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8話 これがボクらの戦い方

「寝れないな……」


 王様から与えられたこの部屋は、ボクの村ではあり得ないくらい広い。ベッドも凄くフカフカだ! でも豪華過ぎて落ち着かない。仕方なく窓から城下町を眺めていると……


「ルーク、起きてる?」


 廊下からリリーの呼ぶ声が聞こえた。


「起きてるよ。どうしたの?」


 部屋のドアを開けると髪をほどいたリリーが立っていた。いつもと雰囲気が違う。でもよく似合っている。


「なんだか眠れなくて……入ってもいいかな?」


「別にいいけど……どうしたの?」


 中に通すと、リリーが作業用机の椅子に座った。机の上には開きっぱなしの本が置いてある。片付けておけばよかったかな?


「ねぇ、ルークがいた村はどんな所だったの?」


「えっと……いい所だったよ。お父さんとお母さんは10年前の戦いに参加して命を落としたけど、代わりに村の人がボクの世話をしてくれたんだ」


「そっか……あたしと同じだね」


「えっ?」


「あたしも両親が早くに亡くなって村の人に助けてもらったの。だから村の人の役に立ちたくて怪我を治してあげたんだ。結局迷惑だったみたいだけど……」


 以前ドットさんはリリーが使っているのは魔法ではなくてスキルだと言っていた。他の人の体力を奪って分け与えるスキル、治癒分配(ちゆぶんぱい)……


「前にアリシア師匠がスキルは個性みたいなもので、個性に良い悪いはない。大切なのは使い方って言ってたよ。治癒分配だって使い方次第では上手くいくよ!」


「そうかな? だといいけど……」


「大丈夫。きっと上手くいくよ!」


 ボクは力強く話して説得してみた。実際に上手くいくかは分からないけど、可能性はある。


「分かった頑張ってみるね。ところでこの散らかっている本は何?」


 リリーが開きっぱなしの本を興味深そうに覗き込む。


「魔法の本だよ。ドットさんから借りた」


「たくさんあるんだね! ねぇ、これなんて書いてあるの?」


「”アイスボール”かな?」


 試しに呪文を唱えてみると氷が出現した。炎を出すときは手に熱が集中したけど、氷を出すときは逆に冷気を感じた。()()()()()()()()()()とか言ったらどうなるのかな?


「えっと……”ファイヤー”?」


 あっ、小さな氷が出た。どうやら呪文よりも感覚の方が重要みたい。


「魔法が使えるなんてすごいね!」


「ありがとう、でもどうして使えるのかボクにもよく分からないんだよね」


「どう言うこと?」


「ドットさんの魔法をみたり、一緒に呪文を唱えると使えるんだ」


「凄い! じゃあこれはなんて書いてあるの?


「えっと……汝、その身を委ねよ、”スリープザドロップ”」


 目を閉じて大きく『フーッ』っと息を吐くとなんだか眠くなってきた。


「あれ? なんだか眠くなってきたような…」


「ボクもだよ……」


 どうやらそのまま寝落ちしたらしく、気がついた時には朝になっていた。




* * *


「ねぇ2人ともちゃんと聞いてる?」


 馬車に揺られながら火山地帯にあるゴクエンの村に向かっていると、アリシア師匠がボクとリリーの肩を軽く揺する。


「すみません、昨日はルークと夜遅くまでスキルについて話していて……」

 

 リリーが眠たそうに目を擦りながら答える。


「確かに君たちのスキルは珍しいからね。両親の影響かな?」


 アリシア師匠がボクとリリーを見比べる。


「両親? 師匠、どういう事ですか?」


「スキルは継承されるんだよ。遺伝みたいなものだね。親の身長が高ければ子供の背も高いようにスキルも継承されるんだよ」


「なるほど……不思議ですね」


 アリシア師匠の話を頭の中で整理していると、少しひらけた場所の屋台に馬車が止まっているのが見えた。休憩エリアみたいなものかな?


「ちょっと寄り道しようぜ! 流石にずっと馬車に乗っていると体が痛くなるからな」


 ドットさんは羽を広げたりクロスして伸びをする。休憩場所には多くの旅人が寛いでいた。早速馬車から降りて休もうとすると……


「おい! お前ら! 早く逃げろ!」


 ガタイのいい男性が声を荒げ、休んでいた人々が一斉に上空を見上げる。つられて空を確認すると大きな鳥? いや、ドラゴン? みたいな魔物が近づいて来ていた。



* * *


「あれがレッドドラゴンですか?」


「いや、ワイバーンの群れだな」


 ドットさんが体を縮こまらせてアリシア師匠の顔を見る。


「どうするんだアリシア?」


「ここは危険だから離れよう!」


 アリシア師匠は急いで馬車に乗り込むように指示を出すが、ボクは首を振る。


「ちょっと待って下さい、リリー、昨晩話したこと覚えている?」


「うん、もちろん!」


「早速試してみない? きっとうまくいくはずさ!」


 ボクは呼吸を整えてワイバーンを観察してみた。群れで飛んでいるせいか土煙が舞う。


「加勢してくれるのか? でも気をつけろよ、こいつらちょっと様子がおかしい」


 声を荒げて逃げろと叫んだ男がチラッとボク達の方を見る。普通のワイバーンを見たことがないからよく分からないけど、なんだか黒いオーラをまとっている。大猪の時と同じだ……


