選挙結果に想起された過去の想い
PCの前に座り電源を入れた。
静まった空間に、起動音だけが響く。
机の上のデジタル時計に目をやると0時を表示していた。今日は選挙の日。
すでに開票結果も出ているだろうと、ネット上でページ検索した。
開票結果の画面を開く。
候補者の名前が一覧となって並び、名前の左横に当選を示す○印がある。
右横には獲得票数の数字。人気のある候補者の結果を見て思わずひゅーっと息をつく。
ダントツで10万以上の票数だった。
私は自ら投票した候補者を探すべく、
マウスのホイールでページをスクロールさせていった。
一番下までいきようやくその候補者を見つけた。
「・・・」
○印はない。
各得票数は271だった。
じっとその数字見つめていると・・
「クラス31人力を合わせて頑張りましょう」
突然、小学校の担任の声が頭に蘇った。
そう、かつて私はクラスの中の一生徒だった。
31という数字の中に自分は1として含まれている
という事実。
含まれているはずなのに、私はそう信じることができなかった。
本当に自分はクラスの一員として認められているのか?
31というのはまやかしの数字で、
実際に数えてみたら30になるのではないかと疑念を拭うことができなかった。
なぜかはわからない。
自分はここにいていい存在なのか、
皆に認められるべき存在ではないのではないのか
という、言いようのない漠然とした不安感、疎外感が
いつだって自分の周りにまとわりついていた。
自分はここにいる、いてもいいという普通の子供なら
ごく当たり前に持ち合わせている感覚を、
私は持っていなかったのだ。
だからだ。
PC画面に表示された271の文字を見つめる。
この獲得票数271に、私が投票した一票が
数えられ含んでいると信じることができなかったのだ。