかのような表情だった。

顔が少し青ざめている。大きな瞳は揺れていて唇は少し震えていた。



「……チロメさん、大丈夫ですか?」


「あ、う、うん。大丈夫。大丈夫だから……し、心配しなくていいよ」



そう言われて心配しない人間はいないだろうな。

そんな下手な作り笑いを浮かべられても安心できるわけがない。


というかこの子ホントに作り笑い下手だな。

顔が引きつっているのが尋常じゃないくらいわかりやすい。

私と真逆のタイプ。思ってることがすごく顔に出ちゃう人。



『チロちゃんホントに大丈夫?』

『休んでもいいぜ』

『体調悪い時は休みなよ』

『休日の朝っぱらからは疲れる』

『疲れてるときは食って寝る、それが一番』


「ほ、ホントに大丈夫だよ私」




そういえば、彼女は今朝から色々気分が落ち込んでいた。


私をベッドに引きづりこんだり帰らせるのを忘れたり、配信に出すことになったりと()()()()()()()()()()()()思うところがあったのだろう。

あなたのお父様が私に高い金払ってるんだから、むしろ馬車馬のごとく働かせてもいいところを。


……待てよ。



確か、相談事の内容もそんな感じだったじゃないか。

彼氏さんのカメラを壊して、彼氏さんが自分といるのが楽しくないんじゃないかと思った相談主。




『顔真っ青だぜ』

『マネちゃんに介抱してもらいな』

『今日は配信切って休んでほしい』

『大丈夫?』

『マネちゃんチロメのこと休ませて』


「あはは、大丈夫だから……」



『カレンダー』。


そう、あの子恥ずかしいカレンダー。

食事に誘う! だのなんだの書いてあったのを、そのまま私の見えるところに放置されていたカレンダー。


チロメの考えはなんだ?

簡単だ、分かりやすい。



私と仲良くなりたい。



相談主が彼氏との気まずい関係を解消したいように。

チロメはきっと、相談主の状況と自分の状況を対比して、あんな状態になったのだろう。そういえば先程言いかけていたことも、


『アリスさんは自分を責めすぎないといいと思います。確かにあなたは彼氏さんの大切なものを壊して()()()()()()()()()()()()()()()かもしれませんけど、その自責の念がまた――』


なんて感じだった。

途中で止まった。

多分それは、私に迷惑をかけてさらにテンパってまた迷惑をかけている自分のことを思い出して、言葉に出せなくなってしまったとかだろう。



だったら、私の言うべきことは何か。



私と仲良くなりたくて、でも私に迷惑をかけていて、それで気をもんでる、そんなチロメに、かけるべき、言葉は――。




「あなたがその人と一緒にいて楽しいと思っているのなら、きっとその人もまたあなたと一緒にいて楽しいと思っている。私はそう思いますよ?」




今この瞬間、視聴者含めてすべてのこの場にいる人間の意識が、私に向いた、気がした。


チロメが私の方を向く。

私もチロメを優しく見つめる。


優しく、いや。

優しいような表情で。



「悲しいのは何よりも、あなたが辛く思っていることです。カメラを壊されてしまったとしても、迷惑を掛けられてしまったとしても、結局一番嫌なのは、あなたが笑ってくれないことですよ。むしろ迷惑をかけてくれるくらいがいいものですよ、パートナーは」



二パッと私は笑った。

藍色のポニーテールをファサリと揺らす。


チロメの奇麗な黒い瞳を見つめる。

今度は見つめ返してくれた。

逸らされないし、揺れもしない。


憑き物は落ちたみたいだ。

私はもう一度、今度は声に出して「えへ」と笑い、



「すみません。アリスさんのお題、チロメさんが答えなかったので、代わりにもう一度答えてみちゃいました。ちょっとチロメさんみたいにお悩み相談するの憧れてたんですよね。話を遮ってしまったならすみません」


「あ――う、うん! 全然いいよ! ありがとね、マネちゃん……」


「体調の方はもう大丈夫ですか?」


「うん! もう元気! 本当に大丈夫だよ」



にこにことチロメが笑っている。

ニコニコと私も微笑み返した。


本当にもう大丈夫らしい。

チロメがにこにこしていて何よりである。

これで私のマネージャーとしての仕事も果たせただろう。高い給料もらってる、一割分くらいの仕事はしたんじゃないだろうか。



『おおおおおお!!』

『おおおおおおおおお!!』

『可愛い!!』

『心に響きました!』

『天使!! 天使!!』

『結婚してくれマジでマネちゃん』



私が達成感を味わっていると、コメント欄がぶわーっとすごい勢いで流れていた。見ると視聴者も配信開始よりそこそこ増えて2000人ほどになっている。

おお、知らん間に私はチロメの知名度上げと言うもう一つの仕事も達成していたらしい。


というかこれ、過去最高の視聴者数じゃないか?

