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全属性使えました

さて。魔王を滅殺すると決めたはいいものの、悪役令嬢リシアーナの生まれながらの魔法の実力はどれくらいのものなのか。


(リシアーナの魔法属性って何だったかしら?)


この世界には主に五つの魔法属性が存在している。

火、水、氷、土、風。

ちなみにヒロインの扱う治癒魔法は別枠だ。


私は取りあえず以前のように色々な属性の呪文を唱えてみた。


火、水。


(…あら?)


氷、土、風。


(あらあらあら??)


おかしい。リシアーナの使える魔法属性は一つだったはず。

というかゲームでも全属性の魔法が扱える人は一人もいなかった。


「…全属性使えちゃった。」


(もしかして、私がアルミナの生まれ変わりだから?)


それなら魔力はどれくらいだろう。

体内に魔力が巡っているのを感じてそれを全力で体の外に放つ。


…ゴオオオオオオオォ


ドドドーンッ!!


(…え?)


私が魔力を外に放った瞬間空気が割れるような音が聞こえ屋敷の敷地全体が大きく揺れ動いた。


「もしかして、魔力もアルミナだったころと変わっていない…?」


廊下からバタバタと足音が聞こえ、マリーと両親が私の部屋に入ってくる。


「お嬢様!ご無事ですか?!」


「リシア!」


「リシアちゃん!」


(あ、なんだか凄い騒ぎになってしまった…。)


周りを見渡すと家具や置物が全て倒れ、悲惨な状態になっている。


「えっと、、大丈夫です。」


「なら良かったわ…。」


お母様がほっとした表情で言った。


「それにしても一体何が起こったんだ?」


「地震でしょうか…?」


(正直に言うしかないわよね…。)


「…ごめんなさい。私がやりました。」



「「「 え? 」」」


三人とも何言ってるんだこいつ、とでも言いたげな感じでこちらを見てくる。


「リシアちゃん?ただの冗談よね?」


「そ、そうに決まってるじゃないかディアナ。それにまだ小さくて可愛らしいリシアがどうやってこんな大地震を起こすというのだ。」


(まあ、信じて貰えないわよね。)


「冗談じゃなくて本当なの。自分の力がどれくらいあるのか知りたくて魔力を放出してみたらこんなことになって…。」


今度は三人とも口を開けたまま固まっている。


「…本当にリシアお嬢様が…?」


バタッ。


「アベイル…!気をたしかに持って!」


「旦那様!」


お父様が倒れてしまった。


(…後でお父様にもう一度謝ろう。)


□□□


夕食の時間。

家族で囲む豪華な食卓の上には何ともいえない空気が漂っていた。


(うう、何だか居心地が悪いわ…。)


「あの、お父様。今日は驚かせてしまって本当にごめんなさい。体調はもう大丈夫??」


お父様は皿の上のステーキを切っていたナイフを静かに置いた。

お母様も手を膝に置いたまま黙っている。


(やっぱり怒ってるよね。)


「…リシア。もう一度聞く。あれは本当にお前がやったのだな?」


ごくっ。


聞いたことのないお父様の重々しい口調に背筋が凍りそうになる。


「はい、そうです。」


(何て言われるかな。もしかして嫌われた?私が屋敷をめちゃくちゃにしてしまったから?それとも小さい自分の子供があんな力を隠していて気持ち悪くなった??)


『あなたなんか、私の娘じゃないわ。』


なぜか前世の私の母がそう言った時のあの目がフラッシュバックする。

憎しみと憎悪のこもった冷たい目。

顔を上げてもう一度謝りたいのに二人の顔を見ることができない。


(嫌だ…、二人に嫌われたくない。家族を失うのが、怖い…。)



「ああ、なんて素晴らしいんだ…!!」


「…え…?」


「ええ、本当に!今日は宴ね!」


(どういうこと…?)


お父様とお母様がそう言った。

何故かマリーもうんうんと頷いている。


「我が娘があんなにとてつもない魔力を秘めていたとは!こんなに誇らしいことはないよ。」


「ふふっ、リシアちゃんはきっとこの世界の創造神様に愛されているのね。」


「…私のこと、嫌いにならないの??」


だって、前世の私の母はいつも言っていた。


『気持ち悪い。』


『分からないの?あなたのことが”嫌い”なのよ。』


「…リシア。どうして私が愛する我が娘を嫌いになるなんて思ったんだい?そんなことあるわけないだろう。」


「そうよ。あなたはいつまでも私の、私達の大切な子供。この先リシアちゃんが何をしようと何を考えようと私たちのあなたを大切に思う気持ちが変わることなんて絶対にないわ。」


「…!」


なんだか拍子抜けしてしまった。

そうだ。今の私の両親は前世の両親ではない。

私を見つめる暖かい眼差し。優しい笑顔。

自分のことを無償の愛で包み込んでくれる家族。

それは当たり前にあるものではない。

私は本当に幸せ者なんだ。


「そう、だよね。」


(そう、今の私はリシアーナでこの二人は前世の私の両親は違う優しい人たちだ。)


「お父様、お母様、ありがとう!」


そう言うと、二人は顔を見合わせてふふっと笑った。


(あ!そういえばまだあのことを言ってなかったわ。)


「あのね、私言い忘れていたことがあるのだけど。」


「ん?何だい?」


「今日気づいたんだけど私、全属性の魔法が使えるみたい。」


「「「…。」」」


その直後お父様はまた倒れてしまった。


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