「ルーク、気をつけて! ()()()している」


 アリシア師匠が剣を抜いて構える。ドットさんも肩から離れて魔力を高めている。これで全員が戦闘大勢に入った。


「気をつけろ! 何かしてくる!」


 男性が叫ぶと同時にワイバーンが口から火を吐きながら羽で風を送る。すごい熱風だ……呼吸をすると肺の奥が痛い。


「厄介だな……体力が減っていく」


 アリシア師匠が辛そうに呟く。師匠のスキル”無傷絶大(むしょうぜつだい)”は体力が減ると力が減る。でも想定内。


「リリー! ボクの体力30%を預ける」


「分かった。スキル”治癒分配(ちゆぶんぱい)”!」


 リリーが叫んだ瞬間、全身をボコボコに殴られたような衝撃が走った。でも”逆境”のおかけで体力が減るほど力が湧いてきた。


「今預けたボクの体力を師匠に分配して! 熱風によるダメージをこれで相殺するんだ!」


「うん、任せて!」


 リリーがスキルを発動すると、アリシア師匠の傷が癒えていく。


「おぉ! すごい力が漲ってきた!」


「リリー、その調子で師匠の体力を100%に維持してほしい!」


「分かった!」


 リリーが力強く頷く。


「一気に行くよ!」


 ボクとドットさんは魔法で、アリシア師匠は剣でワイバーンたちを薙ぎ倒す。


「うまくいったな少年!」


 ドットさんがボクの肩に止まって耳元で叫ぶ。


「やるじゃねーかお前たち!」


 出会ったばかりの男性も敵を倒しながら褒めてくれた。ワイバーンの群れがみるみる減っていく。今目の前にいるのが最後の1体だ。


「ドットさん、右の羽を撃ち落とすことは出来ますか? ボクは左の羽を狙います」


「よし! やってやるか!」


 ドットさんはクチバシに魔力を高めて狙いを定める。ボクも右手を出して集中した。


「「”ウォーターボール”!」」


 2人で息を合わせて放った水の球が見事に翼にヒットした。バランスを崩したワイバーンが落ちてくる。


「師匠!」


「任せて、”一刀粉砕”!」


 大きく剣を振り上げて、いつもの技名を言い終わる頃には最後のワイバーンが消滅した。




* * *


「うまくいったね、ルーク!」


「うん、リリーのおかげだよ」


 ボクらは顔を見合わせて笑い合った。自分でも満足のいく戦いだった。

 

「2人とも、いい作戦だったよ!」


 アリシア師匠がボクとリリーの頭をワシャワシャと撫で回す。ちょっと恥ずかしい……


「いや〜助かった! 俺の名前はニック。よろしくな」


 ニックと名乗った男性はボクに手を差し伸べる。大きな右手だ、岩のように硬い。


「それにしてもこのワイバーン達おかしくないか? 見るからに邪悪なオーラを纏っているし、襲ってくるしで大変だったよ」


「多分それは凶暴化のせいだな」


 ドットさんが少し戦いに疲れた様子で語る。なんとなく頭の冠羽も萎れていた。


「凶暴化? なんだそれ?」


 ニックさんが腕を組んで考え込んでいると……


「今みたいに禍々しいオーラを纏った魔物の事です」


 アリシア師匠が補足を入れる。


「私達はその原因を突き止めるためにゴクエンの村に向かっている途中なんです」


「ゴクエンの村か……名前は物騒だがあの村は天然温泉で有名だな。あと良質な鉄が取れる。でも最近、凶暴な魔物で参っているらしいから気をつけなよ」


「分かりました。ありがとうございます!」


 リリーが律儀にペコリと頭を下げる。ボク達はしばらく休憩をした後、馬車に乗り込んで出発した。

ご覧いただきありがとうございました。


ゲームでよくある体力80%以下の時に攻撃力上昇みたいなのが好きなので、作品に取り入れてみました。


某パズルゲームでも闇メタ最強時代が好きでした(笑)


続きが読みたい、面白い! と思った方はブックマーク、高評価していだだけると泣いて喜びます(笑)


それでは9話でお待ちしています。10時頃に投稿予定です。タイトルは「ゴクエンの村、名前からして暑い」です!

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前作の作品です。仮想の世界を舞台に、データーの世界に閉じ込められるお話です。無事にプレイヤーは元の世界に帰れるのか? そもそも誰がこんなゲームを作ったのか? 各章は30分ほどでサクッと読めます。イラスト&表紙付きです♪ 仮想からの脱出ゲーム
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