具体的にどれくらいい結果になったのかは分からないけれど、とりあえず結果としては上々なのではなかろうか。



「――マ、マネちゃん!」


「な、なんですか?」



チロメに大きな声で話しかけられる。

若干上ずっていた高い声。

コメント欄を見ていたのもあってちょっとびっくりしてしまった。


チロメの顔が赤い。

耳まで真っ赤になっている。

興奮しているのだろうか。


何事か、と身構えていると。



「そ、その……え、と、あの……」


「……落ち着いてでいいですよ、ゆっくり話してください」


「――パ、パスタッ!!」



パスタ!?



「お、おいしいパスタのお店があるの! そ、その……良ければなんだけど、い、いつか食べに、いかない……? ふ、2人で!」



どうやらお食事のお誘いだったようだ。


勇気を振り絞って私を誘ったみたいだ。

柔らかな体はガチガチに固まってしまっている。


考える。

……これはまあ、仕事の範疇だろう。

飲み会みたいなもん。

チロメからしてどうなのかは置いといて、私はそう判断した。


ニッコリ笑う。



「いいですね! 近いうちにそのお店に一緒に食べに行きましょうか。誘ってくださりありがとうございます」



チロメがパアッと笑顔になった。

瞬間、



「ほ、ほんと!?」


「わっ!」



机のパソコンスレスレの所をバン、と叩きながら立ち上がった!



「ご、ごめん! 驚かせちゃった!?」


「大丈夫ですよチロメさん。ちょっとびっくりしちゃっただけです」



2人でちょっと見つめ合った後、クスクスと互いに笑う。


喜色満面と言った笑み。

見てるこっちも幸せな気分になる気がする。まあ気がするだけなんだけども。



何とも幸せな空気だった。

ここで終われば文句なしのエンディング。


しかしそれだけで終わらないのがこの女、月華チロメでもある。


彼女は不幸にも、()()()()()()()()()()勢いのまま話し出してしまう。



「え、えとねマネちゃん、そのお店なんだけど……」


「あ、チロメさん。お店の話なら待ってください」


「?」


「――ここ、()()()ですよ」



一瞬チロメは理解できなかったらしく、ぽかんと口を開けた。

しかしそれは一瞬のこと。

瞬間、



「え゛ッ!?」


『パ、パスタッ!!wwww』

『百合てぇてぇ』

『気付くのおせぇよwwwww』

『チロメちゃん見てるー?』

『バカwwww』

『このドジ!』



「み、みみみ、みんな――わッ!」



コメント欄に滅茶苦茶に煽られる。


そして流石チロメくおりてぃ。

どういう理屈か、コメントに動揺したのかチロメが後ずさると、その足の近くにはなんと充電コードがあったらしい。


ずる、とそのコードに引っかけて後ろに転倒していった!



「あ、ぶ!! なです!」



――間一髪!


私の伸ばした手が何とか間に合い、チロメの細くしなやかな手を掴むことに成功した。


しかしそこは私クオリティ。


体勢がキツかったとか、私の力で支えられるか不安だったとか色々理由はあるけれど。



チロメの体を引っ張りすぎてしまった。



ふわりとチロメの体がこちらに近づいてくる。

しくじったってヤツ。



「あ」



チロメの体はポスリと私の胸に収まった。


今朝と逆。

サラサラの黒髪が腕に当たる。私の太ももまでかかっていた。



何とも言えない沈黙の時間が流れる。



ふとパソコンの方を見ると、カメラがこちらをじっと眺めていた。


ああ、そういえばさっきチロメを引き寄せたとき、パソコンも巻き込んで倒していたな。



「…………」


「…………」



私顔出しえぬじーなんだけど。

抱き合っているチロメと目を合わせる。奇麗な黒い瞳。


これ、客観的に見てどういう光景なんだろうな。


バッチリカメラに写ってるけど。


…………。



「――――!?」



そこからのチロメと私は早かった。


私がすかさず手を離し、チロメがそこから脱出する。

そしてチロメが素早くパソコンを操作しようとして、ハ、と気付く! マウスがない!

そこで私!

