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図書館

(さて、私の未来と大切な家族を守ると決意したからにはこれからどう生き延びていくか考えて人生計画を立てないとね。)


私は前世でも前前世でも短命だった。

だから、今度こそ長生きをして人生をもっと思いっきり楽しみたい。

そのためには私の運命の鍵を握るルーク殿下とどう関わっていくかよね。

まず、こちらから婚約を破棄することはできない。

逆に嫌われて婚約を破棄してもらおうと行動してもゲーム通りバッドエンドまっしぐらになってしまうだけだろう。

それなら婚約を結んだ状態で殿下とは極力関わらないようにするプランAかルーク殿下と友達として仲を深め、処刑を免れるプランB。この二つのどちらかね。


「どっちの方向性にするべきかしら…?」


ここはやっぱりプランA?

でも、婚約者である限り関わらない、というのはかなり難しいと思う。

それによくよく考えると、例え私がゲームのキャラたちと関わらないようにしていても私は一応悪役令嬢なわけだしゲーム補正のようなものがかかって誰かに濡れ衣を着せられる可能性だってあるかもしれない。


(それならここはプランBでルーク殿下と仲を深めておいた方が良いのでは…?)


婚約者として、物分りの良い友人として殿下と良好な関係を保ちつつ、ヒロインとの恋愛を近くで応援する。そして殿下がヒロインと愛を確かめ合うその時がきたら私はさっと身を引けばいい。

なんてハッピーで平和な解決方法!

こんなに素晴らしい案は他にないわね。


「よし、頑張るわよ!」


□□□


私は今日、皇都にあるアルフィアス図書館に来ていた。


(…さすが、皇族が直々に設立した場所ね…。建物から大きいわ。)


まるで私の前世の世界でいうロマネスク建築のような外観。エメラルドグリーンの屋根が建物全体に煌びやかさを与えていてとても豪華だ。

ここはこの国で一番の書物の在庫数を誇る皇都唯一の図書館で古くからの歴史書や古語で書かれた書物などもたくさんある。

アルミナとして生きていた時代からどのくらいの年月が経ち、どれくらい帝国の技術が進歩しているのか調べたかった私はお父様にお願いしてここに連れてきてもらったのだ。


「では、リシア。私はこれから少し用事があるからいい子にしているんだよ。くれぐれも、護衛やマリーから離れないように。」


(ふふ、お父様ったら心配性ね。)


「分かっているわ、お父様。お仕事頑張ってね。」


「ああ…ありがとう、リシア。リシアのおかげで今日も1日頑張れそうだ。」


柔らかい笑みでそう言った父と別れた私は早速帝国の歴史書を探すことにした。

しかし、この膨大な量の書物から歴史書を探し出すのはかなり難しかった。


(ん〜、中々見つからないわね。)


本を探し始めてからもう随分経っている。


「お嬢様、先ほどから何の書物をお探ししているのですか?」


一人本を探すのに難航していると、マリーがそう声をかけてきた。


「実はこの国の歴史について学びたくて。歴史書を探しているの。」


「まあ!お嬢様が歴史書を…。勉強熱心なのですね。」


「あはは、そうかしら?」


(以前までの私だったら図書館に足を踏み入れることさえなかったと思うけどね。)


それにしても、ここは本当に広すぎる…。

ただでさえ広いのに床から天井まで本棚が並べられ、その中はぎっしりと本で埋め尽くされているのだ。


(これ、今日中に見つかるのかしら…。)


誰か歴史書の置いてある場所を知っている人がいればいいけれど。


「お困りですか?」


「わっ…!」


急に耳元でそう誰かに話しかけられ、驚いて振り向くと、そこには綺麗な佇まいで微笑む大人の男の人が立っていた。


「ははっ、驚かせてしまいましたね。申し訳ありません。私はこの図書館の司書アーノルトと申します。本を探されているようでしたので何かお手伝いできることがあればと。」


「まあ、よろしいのですか?」


(全然見つからなくて困っていたからその申し出はとても有難い。)


「はい、勿論です。」


「では、お願いします。実は先ほどから歴史書を探しているのですが、中々見つからなくて…。」


「歴史書ですね。ついて来てください。案内致します。」


そう言うと、アーノルトさんは迷いなく私のお目当ての書物がある本棚まで案内してくれた。


「助かりました。案内して頂きありがとうございます。」


「いえいえ、これも仕事の一環ですから。ところで、なぜ歴史書を?」


「えっと…私、魔法が好きなんです。それでかつてこの帝国に存在していた魔法使いの方々についても色々調べてみたくて。」


(…間違ってはいないよね。)


「なるほど、そういうことですか。実は私も魔法がとてもが好きで幼い頃からよく魔導書などを読み漁っていたものです。特にかつての大魔導師アルミナ様の偉業について知った時には彼女に強い憧れを抱きました…。」


「帝国史上最強の魔法使いであり、魔王を倒した国の英雄。他にも彼女が帝国全体に張った結界のおかげでこの国は他国から戦争を仕掛けられることも無くなったとか。」


(私の前前世、アルミナ…。そういう風に思ってくれる人がこの時代にもいるなんて。何だか嬉しいわ。)


「おっと、長話が過ぎましたね。申し訳ありません。もしよろしければ、こちらも読んでみてください。」


そう言ってアーノルトさんは表紙に『アルミナ伝記』と書かれた分厚い本を私に手渡した。


「いえ、ありがとうございます。この本読んでみますね。」


「はい。では私はこれで。また機会があれば図書館にいらしてください。ここには面白い魔導書もたくさんありますので私でよろしければご案内致します。」


「本当ですか?!ではその時は、よろしくお願いします。」


アーノルトさんは紳士に微笑んだあと向こうの方へ戻っていった。


□□□


大体の本に目を通し終えてこの世界はアルミナが死んでから百年後の世界である、ということが分かった。

そして、アルミナが死んでからの百年間、特に大きな災害や戦争もなかったらしい。

魔王がこの世からいなくなり、平和な日々が続いたからか私がアルミナとして生きていた時代から一変、今やこのアルフィアス帝国は貿易が盛んで自然も豊かな国となっていた。


(魔王が生きていたあの時代は土地も人も荒れていたのに…。本当に良かったわ。)


魔王…。

悪役令嬢が処刑された後、ヒロインと攻略対象たちが手を取り合って立ち向かうラスボス。

そう、実は私が封印したはずの魔王は復活してしまうのだ。おそらく誰かがあの封印を解いたのだろう。


(私はあの時確かに強力な封印をしたはず。それを解く人物ってことはきっと只者じゃない…。)


ゲームでは聖女であるヒロインがもう一度魔王を封印してハッピーエンドで終わる。

かつての私でも相手が強すぎて封印することしかできなかった。


でも、ヒロインたちが魔王を封印した後それがまたいつか解かれてしまうかもしれないなら…。


「殺るしかないわね。」


魔王を完全に消滅させる。

それは決して簡単なことではない。

でもこれはきっと前前世からのリベンジだ。

私はまだ9歳。

魔王の復活はヒロインたちが18になった時だからまだまだ時間はあるわ。


絶対にかつての自分アルミナの実力を超えてみせる。





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