先程すぐさま床のマウスを拾っており、チロメにマウスを投げ渡す。

ここではドジを発揮せず受け取るチロメ!



「きょ、今日の配信終わりッ!! じ、次回今日の続きから読みます! ごめん! アーカイブには残せないので今日の配信は消させていただきます!」



言い終わってから配信停止、クリック!

そしていつものどんくささを見せない動きでアーカイブを削除!



…………。



「ご、ごごごっごごめんリダム!! が、画角的に顔映っちゃってたよね!?」


「い、一瞬のことでしたし視聴者の方も混乱してたと思うので……配信の方もすぐ止めてくださったので、私は大丈夫ですよ。今のは事故です、仕方のないことでした」


「で、でも……」


「――それより、チロメさんの方こそ大丈夫です? そ、その……何といいますか」


「あ、ああううん! 全然私は平気! ご、ごめんその……何というか……」



両者の謝罪タイムが始まった。

いろいろ言いあっているうちに、チロメがどう返しても角が立つセリフを心からの謝罪を込めていってくる。たちが悪い。


あたふた焦っているチロメ。

しかしまたさっきみたいに暗い状態になられても困るなこれは。



「では、お互いさまにしましょう今回の件は。私はチロメさんの体に触れてしまいましたし、アーカイブも消さないといけない羽目になってしまいました。チロメさんも私に申し訳ないと思っているところがあると思いますけど、お互いこれで終わりにしましょう。このままだと終わりがないですし!」



というわけで、こういっておいた。

チロメはまだポカンとしているが、ここは無理やり通させてもらう。



「はい、握手しましょう握手! お互いこの件はのちの謝罪は無しで! 契約です!」


「あ、あうぅ……わ、分かった」



チロメとがっちり握手する。

相変わらず柔らかい腕だった。……というかこの握手ってセクハラになるか? 悪手だったこれもしかして。


ふう、と一息つく。

なんだかやけに長く感じる配信だった。

色々と勢いでやっていたところもあったため、最後の方は体力が尽きて疲れてしまった。

私がそうして疲れていたため、ぽすんと床に座ると。

チロメも疲れていたのだろう、私の隣の床に座ってきた。



「……ねえ、リダム」


「何ですか、チロメさん?」


「ありがとね、いつもホントに」


「……どういたしまして、です」



そんなこと思わなくてもいいのに。

私はマネージャーで、お金を貰って働いている立場なのだから。


そう思いつつ、そう返すと。

チロメはとてもきれいな笑顔でにぱっと笑顔になった。


◇ ◇ ◇




あの後私はチロメの家から出て、色々あったモノの、ようやく帰路についているところだった。

私の家も東京都内にある。

しかしチロメの家に徒歩で通える範囲にあるわけではないので電車でここまで来ている。

私はチロメの家から駅まで歩いているところだった。


目に見えるくらい汚い耳クソを付けた虎かネコの獣人(しかも左耳の形が歪んでる、キモイ)のおっさんが前を歩いている。無言でぽつぽつ町を歩く。そこそこ距離があるのに、きつい香水の匂いがした。趣味が悪い。


車のクラクションの爆音が鳴る。

うるせぇな、と思って隣の道路の方を見ると、横断歩道を曲がろうとしようとしている車が青信号を渡る歩行者を煩わしく思っているらしい。


車の運転手を見ると、今度は異世界の東の方の出身であろう、堀の深い顔の人。タバコを口にくわえながら、独特な入れ墨の入った腕を思いっきりハンドルにぶつけてクラクションを鳴らしている。


あそこの地域のカスどもは特に頭もマナーも悪いから嫌いだ。この国に入ってこなければいいのに。

免許なんて渡してんじゃねぇよあんな奴らに。


気分が悪くなっていると、隣ですれ違った耳クソの獣人がぺ、と道路に何かを吐いた。


痰だった。

少し体毛が混じっている。


私の足にちょっととんだ。

着ているスーツの足元に、謎の汁が少しかかる。


耳クソの獣人野郎はそれに気づいたらしい。

私と目が合った。

目が合って、それで、ちょっとしたらそっと逸らした。私の横を通り過ぎる。



「きめぇしクセェし汚ねぇんですよ、耳クソ野郎」



ぼそりと呟く。

耳クソの獣人野郎は私に気にせず去っていった。多分聞こえてはいたのだろうけど、日本語が分からなかったのだろう。汚い面をしていたから、()()()の奴隷まがいのヤツだと思う。つまり学が無い。


ささやかな復讐だ。

相手を不快にさせることもない、ちょっとだけ自分のイラつきを解消させる、そんな行い。



――チロメなら、今の状況でどう思ったのだろうか。



ふとそう思った。

彼女なら、きっと私みたいにイラつきもしなければずっとしてにこにこいるのだろう、と。


人種差別だなんて最も縁がなさそうなのがチロメだ。

私みたいに、奴らのことを毛嫌いしていなければ、テレビの中の人間が言うように、みんな同じ人間なんだから、と心の底から思ってそうだ。


チロメはキレイだ。

そして正しい。


私はキレイじゃない。

そして正しくない。


こんな自分を私は嫌いじゃないけれど、別に特段好きでもない。

だから私は今ちょっぴり気分が悪い。

中身がキレイじゃなくて正しくないのがそんなにいけないことなのか? 誰だって、そうでしょう? そんなこと。




「――おーい、リダム! お前リダムじゃないか! 奇遇だな、こんなところで!」




そんなことを考えていたら。



――大河原タイガ。



偶然、私の友達と会った。


高級そうな緑のコートを羽織り、しかし下の服はよぼよぼのシャツと灰色のジーンズという、なんだかよく分からない格好をしている。顔は髭をそっていないのか顎に針山ができており、しかし髪はいっちょ前にくすんだ金に染めている(まあよく見ると傷んでいているのだけど)。


身長170㎝ほど。

中々残念な格好だが、顔はかなりのイケメンだ。


その金に染めている髪などから、名前の通り『タイガー』を連想するような。



しかし、驚異の36歳!



今は土曜の真昼間。

とはいえ、髭も髪も格好もこんなになっている奴はお察しの通り、まあまともな人間じゃあない。



「何してるんだ? お前が土日に外に出てるなんて珍しいじゃねぇか!」


「仕事ですよ、しーごーと。18までに貯金貯めときてぇですし、色々働いてんです」


「……仕事?」



少しタイガの機嫌が悪くなった。

こいつは見た目の通りの無職だ。仕事とか貯金とか将来と言う言葉に弱い。

いつまでだって遊んでいる、いつまでも子供な大人なのである。


むす、としているタイガは結構めんどくさい。

やべぇこりゃ失言したな、と私は私で思っていると。



「タ、タイちゃん! ま、待って!」



――女の子がこちらに走ってきた。


なんだなんだと声の方に視線を向けると、中々こっちもすごいヤツ。


クロ単色のミニスカタイプのゴスロリファッション。

何センチもってるんだという長靴を履いていて、足はソックス単一、ミニスカートに耐寒性能があるとは思えないので、新春とはいえ寒くないんかと思う服装。


口にはピアス、目元は『ふぁんで』やら『めいく』やらでキラキラキラキラすんごいことになっている。


絵にかいたような地雷系!

こっちはみたとこ20代前半か何なら20すらいってないくらい? どっちにしろ若い。


この2人が並んでいると『違法』の二文字がちらつくが、皆さんご安心ください。

お使いのバイアスは正常だ。こいつらはしっかり『違法』である。



「……タイガー、これが今の女です? これまたなんとも……すごい子を選びましたね?」


「ん? そうかリダム、まあどうでもいいんだけどよ」


「タ、タイちゃん……」



タイガにとっての女。

それはつまるところ、財布である。


こいつは女に対して薄情だ。

本当に、心の中でもお金をたくさんくれるATM兼性欲処理のオ〇ホールくらいにしか思っていないのだろう。


流石にそんな酷いやつとは思えない?

まあ見ときなさいな。すぐわかる。



「おうリダム、今から焼き肉行かねぇか? ちょうど今が11時半だから昼くれぇだろ? ここでダチのお前に合ったのも何かの縁で、焼き肉行こうぜ!」


「タ、タイちゃん、い、今私とデート中じゃ……というかこの子、女の子じゃ……」



スゴイよねこいつホント。

他の女とのデート中に、堂々と私に焼き肉のお誘い入れるとか。

オロオロしている地雷ちゃん。タイガが紹介してくれないから名前も分からないぜこの子。



「あ、タイガーの彼女さん。私は一応こう見えてちんちん付いてんで男です。浮気とかじゃねーんでそこは心配しないでください。こいつとはただの友人です」


「ただのってのは何だよただのとは! 俺たちゃ親友だろリダム!」


「諸説ありますねそこは」



適当にタイガの言葉を流す。

タイガは『諸説』の意味が分からないようできょとんとしていた。中々の頭をしている。


まあ、すぐに『諸説』の意味なんてどうでもよくなったみたいだ。

ボリボリと頭をかきだす。

髪染めたのにちゃんとケアしてないからかゆくなってんじゃねーの? 不潔。



「てことで雪、3万出して」


「え、えええ……」



犯罪現場。

やってんねえ、タイガーさん。

れいわのタイガはあげる側、大河原の大河はもらう側なのである。


地雷系の子の名前は雪、というらしい。

今はじめてわかった。


しかしこの状況どうなるのだろう。

雪って子がオロオロして渋ってるのにいらだってきたのか、タイガーの顔がだんだん不機嫌になっていく。

雪がひ、と声を出した。

可哀そう。



「雪ー。早く出せよ。お前俺の彼女だろ?」


「う、うん。分かったよ、出すよ……」



恐喝やんけ。

これ止めなかった私も共犯になったりするのだろうか。

雪ってこがゴツイ財布を取りだして、その中から3枚一万円札を取りだし、ネイルでキラキラの手でそれをタイガーに手渡しするのが生々しい。


タイガーはふゅぅ、と口笛を吹いた。下手。

ご満悦なタイガーを尻目に、私はこそこそと雪に近づいて聞いてみる。



「……あんた、アイツと一緒にいて楽しいんです?」

「わ、私は、いっちゃんと一緒にいると、楽しい、よ……」

「…………」



楽しいのか。

その目には少し涙が浮かんでいたが、どうやらその言葉は本心に思えた。

根は絶対にこの子はいい子だ。可哀そうに。こんな男に引っ掛かってしまったばかりに。タイガは典型的なカスなのに、妙に女にもてる奴だ。紐の才能がある。



――あなたが相手といて楽しいなら相手もあなたといて楽しいと思いますよ。



か。

先程私がチロメに言ったセリフ。

しかしなんと我ながら――寒い言葉なのだろう。



「リダム、早く焼き肉行こうぜ」

「あ、あのいっちゃん、私も……」

「あー、お前はついてこなくていいよ。今日はダチと行くからさ」

「え、あ」

「リダム! 今日は俺奢るぜ?」



女の方を見る。

濃い化粧できらきらしている瞳はイチの方をオロオロとみている。手を少し前に出し、引っ込め、ピアスのついた唇を開こうとし、あ、と一瞬止まった後に、そのまま口を閉じた。


可哀そうだ。

渡した金を他人の食事代に使われた挙句、感謝の言葉の一つもない。

フリルのたくさん入った黒いゴスロリの素敵な衣装は完ぺきにミスマッチだった。絶望的なこの状況に何一つその可愛らしさは合ってなく、それに彼女も気づいているのか、身のやりように困りながら、私とイチの前で、服の裾をキュッと掴みながら突っ立っている。


突っ立っている。

今、もし彼女を救える人間がいるとしたら誰なのだろう。


可哀そうな彼女を、

愛のない最悪なコイツから、


救える人間がいるとしたら、それは――



考える。



「――行きましょうか、焼き肉。奢りですよね? 奢りって言葉大好きです。私、お金ないので」


「おっ! よし行くか!」



呆然と私の背中を見つめる彼女の視線を感じる。


この場に優しい人間はいない。

チロメのように特別優しい、そんなできた人間はいない。


私は()()()()()だ。


イチは誘いを断ると、大層機嫌が悪くなることを私は知っている。

身の丈に合わないその強大なプライドで彼の心はできているのだ。自分は気前のいい男だと思いたいのである。だから、タイガは遠慮されたりすると、自分が小さな男と思われていると思い、激怒する。

私は彼を怒らせたくなくて、長く仲良くしていきたい。


だから私は彼女を救わない。私は彼女の天使じゃない。


ちょっぴり背中の視線に罪悪感を感じるけれど。

それ以上に、私はこのチープな友情が大切だ。


チープで陳腐で、腐りきっているようなそれでも、私にとってはそこそこ大切なものなのである。

少なくとも、この可哀そうな女よりは。



誰が彼女を助けるのか?

先程の問い。

私は答えを知らない。

知らないけれど、これだけは言える。

少なくとも、その答えは『私』じゃない。



「あんたくらいがやっぱり私にはちょうどいいですね」


「ん? なんだよ」


「……いえなんでも」



春風チロメ。

あの子はちょっと、眩しすぎる。


()()()私は後ろを振り向くこともなく、タイガの後についていった。

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